現地時間8月26日、米国・ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるUFC、2階級王者コナー・マクレガーとボクシング元世界5階級王者、フロイド・メイウェザー・ジュニアの世紀の一戦「DAZN presents メイウェザーVSマクレガー」(8月30日(水)21:00~AbemaTVで放送)。49戦無敗で引退したメイウェザーが復帰、ボクシング戦績「0戦」の総合格闘家マクレガーがボクシング・マッチで対戦する・・・というスポーツ史上稀な興行への注目は日増しに高まっている。今回は、ここ数年MMAの世界で話題を提供し「時の人」となったコナー・マクレガーに注目しようと思う。
アイルランド・ダブリン出身のマクレガーは、幼い頃からキックボクシングをスタート。同時期にボクシングをはじめ国内のユース王者になるなど頭角をあらわした。この時期のボクシング技術がマクレガーのその後の格闘家としての武器になるが、16歳になるとボクシングから総合格闘技へと転向し、アマチュア大会に出場。英国の総合格闘技団体CWFC(ケージ・ウォリアーズ・ファイティング・チャンピオンシップ)でフェザー級とライト級の2階級王者になった。
2013年にUFCに昇格、5連勝でフェザー級暫定王者決定戦に勝利。2015年当時、難攻不落と言われた王者、ジョゼ・アルドを13秒でKOで王者に。続いてノンタイトルながらネイト・ディアスとのリング内外での舌戦も含めた2度の対戦で160万件というUFC史上最高のPPV数を記録。階級を上げてライト級王者、エディ・アルバレスとの対戦でも完勝。UFC史上初の2階級王者となる。チャンピオン戦線に絡んでからは僅か2年、またたく間に総合格闘技界の中心となったのである。
マクレガーといえば、ファイターとしての強さに加え、試合前のトラッシュトークでのし上がってきた印象がある。汚い言葉や挑発で対戦相手をリング外で攻撃することで動揺を誘う。この手口に難攻不落のフェザー級王者、ジョゼ・アルドも術中にハマる。階級の違うネイト・ディアスとの2度のケンカマッチなど、プロレスラーさながらの盛り上げ方と煽りで、UFCのPPVの売上にも大きく貢献してきた。
またSNSや自ら運営するメディアなど複数の発信手段も巧みだ。引退をほのめかしUFCの団体運営権を差し出すように要求、長期休業を勝ち取り自身の露出を減らし価値を高める・・・。リングに上がらなくてもコナー・マクレガーの話題が尽きないのは、彼の卓越した情報発信力にある。
その真骨頂ともいえるのが、今回の「世紀の対決」といえるフロイド・メイウェザー戦だ。2015年雑誌でのマクレガーでの発言が発端となったこの対決だが、その後TV番組、インスタグラムなどさまざま方法でメイウェザーを挑発し続け、最終的に偉大なボクシング王者をリングにおびき寄せることに成功した。巨大なお金が動く興行に両陣営さまざまな思惑が動いたことは容易に想像できるが、「嘘から生まれたまこと」をまさに地で行っているのである。
アメリカの総合格闘技のネットメディア「Bloody Elbow」によると、この2人の対戦のスポーツベッティングの95%、掛け金にして全体の85%がマクレガー勝利に掛けているという。「マクレガーの奇跡のラッキーパンチに賭けよう」という動きで、勝利の期待よりも「一発当ててやろう」という心理が働いていると思われる。そんな一般的な評価でも圧倒的に不利な状況の中、彼がどのような戦いを見せるのか注目が集まる。