公示前の15議席から55議席に大きく議席を伸し、野党第一党となった立憲民主党。希望の党による"排除"後、枝野幸男氏がたった一人で立ち上げた立憲民主党の成功の秘訣はSNSにあったとの見方もある。
これまで200人以上の選挙活動に関わり、勝率7割を誇るという選挙プランナーの松田馨氏は枝野氏の演説も特徴的だったと指摘する。「一人ひとりに語りかけるように、非常に静かに丁寧にゆっくりした演説をしていることが特徴。“立憲民主党はあなたです”という時に、手を前に出していって一人ひとりに語りかけるような印象、そして"一緒にやっていきましょう"というメッセージが非常にわかりやすく、キャンペーンとも一致していたため、有権者に受け入れられた」。
10月21日に行われた枝野代表の街頭演説を見てみると、それほど高くはない台の上から「私たちも一緒に戦わせて下さい。みなさん一緒に戦いませんか?一緒に戦いましょう!一緒に戦いましょう!」と発言している。
「通常、国政選挙で党首クラスの演説だと警備の関係や、遠くから目立つということもあり、大きな選挙カーに立って演説するのが一般的。しかし枝野さんの場合、非常に低いステージがあって、ライトアップはしているものの非常に聴衆と距離が近い。また、密集しているところを非常にうまく写真に撮ってSNSで拡散する。"今、立憲民主党に勢いがある""ブームが来ている""枝野さんに非常に人気がある"とわかりやすく見せることができる。聴衆と一緒に映すことで、本当に多くの人が立憲民主党を支えている、枝野さんに人気があるというところを視覚的にわかりやすく伝えるメリットがある」(松田氏)
ハフポスト日本版の竹下隆一郎編集長は「ちゃんとしたカメラでなくとも撮りやすくて、しかも同じ目線になるので、普通の人たちがどんどんTwitterにアップできる」と話していた。
およそ7万人のフォロワーを持つインスタグラマーの川北啓加氏は、立憲民主党のアカウントが発信してきた街頭演説の写真について「俯瞰した、ちょっと引き目で撮られた写真は『SNS映え』するなと感じた」と話す。
密集した聴衆が取り囲む形での演説。実はこれはアメリカ大統領選挙などでもよく見られる手法で、演説者の背景にまで密集した人々が映り込むことで、距離の近さや話し手の人気を演出できるのだ。
竹下氏は「出口調査を見ると、立憲民主党は50代以上に強いので、ネットを意識した戦術がどの程度投票につながったのかについては分からない」としながらも、「選挙中は新聞やテレビなど大手メディアは抑制的になるので、このネットの盛り上がりというのは、古いメディアだけ見ていたら分からなかった」と話す。
10月24日20時現在の立憲民主党のTwitterフォロワー数は19万1098で、自民党の13万1906を短期間で引き離している。ネットでの広報戦略は、自民党をはじめ、既存政党も取り組んできた。しかし竹下氏は「自民党は昔から広告代理店を入れているので洗練されているが、作られた感が逆に嘘くさくなってきた。枝野さんのバックにも誰かがいるだろうが、手作り感がある」と指摘する。
「もともと枝野さんはネットで人気があった。東日本大震災のときも『枝野寝ろ』というツイートが流行った。その後もニコニコ動画のイベントに出たり、マストドンという新しいツールを使ったり、新しいことをやってくれる人だった。立憲民主党のロゴって、昔の怪獣映画みたいでちょっとダサい。でもそれが面白くて、みんなネタっぽくシェアして、どんどん広まった。演説の内容もどんどんアップされていったし、写真もどうぞ自由に使ってくださいと言っていたので、ネットメディアにとっても新しい政党が出てきたなと感じた」。
ほかにも立憲民主党の公式サイトでは、バナーをクリックすると自分のLINEアカウントから友達に投票の呼びかけができる仕組みを取り入れるなど、様々な工夫を凝らしていた。「立憲民主党の演説では『LINE登録してください』と呼びかけて、登録方法まで丁寧に説明していた」(竹下氏)。
衆院選が終わり、選挙運動から通常の政治活動へと向かうなか、これから立憲民主党はどのようなSNS戦術を見せるのだろうか。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)