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 ミャンマーで暮らす少数派のイスラム教徒「ロヒンギャ」と呼ばれる人たちが、激しい迫害を受けている。

 ミャンマー・ラカイン州では、先月25日から治安部隊とイスラム系少数派ロヒンギャの武装集団の間で衝突が始まり、武装集団約370人、市民約30人が死亡しているという。隣国のバングラデシュなどに難民として脱出したロヒンギャは37万人にのぼるとされる。

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 ロヒンギャの迫害については、国際社会から多くの批判や懸念が示されており、国連安全保障理事会は緊急会合を開く予定だという。バングラデシュのシェイク・ハシナ首相は「人道に反する」と非難し、平和活動家のマララ・ユスフザイ氏は「(スー・チー氏は)迫害非難を」との声明を発表している。

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 一方で、ミャンマーを擁護する国も少なからずある。その筆頭としてあがるのが中国だ。なぜ、中国はこれほど国際的に非難されているミャンマーをかばうのか。

 国際政治学者の六辻(むつじ)彰二氏は「本音と建前がある」と説明する。「1つは中国自身の外交方針。中国は基本的に『よその国の問題に他国が口を挟むべきではない』という内政不干渉・主権尊重を大原則としている。ロヒンギャ迫害はミャンマーの問題なのだからよその国がとやかく言う筋合いではない、というのが建前の部分。2つ目は、ミャンマーと経済的なつながりが深いという実質的な部分。欧米諸国がミャンマーに対して軍事制裁を敷いていた時期に、繋がりを持ち続けていた国の1つが中国。2013年以降、ミャンマーから中国に向けて天然ガスが輸出されている。その頃から中国向けの輸出が急激に増え、今ミャンマーの輸出の約4割が中国。かつ、中国はミャンマーの港を利用して中東・アフリカ方面からの石油をよりスピーディーに輸入している」と双方にメリットがあることを指摘した。

 ミャンマーに対する累計投資額は、中国が約2兆円(1位)と全体の4分の1を占めている。一方、日本は約760億円(11位)で、2012年度と比べると10倍以上の投資額だ。ミャンマーが民主化して以降、各国からの投資は加速しており、中でも中国、インド、タイの投資が多くなっているという。

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 そんななか、ロヒンギャ問題に対して日本ができることはないのか。六辻氏は、日本のスタンスを「中国と変わらない」と指摘する。「前提として日本ができることはほとんどない。この問題はミャンマーの問題だというのが日本政府の立場。ミャンマーの治安部隊を攻撃したロヒンギャは批判するが、ロヒンギャを攻撃した治安部隊は批判しない。そういう意味では中国と変わらない。日本は、政府こそ国民を代表するものだという観念が強い。それ以外とは深い関係を持たない」と述べた。

 一方で、ロヒンギャ問題は外交全般における日本の“グレー”“中途半端”な立場を見直す1つの大きなきっかけだともいう。「西側先進国であるというのが、冷戦時代からの日本の基本的なスタンス。つまりG7の一角、そこにアイデンティティーがある。一方で欧米諸国と日本は違うんだという意識もある。よその国のことに口を出してああだこうだ押し付けがましく言わないのが我々の文化だ、というのが日本政府の考え」と指摘した。

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 過去日本は、フィリピン南部にあるミンダナオ島で繰り広げられていたイスラム武装勢力と政府軍の衝突において、和平合意に貢献した例がある。今回のロヒンギャ問題を仲介する可能性について六辻氏は「日本政府がその意思を持つか持たないかという話。火中に栗を拾うようなことを日本政府ができるかどうか。もっと言えばスー・チー氏とは関係が怪しい部分がある。日本は軍事政権時代を認めていたので、彼女が日本をそこまで信用できるかどうか」と見解を述べた。

(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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