将棋の若手棋士と40代トップ棋士が7人ずつの団体戦で競う「若手VSトップ棋士 魂の七番勝負」の第3局が10月14日にAbemaTVで放送され、中学生棋士・藤井聡太四段(15)が行方尚史八段(43)に132手で勝利した。終盤力に定評がある2人の対局は、激しくぶつかり合う熱戦に。難しい局面を切り抜けた藤井四段が、若手チームに3連勝をもたらした。
幼少期から藤井四段に流れる詰将棋の成分が、熱戦で一気に集中した。「終盤、少しこちらが足りないかなと思う場面がありました。最後まで難しい将棋でした」と振り返るように、小さなミスが逆転負けを招く、細い道を渡り続けるような戦いだった。日本中が沸きに沸いた史上最多の29連勝を達成し、その後も高い勝率をキープし続ける15歳。プロデビューから1年が経過し、勝負どころの力強さが増していた。
対局場となった都内のスタジオも、藤井四段にとっては修練を積んだ思い出の場所だ。まだデビュー間もないころ、「炎の七番勝負」で若手ホープから順位戦A級棋士、7人を相手に戦い、周囲の予想をはるかに上回る6勝を挙げた。勝った相手には棋聖に挑戦した斎藤慎太郎七段、初タイトルを獲得したばかりの中村太地王座、「永世七冠」にあと一歩まで来ている羽生善治棋聖ら、バリバリの実力者ばかりだった。「貴重な経験をさせていただきました。それが公式戦(連勝)の原動力にもなったのかなという思いもあります」。誰も経験したことがない半年を過ごし、またスタジオにやって来た藤井四段は、ひと回りもふた回りも大きくなっていた。
これで若手チームは3連勝。無傷のまま、トップ棋士チーム相手に勝ち越しまであと1勝と迫った。「若手でも活躍されている方が多いので、今回の七番勝負でもトップ棋士に遜色ない力があると思います。自分も若手の中で、競争を勝ち抜けるように頑張っていきたいです」と、若手同士のせめぎ合いにも目を向けた。将棋界に大きな流れとしてやってきている世代交代。その流れをさらに大きくした天才棋士が、今後も先陣を切って突き進む。
敗れた行方尚史八段のコメント 指名を受けた時はうれしかった。2人とも詰将棋を愛するということで、詰将棋の血中濃度が高い。そのあたりで通じ合ったのかなと思います。藤井四段は今後、将棋界を背負う存在になるでしょうし、こういう機会で当たれて張り合いが出ました。
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