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 北方四島の中で、現在人が住む中では最も小さい色丹島。戦前は約1000人の日本人が暮らしていたが、今は約3000人のロシア人が住み、漁業などで生計を立てている。島の道は舗装されておらず、国後島や択捉島に比べると開発が遅れていたが、近年の開発で“ロシア化”が進んでいるという。島で起こる様々な変化に『けやきヒル’sNEWS』(AbemaTV)は迫った。

■元島民「まだ島民の戦争は終わっていない」

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 昨年12月の日露首脳会談で、両国は平和条約締結へ向けた北方領土での共同経済開発の協議開始に合意した。一方で、ロシア政府は単独での北方領土の開発を推し進め、「クリル発展計画」では2025年までに人口2割増などを目指すほか、桟橋や工場の建設、学校などの改築も掲げている。

 今回、テレビ朝日・政治部の井上敦記者がビザなし交流の団員の一員として色丹島を訪れた。まず案内されたのは、拡張工事が終わったばかりの大型水産品加工工場。今後、別の場所にも大規模工場の建設を予定している。完成すれば1日の生産能力は現在の3倍になり、雇用の創出も期待されているという。

 島の労働者は待遇面でも優遇されている。工場の関係者によると、国の政策などもあり、同じ職業でもロシア本土と比べて倍近くの給料を得られる人もいるという。

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 ロシア政府が力を入れるのは、島の子どもの数を増やす計画だ。子育て支援策は手厚く、一部地域では3人目の子どもの保育料が無料になるうえ、国から土地の無償提供もあるという。

 続いて案内された学校は、最新の電子黒板にパソコンなど、学習環境は充実しており、ここ10年間で生徒数は30%増えたという。教室の各所にはプーチン大統領の写真が掲げられ、北方領土とロシア本土が同じ色の地図も貼られていた。

 色丹島の元島民・得能宏さん(83)は、11歳の時に終戦を迎えその後島を追われたうちの1人。現在は、ビザなし交流の際に語り部として同行し、祖父などが眠る色丹島へ墓参りを続けている。島内には7カ所の日本人墓地があるが、当時の姿を残すものはほとんどなく、戦後墓石はロシア人が住む住宅の基礎などに使われたという。

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 得能さんが再び島を訪れ、墓参りができるようになってから今年で50年。根室市から色丹島までは船で10時間以上を要し、墓参りは「体力的にも厳しい」と話す。「まだ島民の戦争は終わっていない。戦後は我々にはまだないんだと皆思っている。日本とロシアが可能な限りけじめをつけつつ、関係を保っていけるようにしてほしい」と訴えた。

■“ふるさと化”進めるロシア

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 今回、ビザなし交流の一員として色丹島を訪れた井上記者は、「表立って記者としての取材はできず、あくまでも同行しながら少し取材をする形だった」と話す。カメラを回すことは基本的に問題ではないが、軍事施設があるエリアや入域管理官がいる場所では、撮影を止めるように指示を受けたという。

 24日、ロシアのメドベージェフ首相は、北方領土を経済特区とする決定に署名した。ロシア政府によると、色丹島にある斜古丹へ特区を設置する方針だという。

 この発表の数日前に井上記者は色丹島で取材していたが、斜古丹地区へ足を踏み入れた際には、ほか場所の時とは違う、ロシア当局の様子も感じたという。「斜古丹地区では、建物を建てている様子や重機を見ることができた。ただ、この地域に入った際には車の運転手から撮影をやめるよう指示があった。舗装されていない道路だったが、スピードを上げて通り過ぎようとしている感じを受けた」と話す。

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 また、井上記者は色丹島の印象について「子どもの数が非常に多いこと」をあげる。これについてテレビ朝日・元アメリカ総局長の名村晃一氏は「生まれたところへの思い入れは強い。そういう意味で“ふるさと化=ロシア化”を進めている」と指摘した。

 井上記者によると、ロシア人の住民は色丹島を“ふるさと”だと認識しているという。「ここは自分たちのふるさと。日本人は日本の土地だから返せというが、じゃあ俺たちのふるさとを取り上げるのか。自分のお父さん、お母さんのお墓も色丹島にある。返還されるということになったら、自分たちが特別な枠組みで来ないといけないのか。(日本への)帰属という問題ではない。ここはロシアなんだから」と言われたことを紹介しつつ、「議論がかみ合わない」と述べた。

(AbemaTV/『けやきヒル’sNEWS』より)

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けやきヒル’sNEWS キャスター:柴田阿弥 | AbemaTV(アベマTV)
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