プロボクシング無敗の元5階級王者、フロイド・メイウェザー・ジュニアと総合格闘技UFCの2階級王者、コナー・マクレガーの世紀の対決が現地時間8月26日(日本時間27日)に迫っている。この対戦の舞台裏を密着したドキュメンタリー「DAZN presents メイウェザーVSマクレガー ALL ACCESS」第3話、第4話が放送(深夜0時~AbemaTV)される。本エピソードから、試合をめぐる「情報戦」について注目したいと思う。
このドキュメンタリーシリーズを見ると、「準備に余念がないマクレガー」と「余裕綽々でさほど準備なく勝てると思っているメイウェザー」という印象を持たれるかもしれない。とにかくUFCのラスヴェガスの施設で練習を重ねるマクレガーに対し、全米中を変わらず豪遊するメイウェザーの姿ばかりが映されており非常に対象的だ。
この試合に先立ち、チームやスパーリングパートナーなどを交えて綿密に用意して来たのはコナー・マクレガーだ。ボクシング戦という、メイウェザーのフィールドで戦う試合ということで当然ではあるが、元ウェルター級など世界2冠のポーリー・マリナッジを2度のスパーリングに招いて準備している。
本来では信頼あるボクサーを迎えるのが通例ではあるが、マクレガーは敢えて公で批判を繰り返したマリナッジを招聘、ケンカさながらのスパーリングを行ったとされている。この2人の練習に関しては報道陣はシャットアウト、映像なども一切ナシということで実際の結果はシークレットのままだ。公でマクレガーは「2度ともマリナッジをボコボコにした」と語るが、真実はいずれにしても不明だ。この試合に向けて実力あるボクサーとガチの勝負を2度行ったことはマクレガーの対メイウェザー戦に何らかの影響を与えることになりそうだ。
その後ラジオでマリナッジがあまり「フェアではないことが行われた」と含みを持たせて、一部では「ボクシングの反則ワザである後頭部へのパンチで倒した」との指摘もある。メイウェザーもその映像を目にしたようだが「もしかしてダーティーな戦い方をマクレガー側が選択するかもしれない」という精神的な揺さぶりの効果もありそうだ。
ドキュメンタリーでは、コナー・マクレガーを支えるチームスタッフにもスポットを当てている。今回の対戦にも、デビュー以来総合格闘技で戦って来た体制で臨むという。「自分の生い立ちや環境チームを信じること」とチームに全幅の信頼を寄せ、MMA流のトレーニングを公開している。マクレガーが行なっているトレーニングは、ボクシングとは全く違う未知数な動きも生み出す。多くの識者も「予想外の事が起きる可能性」を語っている。
一方のメイウェザー陣営は、あくまでマイペースな自分を見せ続けて来た。家族と各地を旅行し、スヌーブ・ドッグのようなセレブの友人との交友、白血病の少年との面会と会話など、イメージアップを狙った映像をカメラに撮らせ、練習している姿は一切見せない。こちらは全く手の内を見せないことで情報戦を仕掛けている。試合が近づくにつれインスタグラムなどで、かなりキレた状態の肉体やシャドウボクシングを見せるようなったが、これが今まで通り49勝を重ねて来たやり方であり、「変える必要は一切ない」というメッセージだろう。
この試合が終わった時点で、どちらかが勝った理由、負けた理由は語られるだろう。とんでもない凡戦になるか、一瞬で決まるか?しかし、この2人がどのようにこの試合に臨むかを踏まえつつ勝敗を予想する、今がこの「世紀の対決」の最も面白く、醍醐味を堪能できる瞬間かもしれない。
(C)DAZN