中学生棋士・藤井聡太四段(15)の29連勝をきっかけに、将棋の対局番組にも注目が集まっている。開局以来、将棋の放送を続けているNHKでは、9月3日に森内俊之九段と藤井聡太四段の対局で、異例の生放送を実施した。ケーブルテレビなどで視聴できる専門局の囲碁・将棋チャンネル、ネットではニコニコ生放送のほか、AbemaTVにも将棋チャンネルが2月に誕生。各局で注目の対局を放送し続けた。放送する対局は同じでも、局によってファン層が異なることもあり、解説や聞き手を務める棋士、内容にも違いがあるようだ。
NHKが放送する自社の棋戦「NHK杯テレビ将棋トーナメント」は、持ち時間各10分、考慮時間各10分、その後は1手30秒以内という、棋戦の中では最速の早指し戦。聞き手、解説者は、次々と変わる局面を迅速かつ的確に視聴者に伝える必要がある。解説にはベテラン、若手の両方が務めるが、役割はほぼ同じだ。直前に放送される情報番組「将棋フォーカス」と一緒に楽しむ視聴者が多いのも特徴的だ。
囲碁・将棋チャンネルは、専門局らしく長時間の対局でもじっくり放送する。また、過去の対局を振り返って解説するなど、コアなファンに向けた内容も多い。講座番組も多く、棋力も備えた視聴者にとっては「見て強くなる」というイメージが近い。
将棋の対局番組に変革をもたらしたのがニコニコ生放送だ。ネットらしく、対局時間の尺にとらわれない配信で、棋士や盤面が映る画面にコメントが飛び交う様子は、既存の将棋ファンにとっては斬新だった。長時間の対局では食事やおやつを紹介、解説や聞き手も自身の趣味などでトークを展開した。後に行われた棋士とAIとの対決も大きな注目を集めた。
テレビとネットの融合として登場したのが、AbemaTVの将棋チャンネルだ。若年層もターゲットにしていることから、トップクラスの対局でも初心者向けの解説を盛り込んでいる。他局が比較的ベテランクラスの棋士を起用する中、若手棋士が解説を務めることが多いのも特徴のひとつだ。また、聞き手や解説のプライベートを紹介する「棋士の一日」は、意外な日常がSNSなどで大きく拡散したこともあった。
各局から解説のオファーを受ける野月浩貴八段は「出る局によって視聴者の層が違うので、話す内容もかなり意識します。あまり解説の経験がない若手とは、終わった後に内容がどうだったかなど、振り返りもよくします」と説明した。
ひと昔前に比べれば、かなりバリエーションが増えた将棋の対局番組。自分の将棋レベルや気分、知りたい情報などに合わせて放送局や番組を選択できる、ファンにとってはありがたい時代になっている。
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