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 2015年10月に行われたカナダでの総選挙の大きな争点の一つに「大麻の合法化」があった。当時、与党の保守党でカナダ首相のスティーブン・ハーパーは、大麻の危険性や子供が簡単に入手できてしまうリスクを訴え反対派に、対する自由党党首のジャスティン・トルドーは合法化による規制の導入と税収が見込めるため、賛成の立場であった。

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 現在カナダでは医師の承認が必要な医療大麻のみが合法であり、認可生産者から購入し、郵送で受け取る必要がある。この方法は複雑で時間もかかる。バンクーバーなどの大都市には大麻薬局があり、この大麻薬局では、医師の同意があれば簡単に大麻を購入が可能だ。なぜカナダ政府は大麻の合法化をしないのだろうか。「税収のチャンスを逃している」との見方もある(編集部注:2017年、カナダ政府は、嗜好品としての大麻使用を2018年までに合法化する法案を議会に上程している。議会が承認すれば、18歳以上のカナダ国民は2018年7月までには店頭で大麻を購入できるようになる)。

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 元バンクーバー警察本部長であるカシュ・ヒード氏によれば「年間680億カナダドル(約5兆3040億円)相当の大麻を街から一掃した。これはバンクーバーでの大麻の消費量と流通量とほとんど同じ」だという。カシュ・ヒード氏は「税収を考えると大麻を合法化し、大人の嗜好品として流通させる方が、マイナス点と比べてもはるかに有益」と話す。

市は何の取り決めもできない――誰がリーダーシップを取るべきか

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(写真右:バンクーバー市議会 ケリー・ジェン議員)

 大麻合法化を推進するバンクーバー市議会のケリー・ジェン議員は「大麻規制は水道工事などのインフラ整備と同じ、バンクーバーの課題。連邦政府は問題を投げ出し、より複雑にしている。だから代わりに市がリーダーシップをとらないと」という。

 バンクーバーでは大麻薬局が増えているが、営業の許可に関してはグレーゾーンな薬局も多い。ケリー・ジェン議員は「昔は6軒の大麻薬局があり容認されていた。ここ数年で急激に増え、80軒以上になった。ファストフード店より多い。富裕層から最貧層まで利用していて市全域で需要がある。でも市は何の取り決めもできない。営業許可を与えたり、業種を定めたりするのは違法とされています。営業許可を与えると連邦法違反になる。だが全ての薬局を強制的に閉鎖するわけにもいかない。嗜好品として利用する人もいるだろうが、店がなくなると薬として必要とする人が困利用者を全員チェックするには、費用がかかりすぎる」と話し、国は「それらの解決策として違法な行為だけを取り締まる仕組みを考えた」と主張した。

 2015年に行ったこの取材の直後、市が許可を出す計画が動き始めた。これらを受けてカナダの保健相は大麻薬局の違法性を市長に指摘。連邦警察の介入を懸念する声も出た。

大麻に関わる人々――「他の会社と同じように社会の役に立っている」

 アメリカでの服役から1年を経た大麻王子と呼ばれる大麻活動家のマーク・エメリーは現状を冷静に見ていた。マーク・エメリーは「大麻を売買したり、栽培する者は昔からいるが、投資のカネが明らかに増えた」という。「何十億ドル(何千億円)ものカネが合法的なルートを通じて大麻業界に入るなんて今までなかった」と、大麻は近年投資が活発に行われており、大金も動くので市場として急成長をしていると語った。

 カナダの大麻栽培者のベテランであるリモ(リモ・ニュートリエンツ社オーナー)は、カナダ人で唯一スパナビス賞を受賞した。リモは現在医療用の大麻を少量栽培しているが、今後はアメリカの大麻が合法化されているコロラド州などで、こだわり抜いた嗜好用大麻の大量生産を行おうと考えている。カナダ国内では実績のあるリモのような栽培者ですらも、認可栽培者になるのは困難であり、また莫大な資金も必要となるのが現状だ。

 しかし、リモは大麻栽培のノウハウを利用し、カナダ国内でも制約の少ない大麻用の栄養剤を製造。栄養剤を世界中に販売し、大麻栽培と同程度の利益を得ている。大麻の関連産業でアメリカの市場に参入もしている。

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 そのほかにも大麻栽培のノウハウを活かして商売につなげている人もいる。大麻のヴェポライザー(吸引具)である「サブリメーター」を開発したエンリコ・ブシャールだ。彼が現在開発しているのが、医療用の大麻吸引具。これは医療機器の製造者として承認をもらうように勧められ、医療部門でもかなりの評価を得た。

 連邦政府からエンリコに「医療用吸引具を活用したい」と打診があったものの、エンリコは大麻の種を売り、皮肉にも州警察に逮捕されてしまう。

 アメリカのコロラド州では許可が必要なく簡単に大麻を買うことができてしまう。コロラド州が大麻合法化の住民投票で賛成多数となったのは2012年だ。オバマ大統領の再選が決まった年である。実際に嗜好用大麻が合法化され、販売が始まったのは2014年1月から。アメリカでもっとも有名な大麻栽培者であるスタンリー兄弟に話を聞きに行った。

 彼らの栽培した商標登録済みの「シャーロット・ウェブ」のオイルにはてんかんの発作を抑える効果が発見され、購入希望者が殺到。ジョエル・スタンリーは「てんかんへの効果が全国に知られ、状況が一変した」という。予想外の効能だったが、雇用と経済効果も生まれ、結果として「他の会社と同じように社会の役に立っている」と兄弟は話す。

 世界で噴出する大麻合法化をめぐる議論。果たして、カナダは大麻社会とどのように向き合うのか。放送はAbemaTVの「Documentaryチャンネル」をチェック。

(AbemaTV/「Documentaryチャンネル」『カナダのグレーな大麻事情 商品作物としての可能性』より)

原題:CANADIAN CANNABIS - The Cash Crop(2015)

(C) 2015. VICE STUDIOS CANADA INC.

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【番組概要】
 本映像が制作された2015年5月、大統領選を控えたカナダでは大麻合法化をめぐる議論が噴出していた。医療大麻使用者のダミアン・アブラハムは大麻合法化の恩恵を調査するべく、元警察本部長、市議員、大麻市場に新規参入した企業など、バンクーバーの支持派とすでに大麻市場の広がる米コロラド州デンバーを取材。

 原題:CANADIAN CANNABIS - The Cash Crop(2015)

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