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 17日、青森県八戸港で地球深部探査船「ちきゅう」が一般公開された。

 2005年に建造された「ちきゅう」の全長は新幹線8両分とほぼ同じ210mで、総トン数は5万6752トン。最大の特徴は、地球の奥底を掘り下げるために設置された巨大なやぐらだ。高さは船底から約130mもあり、海底下7000mの掘削能力を誇る。これにより、海底の地層からサンプル「コア」を採取し、様々な研究に活用。最終的には人類が未だかつて目にしていない地球の内部「マントル」を目指している。

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 海洋研究開発機構(JAMSTEC)の倉本真一・地球深部探査センター長によると、碇ではなく360度回転する6基のスクリューで船を固定、さらにGPSなども駆使することで、正確に定点に留めるのだという。地球の奥深く掘削するためには、こうした技術が必要不可欠なのだ。

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 掘削作業が行われている船体の中心部にある穴の大きさは「小学校のプールくらい」。1本10mのパイプを4本つないだ状態で海中に下ろす。先端に付いているドリルは人工ダイヤモンド製で、中心部の穴から試料になる「コア」を採取する。海底から上がってきた「コア」には硫化水素などの有毒ガスを含む場合があるため、調査の際にはガスマスクが欠かせない。

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 また、「コア」を非破壊の状態でスキャンするためのCTスキャナーも備えられている。時間とともにどんどん変質し、形も変わっていくコアを調べるためのものだが、「コア」の水分量が人間とほぼ同じ約70%であるため、医療用スキャナーを使うことが可能なのだ。

 「水や炭素が大量に含まれていることがわかってきている。地球の環境を決める重要な因子なので、それらがどう含まれ循環しているか、それを知る意味でもマントル掘削をやらなければならないと思う」。

 JAMSTECでは、深海調査研究船「かいれい」を用いて、今月16日から来月2日まで、ハワイ諸島東方沖で、その目的はマントル掘削の候補地点選定のための海底調査を行う予定だ。マントルに入っていくという人類初となる試み。倉本氏にとって最終目標とは一体何なのか。

 「マントルを誰も取ったこともないという科学的な興味ももちろんある。ただし、この星は外から見ると青くきれいな星だが、物質的にはマントルの星。それが全ての気候や気象、地殻変動を左右している物質なのに、我々は一度も手にしたことがないというのが非常に驚くべきこと。そのマントルを取ろうという提案がされて半世紀経ってしまった。それを我々は今、『ちきゅう』という新しいツールを持ったので、これで成し遂げようと考えている」。

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 「ちきゅう」の活躍はマントルの調査だけにとどまらない。2012年には海底の下2400m、と2000万年前の地層から微生物を発見した。また倉本氏が 「『ちきゅう』は決して過去を見ているだけでなく、未来を見据えている」と話すとおり、研究の成果は東日本大震災の巨大津波のメカニズム解明にもつながった。

 「この場所が3.11(東日本大震災)を引き起こした断層だと判明し、そのメカニズムも分かった」と倉本氏が説明するのは、震源域で見つかった「奇跡のコア」と呼ばれるサンプルだ。悪天候の中、水深7000mの海底のさらに下から掘り起こされた。断層が大きくすべって巨大な地震につながったこと、そこで発生した摩擦熱が断層を隆起させ、巨大な津波を引き起こしたことなどがわかったのだという。

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 「東北の巨大地震の研究はこれで終わりではない。南海トラフとの近似性も非常にある。広がりとしては東北や南海など巨大地震を起こす根本的なメカニズムを理解する上でキーになるデータが取れたのではないか」と倉本氏。「ちきゅう」は巨大地震を繰り返す震源域の南海トラフを調査し、すでに過去の地震の原因となった地点を発見している。掘削した穴にはセンサーを設置し、次の地震へ備えている。「少なくともモニタリングすることで巨大地震のしっぽをつかめる可能性が将来あるのではないかということで、我々も観測ネットワークを構築している」。

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 未知の発見につながるかもしれない夢のプロジェクト。「そんなに掘って大丈夫なんですか?」との質問に、倉本さんは「大丈夫です!」と力を込めた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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