UFCへの源流の一つともいえる格闘イベント「PRIDE」の名勝負を連日放送しているAbemaTV。9月8日は、「PRIDE SPECIAL 男祭り 2003」を放送する。この大会では、桜庭vsグレイシーを超える遺恨の対決となった吉田秀彦vsホイス・グレイシーのリベンジマッチが行われた。
この対戦には伏線がある。吉田のプロ格闘家デビューとなる「Dynamite! 2002」の道着を着た柔道マッチでホイスと対決。当初は総合格闘技ルールでの対戦を想定していたが、グレイシー側のルール要求により「首から上の打撃は禁止」というルールとなった。
この試合、序盤は上になった吉田を下から決めようとするホイスという膠着した攻防で幕を開け、その後吉田のヒール・ホールドや、引き込むホイスの道着を掴んで下に叩きつけるなど新人らしからぬ戦いぶりをみせ、柔道技の袖車で気管を絞めるとレフェリーがホイスが失神したとみて試合をストップ。当然ながらホイス側はタップしていないと猛抗議するも試合は覆らず遺恨を残すこととなった。
かくして翌年の「PRIDE SPECIAL 男祭り 2003」で行われた再戦は、「柔術vs柔道」「エリオ・グレイシーと木村政彦の50数年越しの弔い戦」などさまざまな伏線を交えつつ、グレイシー柔術と日本柔道が総合格闘技のリングで戦う「決闘」となった訳だ。
当然ながら前年の柔道マッチでの遺恨を引っ張りだし「ヨシダはあの試合でウソをついた」と非難しトラッシュトークを繰り広げるホイスに対し完全決着を誓う吉田という構図も出来上がり、10分2R、決着がつかない場合はドロー、レフェリーストップ、ドクターストップなしの完全決着、4点ポジションのヒザ攻撃は禁止という特別ルールで争われた。
この試合でホイスは前回の袖車での敗戦からの反省だろう、ゴング開始前から道着を脱ぐ作戦で観客を驚かせる。吉田サイドにとってもこれは想定外。ゴング開始からパンチやローといった打撃勝負に出ていきなり吉田にローブロー攻撃で、ホイスはイエローカードを貰う。
試合再開後、吉田のフックにぐらつくホイスはテイクダウンされサイドポジションを奪うが、その後持ちこたえ吉田の道着の袖を利用するなど狡猾な戦いを繰り広げる。その後も下からヒールホールドやパンチなど泥臭く吉田を攻め続け、逆になるとホイスは徹底したパウンドで1Rの後半5分間に渡り試合の主導権を奪う。
2Rに入っても打撃戦から入るホイス。寝た状態でも吉田の道着を掴み吉田の動きを封じ上からも下からも徹底的にパンチを当ててくる。1R同様、マウントポジションからねちっこくパウンド、スペースができると締め技、離れるとパウンドと完全にホイスのペースで時間が流れていく。残り3分になると後ろから締められた体勢で背後からパンチが飛ぶ。
記録は時間切れ引き分けとなっているが、誰が見てもホイスの完勝に終わったこのリベンジマッチ。ドローという裁定が吉田にとって屈辱的だったことは言うまでもない。
一方、UFC黎明期の絶対王者でありながら、桜庭和志に完敗、続く吉田とのグラップリング戦にも敗れ「進行形のMMAに対応できないのでは?」との疑念もあったホイス・グレイシーがこの試合で、吉田を圧倒し再び主役として踏みとどまった訳だが、これが最後に凄みを感じさせた試合ともいえるだろう。その後11年の時を経て復帰したUFCの新たな絶対王者マット・ヒューズに完敗し第一線から退くこととなる。