北朝鮮の暴走を抑止する上で欠かせないのが、最大の貿易国である中国による経済圧力だ。北朝鮮と対決姿勢を強めているアメリカは、これまでも度々北朝鮮に対する制裁強化を中国に促してきており、中国も国連安全保障理事会の決議に基づき、今月15日以降、北朝鮮からの石炭などの輸入を全面的に禁止している。
それでも止まらない北朝鮮のミサイル・核開発。中国の"デッドライン"はどこにあるのだろうか。AbemaTV『AbemaPrime』では、識者に話を聞いた。
拓殖大学教授の富坂聰氏は、中国の思惑について「色々な圧力をかけると思うが、これが短期間で解決すると思っていない。アメリカ以上にじっくりやらないと解決しないと思っている。中国は朝鮮半島の混乱を一番嫌う。混乱が長期に及ぶことで、自国の経済に影響が出ることは絶対避けたい。また、朝鮮半島の南北統一は絶対に嫌。残念なことだが、2つに分かれている方が扱いやすいからだ。つまり自国にとって、現状はそれほど悪くないと見ている。北朝鮮が困るところまでは制裁しない」と話す。
その上で「中国とロシアは7月4日に中国側が出したロードマップに合意している。その内容は"ダブルフリーズ"といって、米韓合同軍事演習を止める条件として核実験とミサイル実験を止める、そして両者をテーブルにつかせるというものだった。この案に乗ってくれと個別に交渉している」と説明、「残念なことに、各国が期待するほど、中国には北朝鮮に対する影響力はない」と断言した。
拓殖大大学院特任教授の武貞秀士氏も「北朝鮮には自分たちの主体性を確立することを目指す『主体思想』があるので、中国がこうしなさいと言えば言うほど独り立ちしようとする部分がある」とした上で、「中国としては、朝鮮半島で戦争が起きることはなんとか防ぎたいが、金正恩体制が崩壊するのも防ぎたい。金ファミリーのもとで、北朝鮮の地下資源の独占契約を随分やってきた。そして、北朝鮮が朝鮮半島の北半分を統治しながら、アメリカ・韓国・日本を振り回している。戦争につながらない限りは、この状態は中国にとって悪くない。日本・韓国の核武装が現実のものにならない限り、今の状況を継続させるために一生懸命に努力するだろう」とした。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)