「自分の中では、オリンピックシーズンというより、シニアデビューのイメージが大きいです」。シーズンオフ、本田真凜は今シーズンについてそう語っていた。

 シニアデビューシーズンのフリーに選んだのは、『トゥーランドット』。荒川静香が、2006年トリノオリンピックで優勝した時に使用した曲だ。本田の今季の目標は「オリンピックに出場すること」。力強くドラマチックなこの曲は、オリンピックシーズンにふさわしい、いわゆる王道の曲でもあり、「すごく気に入っているプログラムで、最初からどんどん乗っていける」と感触もいい。

 振付けは初めて、デイヴィッド・ウィルソンに依頼した。「(僕たちは)感覚で滑るところとか、似ているねって言われました」というウィルソンとの振付け作業は楽しく、「自分でもいろいろアイディアを出したり(曲の)編集もしたりしました」と本田の感性が随所に入ったプログラムができあがった。

 本田は、感性を大切にし、感覚的な面を強く持つスケーターだ。彼女を指導している濱田美栄コーチは「彼女は、気に入ったらぱっとできるし、気に入らなかったらできないし」と評しており、本田自身も「小さい時から、自分で曲のストーリーを考えたりしていましたし、試合でも練習でも毎日気分が違うので、それを表現できる曲を昔から選んできました」というように、豊かな感性を感じさせる。

 シーズンがすでに始まっていた9月半ば、「すごい曲。出会ってしまった」と、本田はショートプログラムを新しいプログラム『The Giving』に変えた。この時期にプログラムをまったく新しくするのはそんなに簡単なことではないが、感性を大切にする本田が、そこまでの思いを抱いたという曲で作ったプログラム。彼女の創造性がさらに発揮される予感がある。

 今季すでに2大会に出場している。シニアデビューとなった9月半ばのU.S.インターナショナルクラシックでは、ショートプログラム(まだ新しいプログラムを振付ける前だったため、昨季の『Smile』を使用)の練習直前に衣装をホテルに忘れたことに気づいて慌てたり、フリーでは、標高1300メートルの高地だったことから酸欠に苦しめられたりしたものの、優勝。

 2大会目は、10月上旬のジャパンオープン(フリーのみの大会)。きれいにまとまった演技ではあったが、得点は伸び切らなかった。「ジュニアの時ならこの演技でも満足したかもしれないですけど、シニアでは通用しないなと思いました。本当に足りないことばかりで、久しぶりに悔しい気持ちがある」と語り、翌日には、「この久しぶりに悔しい気持ちは、今の自分にとっては大切なもの。あと2カ月半、自分の中でそれをためておきたいと思います」と、悔しさを前に進む力に変えた。

 あの悔しさから3週間。本田真凜にとって初めてのシニアのグランプリ、スケートカナダが始まる。

 試合で初披露する、「出会ってしまった」ショートプログラム『The Giving』をどう見せるのか。3週間前に悔しさを味わったフリー『トゥーランドット』をどう演じるのか。そして、今後何年かの本田真凜という選手の活躍の最初の一歩となる、本格的なシニアデビューの演技。と同時に、熾烈な戦いが始まっている平昌オリンピックへと続く本格スタートとなる演技、しかと見届けたい。

文・長谷川仁美

写真・長田洋平/アフロスポーツ

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