リーダーのJAGGLAを筆頭に関西のヒップホップシーンを沸かしてきたクルー・TORNADOのメンバーとしてはもちろん、ソロとしてもWorld StarHipHopへの露出や、US勢とのリンクで楽曲やミックステープを発表するなど日本にとどまらぬ動きを見せてきたCz TIGERが、ファーストEP『PURPLE WAVE』をタワーレコード限定でリリースした。

今回のEPは、TORNADOのメンバーに加えElle Teresa、ゆるふわギャング、MonyHorse、Cherry Brownといった面々を客演に迎え、日本にバッチリ照準を合わせた一枚。トラップを基本路線に、客演勢とともにさらなる幅を見せている。来年にはファーストアルバムや海外リリース、さらにはUSアトランタやカナダ、ドイツツアーも予定しているという彼に聞く。

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――そもそもの音楽との結びつきはどのように?

Cz TIGER:お父さんがジャズバーを開いていて、お母さんがブラックミュージック全般が好きな人で、お兄ちゃんがレゲエのセレクターをしてたり、音楽は小っちゃい頃からジャンル問わず耳にする環境でした。小学校ぐらいから自分で習いたいってピアノ教室通ってたりとかもして、単純に音楽が好きやったんでしょうね。

――そんな音楽の中でも特にヒップホップにハマったのはどうしてですか?

Cz TIGER:団地出身の自分らにはヒップホップのハングリーな部分が凄くハマって。MOBB DEEPとかDIPSETとかMIKE JONESとか、そういう2000年代の泥臭いヒップホップ、サウスのギラギラした感じにかなり影響されましたね。

――そこからラップを始めて、TORNADOのメンバーとなるまでのいきさつは?

Cz TIGER:中学ぐらいから友達と遊びで曲を書くようになったんですけど、最初は同い年のDEEと2人組でやってて、高校始まるぐらいの時に高槻にTORNADOってヤバいヒップホップのクルーがおるって聞いて、会いに行って。それでライヴ観たらカッコよくて、そこで「クルー入らしてください」って志願しましたね。それで同世代のクルーのBANNINGSのメンバーと一緒にTORNADOに所属して、TORNADOとBANNINGSを合わしたんが竜巻一家になったっていう。

――へえそうだったんすね。TORNADOの他のメンバーとは年齢的にどれくらい違うんですか?

Cz TIGER:だいたい5つ上とかで、ちょっと憧れの先輩プラス地元のヒーロー的な感じやったっすね。その頃って日本語ラップそんな聴いてなくて、自分のイメージとマッチした人もいなかったんですけど、JAGさん、TORNADOの皆が現れてまさにヒップホップやなって。今で言うトラップとかサウスに特化して、その頃からやってたのが自分に一番マッチしたましたね。

――それでその後アメリカに渡ったんですよね。

Cz TIGER:TORNADOに所属してからしばらくは作品出すこともなくとりあえずストリートの動きを中心にしてたんすけど、18ん時から1年半ぐらい少年院入ることになって。19、ハタチくらいってちょうど子供から大人に変わる時期だからみんなどうしようってなるじゃないですか。その時期に自分はやっぱりヒップホップしたいって少年院の中でずっと考えてて。それで出てきて、待っててくれた相方とアメリカ行こうって約束して、ライブしてお金貯めて行こうってことやったんすけど、ライブの帰りに相方と交通事故に遭って相方だけ亡くなってしまって。。。

――それで結局一人でアメリカに。

Cz TIGER:もちろん相方との約束が一番の理由でしたね。でも一人になった以上、一人で何がアメリカできるか挑戦したくて、そこから1、2年でお金貯めて、ハタチ後半に行って22ぐらいで帰ってきた感じです。

――その時はアメリカのどこに行ったんですか?

Cz TIGER:L.A.いたのが1年でアトランタが半年ぐらいですかね。

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――L.A.の暮らしはどんな感じだったんですか?

Cz TIGER:全くコネなく行ったんで、モーテル借りて、そこから毎日家探して、お金もストリート的な動きでいろいろなもの売って、その日暮らしを続けてて、まあそれはそれで楽しかったけど。そしたら日本人でサウスのスタイルでアトランタでやってるヤツなんて早々いないから、声かけられるようになって、SNOOP DOGG率いるクルー・DPGのスタジオとかTHREE 6 MAFIAのスタジオに行けるコネができて、そこで一気にファーストミックステープの『HEAVEN』が出来たって感じですね。

――なるほど。向こうでは日本人であることが逆にアドバンテージになったっていう。

Cz TIGER:僕がもしアメリカ人だったら、見た目だけで言うと特に目立たない存在だったと思うんですよ…アトランタには別にジャラジャラとジュエリーをしてる人もいれば悪い人もいるし、色んなクルーもいるし。でも日本人は少ないから。日本人ってだけでも注目されてもされておいしいくないなっていうか、絶対自分らやったらできるんちゃうかなっていう謎の自身はありましたよ。

――次に移り住んだアトランタはどうだったんですか?

Cz TIGER:L.A.はどっちかっていえば成功してから行くって感じのとこですけど、アトランタはその途中の人がいるとこやからすごく面白くて、だいぶ違いますね。俺なんて初めて行ってほぼ無名なのに、L.A.で制作した僕の曲で、たまたまホテルにいたアトランタの普通に小っちゃい女の子達が踊ってくれたり、声かけてくれたり、それってけっこううれしいじゃないですか。それでここで音楽で頑張ってみようって思いも強くなって。しかもスタジオが山ほどあるんですよ。だからお金がそんなになくてもいっぱい曲作れるし、MIGOSとかが流行る時やったんですごく活気があったし。

――そうした向こうでの体験を通じて自分自身が変わったと思うようなことはありました?

Cz TIGER:向こうは音楽つったら本気でそれを24時間やってるような感じ。めちゃくちゃ不良やし、ずっとハイな人やのに制作の時は一生懸命やるのがなんでかっていったら、やっぱ明日食えなくなるからとかそういうリアルな理由で。ラッパーっていうのは不良の延長じゃなくて仕事なんやってだいぶ意識変わりましたね。

――以来ソロの動きを活発化させたのも、言ったらその表れですか。

Cz TIGER:ソロっていうのは全然意識してやってなかったんですけど、相方の死もあったし、L.A.でできたこともあったんでソロ活動もちゃんとしようと思って、L.A.の家に機材集めて毎日制作してて、ミックスの1枚目と2枚目は向こうにいる間に作った感じですね。

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――それらを経て、今回のEP『PURPLE WAVE』になるわけですけど。

Cz TIGER:このEPはEPを作ろうっていう感じで作ったんじゃなくて、ミックステープの趣旨に合わなかったものだったり、向こうで作ったものを練り直した曲などを1枚にまとめたって感じです。音源は半分ぐらいまでは出来てて、あと半分はここ2ヶ月3ヶ月ぐらいでタイトルのイメージ湧いて一気に作った感じで。

――これまでのミックステープもそうですけど、作品を出すから曲を作るっていうより、曲をどんどん作って行く中で一つのイメージなりテーマが見えてきたら作品にまとめるっていうスタイルですか?

Cz TIGER:どっちかといえばそうですね。何か出すからそれ用に制作に入るっていうタイプではなくて。

――その時その時のノリをパックするというか。

Cz TIGER:そのノリと、今まで見てきたもんをうまくかけあわせていく、一緒にするって感じで。

――今回のEPを見ても自分のバックグラウンドについてはほとんど曲にしてないと思うんですけど、それもそうした曲作りの延長っていう?

Cz TIGER:そうですね。海外の人ルーズなんで音源送ってこないのが当日わかることもよくあるんで、すぐ聴いてすぐ反応してすぐ書くのが身について、その方がいいものができるっていうルーティンになってきて。でも、今まで通りリリックを書いてスタジオに行くこともあるし、その使い分けができるようになったんだと思います。

――EPには海外勢に加え、LIL’諭吉さんやMOITOさんら日本勢も制作に参加してますが。

Cz TIGER:音源を海外からすぐ集めれるのは自分の特権やと思うんですけど、日本のアーティストも協力してくれて結構面白い幅で出来た。ミックステープはすごくストリートに密着した内容だったんですけど、今回はいつもよりふざけてる感じ。ちょっとわかりやすくするために、日本語も意識してだいぶ多くしたし、音的にも今回ガチャガチャしたトラップっていうより、楽器の音が生きてる曲が結構多かったりするかもしんないですね、生演奏したら映えるようなものとか。

――そういうトラックが欲しいって具体的にトラックメイカーに指定することもあったり?

Cz TIGER:そういうのを柔軟にできるプロデューサーに指定した時もありますし、逆に無の状態でいきなり聴いてそこから感じたことを書くのも面白いのでどっちもありますね。

――今回ほぼ全編に日本勢をフィーチュアしてるのもこれまでにないポイントかと。

Cz TIGER:今までは海外の人が多かって、日本の人とあんまりできてなかったんすけど、友達も全国にいっぱいいるんで、自分が面白いなと思う仲間を集めて僕のトラップと彼らのやってるトラップを合わしたらアメリカにないもんができるなと思って。向こうはやったもん勝ちっていうか、スタジオでもいい音が流れたらみんなが書き出して取り合いになったりとか、そのハングリー精神がいいんですけど、逆にお金お金ってなりすぎてる部分もある。それこそ〈ゆるふわギャング〉みたいな発想はアメリカにはなくて、日本にもいろんなタイプのアーティストが次から次に出てくるのが面白いと思ったし。

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――改めて作品の感触を聞かせてもらえれば。

Cz TIGER:『PURPLE WAVE』ってタイトルつけてるし、いつもリーンのコップ持ってるから、TwitterのDMとかでも「どこで買ってるんですか?」とか「売ってくれませんか?」って毎日すごく聞かれるんすけど、そうやってシロップに興味持つ人が増えて、カルチャー的にもちょっと衝撃与えられたのが自分的に面白かったし、そういうカルチャーに自分の音楽も一緒にバーンと乗せれてよかったっすね。

――ただ、アメリカはメジャーのカルチャーとしてヒップホップ自体があるから、そういう世界もある程度認知されてるけど、日本では距離があるし、一般的な通念から言っても全然アウトなわけで。

Cz TIGER:だからそこの間もバランスとれたらなっていう感じですよね。まあだいぶリスクはあるんですけど(笑)。日本ではWIZ KHALIFAみたいなことにはなんないじゃないですか。

――間違いないですね。そこにジレンマもあると思いますけど。

Cz TIGER:でも、こっちも命張ってやってるし、音楽が好きやし。(EPに収録の)「FAVORITE」の歌詞でも何色がお気に入りとかちょっとかわいくして言ってみたりしてるんすけど、ストレートに言ったらすごいヤク中な曲かもしれない(笑)。でも、それも音楽に一部にあっていいと思うし、そのカルチャーも昇華して表現できたら面白いですよね。

――「DAYS」でも歌ってるように〈ただホントのことを歌うだけ〉と。

Cz TIGER:実際そのカルチャー、生活スタイルを音楽でリアルに追及していきたいし、そんな僕のスタイルだからこそみんな見てくれて、声かけてくれるってのもあると思うから。

――あくまでもそこはブレずにやっていくっていう。

Cz TIGER:僕にそういうイメージついてるからこそちゃんと音楽も成立させたいっていうのもあるっすね。音楽でちゃんとやれてなかったらそれこそ僕がヒップホップに悪影響を与えてしまう結果になるから。

――ですよね。それも含めて今後の動きも楽しみにということで。来年の早い時期にはフルアルバムも予定しているとか。

Cz TIGER:EPは曲数少ないんですけど今までより自由にできた。いろんなタイプの音とか人とできたし、いい音楽してる人とは一緒にやるしっていう柔軟な姿勢を見せれたんで、そこをこれからもっと膨らましていけたらなって感じですね。みんな僕のことナゾやと思うんで、今回のEPでこういう一面もあるんやってわかってもらった上で、次どんなん出るんやろうって待っていてもらえたらなと思います。

――さらに今後についてはどう考えてますか?

Cz TIGER:今はトラップが取り上げられてて、俺もそういうふうに見られてると思うんですけど、ジャズとかレゲエとか色んなバックグラウンドもあるんで、よりアーティストとしてアートの幅を広げて、色んなトラックに挑戦してみたいし、トラップだけで終わりたくないっていうか、そのトラップがどう発展していくかっていうのをリスナーに見せたいし僕自身が見てみたい。あとは日本人にもこうやってやってる奴がおるって日本含め世界に対して言える存在にはなりたいですね。

TEXT:ICHINOKI HIROYUKI

PHOTO:OBARA HIROKI

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Cz TIGER 1st EP

『PURPLE WAVE』

Price : ¥1.836 (tax in)

Label : TORNADO RECORDS

【Track List】

01. FAVORITE (prod. Yenyen Beatz)

02.ハナシカタにきいつけな (prod. Cali-Co Beatz)

03. ON THE MOON feat. Elle Teresa (prod. Yenyen Beatz)

04. DAYS (prod. Tee On The Track)

05. OUT OF THE SPACE feat. Ryugo Ishida, Sophiee, Elle Teresa, Yuskey Carter (prod. Yenyen

Beatz)

06. PURPLE WAVE feat. MonyHorse (prod. Tokyo Trill)

07. I FEEL LIKE feat. Cherry Brown (prod. Lil'Yukichi)

08. DON'T CARE (prod. Cali-Co Beatz)

09. 竜巻一家 feat. TSURU, Lil DRAGON, HABU, Bic, JAGGLA (prod. MOITO)

- BONUS TRACK -

RIDE WIITH ME feat. Willy Wonka

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