米ハーバード大学の研究者らが、ブタに内在するウイルスによる感染の危険を取り除く実験に成功した。臓器移植のドナーが不足するなか、近い将来、ブタから人への異種間臓器移植が実現するかもしれない。

10日、アメリカの科学誌「サイエンス」に公開された論文によると、遺伝子操作を行ったブタの胚細胞を、代理母のブタの卵細胞に注入した結果、ブタに内在するレトロウイルスを保存しない子ブタ37匹が生まれたという。
実際にブタから人へ臓器を提供した場合に、レトロウイルスに感染するかは明らかになっていないが、研究者は「異種間臓器移植におけるウイルス感染のリスク面で、大きな進歩を成し遂げた」としている。公式統計では、アメリカだけでも毎日22人がドナーを待ちながら死亡していることから、新たな治療法として期待される。
遺伝子操作による病気のリスク除去に関しては、人でも心臓病の原因となる遺伝子変異の修復に成功したと報じられているが、一方で指摘されるのは今後予想される“人の遺伝子操作”に対する倫理観。16日放送の『けやきヒル’sNEWS』(AbemaTV)では、ニューヨーク州弁護士資格を持つ山口真由氏が見解を述べた。

「アメリカで一番ガイドラインを強く左右するのは宗教的な感覚。神が許さない、聖書にこういうことはいけないと書いてあるから、受精卵は実験目的に使ってはいけないという考え。キリスト教の信仰があついブッシュ大統領の時は、受精卵を使う実験に対して政府の資金をつけなかった」とアメリカの倫理観についての見方を示す。
また、“人の遺伝子を操作すること”に対してガイドラインは作られていくのか。という問題に対して山口氏は、「そこが一番難しいところ。日本やアメリカなどの民主主義国ではある程度の範囲にとどめるかもしれないが、他国がこの技術を使って子どもをどんどん改造し屈強な兵士を作っていったとしたら、それを止めることができるのか。日米もそれに追随するのではないか。また科学者たちは科学の進歩をめざすことに純粋で、地球の環境変化に耐える人類を、さらには火星でも生きていける人類をという方向にむかっていくはず。科学の進歩はどこで制限するべきなのか、という議論をもっと活発にしていかなければならない」とコメントした。
(AbemaTV/『けやきヒル’sNEWS』より)
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