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 ついに選挙公約を発表した希望の党。アベノミクスに対抗、「マクロ経済にもっと人々の気持ちを盛り込んだ」(小池代表)として経済政策「ユリノミクス」を掲げ、「消費税増税の凍結」を柱の一つとしているほか、「既得権益やしがらみ、不透明な利権を排除して、国民ファーストの政治を実現する」と、森友・加計問題を抱える自民党を暗に牽制した。

 さらに、小池代表は「ある意味ではタブーに挑戦するぐらいの気持ちで、思い切った案を盛り込ませていただいた」と述べ、「2030年までの原発ゼロ」「待機児童ゼロ」「満員電車ゼロ」「花粉症ゼロ」「ブラック企業ゼロ」など"12のゼロ"を目指すとし、自民党との違いを強調。その一方、「私たちは憲法9条を含め、憲法改正論議を進めていきたいと思う」と、総選挙後の憲法改正論議では自民党との共同歩調も見据えた姿勢を示した。

 一方、1次公認候補62人を発表した立憲民主党も、公示へ向け徐々にその骨格が見えてきた。6日放送のAbemaTV『AbemaPrime』には、民進党からに立憲民主党に参画、幹事長に就任した参議院議員の福山哲郎元官房副長官、そして希望の党の創立メンバーである木内孝胤・前衆議院議員が出演。ともに民進党にルーツを持つ両議員が、経済、原発政策で議論を戦わせた。

■両党の経済政策はどこが違う?

 希望の党が「消費税増税凍結」をトップに持ってきていることについて、テレビ朝日政治部の足立直紀デスクは「安倍総理が増税を2度延期して、次回は上げて使い途を変更しますよと言った、その逆をついたという形。だが、やはり問題は財源だ。公約を見ると、公共事業を削減すると書いてあるが、民主党政権時代には公共事業の削減がなかなか思うようにいかなかった経験がある」と解説。また、企業の内部留保への課税を検討するとしていることについて「企業がバンバンおカネを使って経済が潤って、それが給料アップや設備投資につながるといいが、そうなるのかどうか。それがなかったら結局、企業の経営を圧迫するんじゃないかというところが心配される」と指摘する。

 これに対して立憲民主党の福山氏は「民主党政権は公共事業の削減や無駄の削減をしっかりやって、1年目に約6.8兆円、2年目には9兆円ほど成果を挙げた。その分で子ども手当てや高校の無償化を実現させた」と反論。「ただ、無駄を切れば瞬間的に財源は出るが、恒久的な財源にはなりにくいので、そこはやはり課題だと思う」として、内部留保の課税について「一旦課税されているものであるから、二重課税の可能性が出てくる。内部留保については、投資に回していただきたいと思う。企業の法人税は安くして、個人には消費税の増税というのは、税のバランスとして良くない」との認識を示した。

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 その上で福山氏は「平均年収がバブルの頃から下がり続けていることがデフレの正体。もちろん消費が上がるはずがない。そこで民主党は、子ども手当てを出したり、高校の無償化を実現させたりしていた。それによって学校の先生の負担が減ったり、家計の授業料を減らして、消費を増やすことにも成功していた。また、恒久的な財源という点で、将来的に消費税率は上げるべき。ただ、今は上げる時期ではないので延期する。消費税だけが財源ではない。人口ピラミッドの形も変わってきている中、戦後変わっていない税構造を変えなければいけない。かつては年収400~600万円くらいだった中間層が年収300万円ほどに下がってきている。その中で、どういう風に税負担、財源をどこで負担するか、考えなければならない」と指摘、「本当に僕たちの仲間だった人たちがこれらの政策を了解しているのか」と疑問も呈した。

 その一方、「消費税を我々の政権の時に上げさせていただくと決めて、上げさせていただいたが、残念ながら3%消費税を上げたことで、良かったと思っている国民の皆さまをほとんどいない。それが最大の反省なので、その延長線上で(消費税を)上げるというのは、国民の理解を得られないと思う。そういう点では希望の党と同じ」とした。

 希望の党の木内氏は「ユリノミクス」について「家計に届く、つまり景気実感のある経済政策。企業が儲けても、家計に届いていない。だから個人消費がずっとフラットになっている」と話す。

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 「アベノミクスの金融緩和と財政支出、積極財政は良かったと思っている。ただ、デフレ脱却が道半ばだった2014年の4月に消費税を増税してしまった。アクセルを踏み続け、財政支出をきちっとやりきれなかったという意味で、失敗した部分があると思う。本来はインフレ率2%とか、実質賃金が2%上がった時などの縛りを入れる景気判断条項を入れるべきだった。それを気合でできるかな、としてつけなかったのが安倍政権。間違っている。我々は、それをクリアしたらどうぞ上げましょうということ。上げるのに反対しているわけではない」(木内氏)

 その上で、「例えば外為特会というものが140兆円あり、毎年3兆円くらい運用益が出るので、そのうち2~3兆円、この10年間だけでも22兆円、一般会計に繰り入れして財務省のへそくりにしている。これだけ外為特会を持っている国は世界的にとても少ない。私が財務大臣であれば、このうち内部積立の30兆円を財源として回すのは、来月からでもできる」と、具体策を提示。「自民党は良いことを言っているが、実現できない。なぜかというと、まさにしがらみだらけの政治だから。例えば、1兆円の損を出した東芝は上場廃止にして、根本からリストラすべきだった。それができなかったのは、原発のしがらみ、自民党が毎年2850万円の献金をもらっているというしがらみがあるからだ。"小池さんとの2ショット3万円"も、企業団体からの献金を受けていないからだ。我々は供託金600万円も自腹で出している」と訴えた。

■希望の党「2030年に原発ゼロ」 実現は?

 希望の党は、既存の原発について再稼働を容認する一方、「2030年に原発ゼロ」を掲げている。これについて木内氏は「過去6年半の間、どれだけ原発が動いていたのかという話。国民生活が破綻するとか、色々なことを言うがそんなことはない。(原発のプルトニウムの)処理についても工程表を出さないといけないと思っている。プルトニウムの件を解決していない状態で止めるのも無責任という話があるが、続けるのはもっと無責任だと思っている」と話す。

 希望の党に対し、「1日も早く原発ゼロ」を掲げる立憲民主党はどのような立場をとるのだろうか。東日本大震災の際に官房長官だった枝野代表の下、官房副長官として最前線にいた福山氏は、「即時ゼロというものは現実味があまりない。立地する自治体に多くの迷惑をおかけして原発を稼働することによって生まれる雇用もあり、そういうことに対する手当、プルトニウムの対処や、再処理失敗に対するの後始末などへのメニューを揃えた上で、原発ゼロをしないといけない。単に再稼働を止める、ということだけではない」と話す。

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 さらに、「原発事故の後、私が再生可能エネルギーを普及するための固定額買取制度を作った。『再生可能エネルギーの電気を作れば買い取りをします。投資をすれば、利回りが回るような形で買い取りをします』と。そこで投資が生まれるので、太陽光、風力、そして地熱も含めた再生可能エネルギーの設備が増えてきた。日本では普及しないと言われて続けてきた再生可能エネルギーの設備の容量は、あれから6年しか経っていないのに稼働率も含め原発20基分増えている。『そんなこと言ったら原発いらなくなっちゃうじゃないか』という議論になるので経産省は表には出さないが、それぐらい増えている。つまり、日本の再生可能エネルギーの可能性はすごくある」と訴えた。

■総選挙後のシナリオは?

 ともに多くの議員が民進党にルーツを持つ、希望の党と立憲民主党。両党は分裂前の支持母体だった連合の支持を得るべく、神津会長を相次いで訪問。民進党の前原代表は希望の党合流組への支援について「今まで推薦をすると決めてくださったところはしっかり(支援を)やりますと、こういうことをおっしゃっていただいた」と明かし、立憲民主党の枝野代表も「会長からはこれまで民進党の時代に推薦を決めていた仲間については、立憲民主党のメンバーについても応援をいただけるという力強いお答えをいただきまして大変感謝をしている」と話した。

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 立憲民主党の福山幹事長は「僕らはできたばかりの政党なので、よろしくお願いしますというご挨拶と、"我々の政党から出る仲間はみんな元々出る予定だった仲間なので、変わらずご支援ください"とお願いをした。会長は"頑張ります"と」。と、枝野代表らと共に訪問した際の様子を明かした。さらに「連合はすみ分けは考えていない。希望の党でも元々民進党にいた方はOK、立憲民主党の元々民進党の方もOKというのが神津会長の考え方」と説明した。

 このような状況もあいまって、希望の党と立憲民主党のどちらが自民党に代わる受け皿なのか分かりにくいという有権者の声がある。そのことについて福山氏は、「希望の党は安倍政権と連立してもいいと言っている。連立してもいいということは、明確な反安倍ではない。我々は安倍政権の安保法制、森友・加計学園、共謀罪の問題も明確にNO」との立場を明示した。

 これに対し、希望の党の木内孝胤氏は「我々は、選挙後については色々な選択肢があるという言い方をしている。自民党と連立を組むことにYESなのかNOなのかという話ではない。我々は政権交代を目指している」と説明。自民党の石破茂氏を首班指名するという説も出ていることについては、「色々なシナリオはあり得ると思う。日本新党ができた時のイメージがあるので、頭の体操はみんなやっていると思う。しかし、前提が固まらないと、仮定の話を聞かれても分からない」と明言を避けた。小池代表の出馬について木内氏は「勝負師なので、何があるか分からない。否定はできない」と、これも明言を避けた。

 これに対し、福山氏は「小池さんが出ないとわかりにくい。過半数を取りたいと木内さんがおっしゃるのは分かる。でも、国会議員でないと総理にはなれないから、小池さんが出ないということは、首班指名で誰の名前を書くのか分からない。希望の党の議員が"じゃあ石破さんを総理に"では、選挙にならない。安倍さんか名無しの権兵衛か、じゃあ枝野さんとなる」と指摘した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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