サッカー・J2では首位の湘南ベルマーレがJ1昇格に王手を掛けているが、Fリーグを戦う湘南ベルマーレフットサルクラブも、今季は実に熱い戦いを見せてくれている。
昨季は8勝20敗5分の勝点29、12チーム中10位と低迷したが、今季はここまで14勝7敗ですでに勝点42を獲得。2位のペスカドーラ町田まで勝点4差の5位につけており、1~5位のチームによって争われるプレーオフへの初進出が現実味を帯びてきているのだ。
そんなチームを最後尾から支えるのが、ブラジル人GKファビオ・フィウーザだ。
フィウーザは来日2年目の30歳。日本に来る前は母国ブラジルをはじめスペイン、チェコ、ルーマニアなどの1部リーグでも活躍してきた実力派ゴレイロだ。
彼のプレーの特徴は、何といってもその攻撃力だ。来日からこれまでに出場した41試合の中で、GKでありながら62本ものシュートを放ち計7ゴールを決めている。歴代のFリーグのゴレイロたちの中でも、試合数に対するフィウーザの得点率の高さは断トツだ。
今月7日に行われた対シュライカー大阪戦でも、終盤、1点のビハインドを追って5人全員で攻めるパワープレーに出た大阪を相手に、高精度なパントキックからダメ押しとなる2ゴールを叩き込んでみせた。
湘南1点リードの状況で生まれたGKによる連続ゴールはインパクト十分。スタンドを埋めた満員の湘南サポーターを狂喜乱舞させ、大阪の戦意を喪失させるのに十分すぎる2発だった。
フットサルのGKのゴールの大半がこの「パワープレー返し」と呼ばれるロングシュートから生まれるのだが、フィウーザのゴールパターンはそれだけに限らない。相手が自陣に引いたと見るや、ハーフウェイライン付近まで上がって強烈なミドルシュートを見舞うのだ。
フィールドプレイヤー顔負けの一撃で直接ゴールを陥れることもあるが、たとえ直接決まらなかったとしても、相手GKが弾いたこぼれ球に味方が詰めるなど、高い確率でチャンスに繋がっている。最近はその特徴が他チームに知れ渡ったこともあり、右足でのシュートコースを切りながら左足側へ追い込むディフェンスを見せるチームも増えたが、左足トゥキックでも右足と遜色ない威力のシュートを打てるのだから驚異的である。
また、肝心のシュートセーブの方も一流そのものだ。185cm、88kgの恵まれた体格と高い身体能力を持ち、鋭い反応で好守を連発する。
ここで是非注目してもらいたいのが、その派手なセービングだ。際どいコースに飛んできた決定的なシュートだけでなく、フィウーザは手を伸ばせば届きそうなコースへのシュートにも思い切り横っ飛びして、これでもかというほど強く、遠くへボールを弾き飛ばす。
少々大げさにも見えるのだが、このフィウーザの派手なセービングが、勢いに乗る今季の湘南の押せ押せな雰囲気といい感じにマッチしている。劣勢の中フィウーザが好セーブを連発し、また時には身体に近いシュートすらも横っ飛びで派手に弾き飛ばすことでスタンドの湘南サポーターが湧きに湧き、「フィウーザすげー!」「これはもう点取られないだろう!」という空気が生まれ、いつの間にか劣勢だった湘南が攻勢に転じる――。
そんな試合が、今季は何度も繰り返されている。フィウーザのセービングは失点を防ぐだけでなく、今や試合の流れそのものすらも一変させてしまう力を秘めているのだ。
初のプレーオフ進出とその先にあるリーグ制覇を目指す湘南ベルマーレ。ビッグウェーブを巻き起こすには、この守護神の存在が不可欠だ。
文・福田悠(futsalEDGE)