■"踏み絵"の屈辱、民進党出身者にシコリ残す可能性も
3日の午後、希望の党が独自候補(82人)と、憲法改正の趣旨など政策協定に合意した民進党出身者(110人)からなる第一次公認192人を発表した。同党の若狭氏は2次、3次公認も合わせ、衆院過半数の233を超える候補者を擁立できる見通しだと話している。
小池代表は「私ども希望の党そのものにこれまでご縁があった方、それからあと民進党から希望のあった方々、そしてまた政策が一致すると確認させていただいて、仲間として同志として、真の改革をやっていこうという、そういった方々を第1次公認ということで発表させていただくことになった」と説明した。
3日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演したテレビ朝日政治部の藤川みなよ官邸キャップは、希望の党の立候補者数がこれだけ膨らんだ理由について、「議員の間では"誓約書"とも呼ばれている『政策協定書』の存在が非常に大きかった」と指摘する。
今回、希望の党が公認を出す条件として提示した政策協定書には、「現下の厳しい国際情勢に鑑み、現行の安全保障法制については、憲法に則り適切に運用する」「憲法改正を支持し、憲法改正論議を幅広く進めること」「2019年10月の消費税10%への引き上げを凍結すること」「外国人に対する地方参政権の付与に反対すること」といったもののほか、「党に資金提供すること」という項目も存在する。
藤川氏は「当初示された内容では、厳しすぎてとてもサインできないという人も多かったので、少し緩めてサインをしやすくした。特に、当初は指定する金額についての一文への反発は非常に強かった。結党したばかりで資産はほぼゼロという希望の党にとって、「150億円にも上るといわれる民進党の資金力に期待している部分がある」と説明。
「政策協定を結んでいないとやっぱり野合だという批判に耐えられないということで、ある程度『政策で一致している』というところを見せるための協定書でもあった。しかし、それが強権的・独裁的だというイメージの方が強くなってしまったところはちょっと誤算だろう。このような踏み絵(政策協定書)を踏まされたという屈辱は、感情的なシコリを残すのではないか」。
■自民・公明「厳しい選挙になる」
また、この日は枝野代表が立ち上げた「立憲民進党」も、民進党の前議員6人の名前が書かれた新党の届出を提出。北海道では民進党から立候補する予定だった11人の大半が立憲民主党に入る方向で調整が進んでいる。しかし、「希望の党は、民進党出身者が無所属で出れば対抗馬を立てないが、立憲民主党として出るのであれば対抗馬を立てる方針を示していて、悩む人が多い。立憲民主党がどこまで伸びるか」(藤川氏)という事情もある。こうした動きに、共産党と社民党は立憲民主党との選挙協力に応じる構えだ。
民進党の分裂について、麻生財務大臣は3日の閣議後会見で、「所属しておられる議員さんは、結構迷惑しておられるだろう。無所属になるのか希望になるのか立憲になるのかという話で、議員さんは結構迷惑しておられる。その点は大変だろうなと思う」と、"麻生節"も披露した。
政権維持を目指す「自民・公明」の与党に対し、安倍政権を批判する「民進党・自由党からの合流組を含む希望の党」、そして「立憲民主党と、連携する共産党、社民党などの勢力」という三つ巴の様相を呈してきている。
公明党の山口代表は演説で自公の結束をアピール。自民党も安倍総理が出席して選挙対策の会議を行い、選挙区調整や情勢の分析を行った。塩谷選対委員長は「乱立すればたぶん有利な構図になると思うが、どういう調整を図ってくるかまだちょっと流動的だと思うので、まだ何とも言えない」と警戒感を示した。
番組に出演した外務副大臣の佐藤正久・参議院議員(自民党)は「本来政治家というのは国家国民のためにというのが前提だし、理念がまずあるはずだ。それを飲み込んで安全保障法制には賛成しろ、さらに上納金を出せという政策協定書にサインするというのは議員として屈辱的だろう」と、民進党出身者たちに同情の念を示しつつ、「一般論から言えば、野党が割れたことで自公に有利な状況になったとも言えるが、各選挙区を見れば、必ずしもそうではない。立憲民主党の候補や無所属になった候補が共産党と政策協定すれば、与党と一対一の構図になる可能性があり、かなり厳しい選挙になると思う。決して甘くはないと思う」と話す。
■選挙後の協力関係も未だ見えず…
また、希望の党は日本維新の会と東京・大阪で"すみ分け"をする方針で一致。政権選択選挙に持ち込みたい考えだ。しかし、小池代表は自身の出馬の可能性については「100%ない」と断言しており、過半数を獲得できるのか。また、獲得した場合、希望の党は誰を総理大臣に指名を受けるのか。若狭氏なのか、細野氏なのか。それとも、前原氏なのか。
「総理に指名する人が党内にいないということ他党からの攻撃材料になっている。また、選挙後、自分たちが連立与党を組むときにキャスティングボートを握りたいのではないかという見方もある。今の状況では現実的ではないが、小池代表は山口那津男さんの名前を挙げたこともある。実際、公明党の選挙区には候補者を立てていないので、一定の配慮をしている可能性もある」(藤川氏)。
佐藤副大臣は、総選挙後の希望の党との連携については「これから戦いが始まる段階なので分からない。ただ、結果によっては、ある程度我慢しながら組むという選択肢もありうると思う。今、安倍総理の言葉を借りれば"国難"にある。いかに政治を安定させるかが重要だ」とした。
3つの勢力がどれだけ議席を獲得し、あるいは減らすのか。それによって、政権の枠組にも変化が起こりそうだ。野党連合の崩壊という混乱したこの政局を見せつけられた有権者たちは、
「希望の党って、結局あとで分かれてダメになるのでは。北朝鮮の問題とかあったので、早期にやった安倍の解散を支持する」
「期待してない。嘘ばっかりだから。当選するまでは一生懸命やるけど、その後はお金も何に使っているか分からない」
「政治家が好き勝手なことをやっているなって感じがする。小池さんにしても安倍さんにしても、みなさんあまり国民のことを見ていない」
「支持する党はない。自分の足下から崩れて、関係者みんな良くない。今、政治をやっている人たちはみんなやめた方がいい」
と、呆れ気味だ。10日の公示を前に、都政では小池都知事率いる都民ファーストの会から、音喜多駿都議ら2人が離党するとも報じられている。刻一刻と変化する情勢に、佐藤副大臣は「本当にこれで終わったのか。明日になったらまた状況が変わっているかもしれない」と話した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)