女子プロレス界のレジェンドの1人、“飛翔天女”豊田真奈美が、ついにリングを去る。引退興行は11月3日、横浜の大さん橋ホールで開催。これは豊田のデビュー30周年記念興行でもある。
アイスリボンにたびたび参戦してきた豊田と、同団体の取締役選手代表でもある藤本。
団体対抗戦など、90年代に凄まじい盛り上がりを見せた女子プロレス界でトップを走ってきた豊田。アジャ・コングや井上京子といった、全日本女子プロレスのライバルたちとの闘いは、もはや伝説だ。
他の選手より体は細かったが、驚異的なタフさと運動神経、柔軟性は天下一品だ。 ジャパニーズ・オーシャン・サイクロン・スープレックス、ローリング・クレイドル、相手に突き刺すようなドロップキック、そして数々の空中殺法。長髪をなびかせて躍動する姿はインパクト絶大だった。
その後も活躍し続けた豊田だが、キャリアがキャリアだけに満身創痍。肩、首の痛みが限界に達し、30周年記念興行での引退を決意したという。激しいファイトで知られる豊田には、ごまかしながらの試合はしたくないという思いも強いようだ。
最後の試合は、なんと「50人がけ」に決まった。豊田と縁の深い選手約50人(男子も含む)が次々と登場し、短く時間を区切りながら対戦していくもの。豊田は95年に30人がけを行なっているが、今回はそれを超える人数に。かなりの長丁場になるのは間違いない。
思い出を振り返りながらの闘いになりそうだが、とはいえ50人との連戦は過酷そのもの。最後の最後で、限界に挑戦する姿が見られそうだ。
近年の豊田は自分のこと以上に、次世代を担う選手を見守り、育ててきた印象がある。アイスリボンの藤本つかさは、必殺技のジャパニーズ・オーシャン・サイクロン・スープレックスを受け継いだ。藤本は50人がけの最後の相手にも指名されており、しかもここだけは別枠の時間無制限での闘いだ。
“飛翔天女二世”とも呼ばれてきた藤本だが、この対戦は豊田からの完全な後継指名。伝承したサイクロンで勝つことが、藤本にとっての歴史に対する仕事だとも言える。豊田としては、自身のキャリアに幕を下ろすだけでなく、下の世代の選手に未来を託したいという思いがあるのだろう。
50人がけという破天荒なラストマッチは、懐かしさだけでなく女子プロレスの今、そして未来が感じられるものになりそうだ。