
立憲民主党の枝野代表は選挙中「大体、今の自民党が保守なんですか?一億総中流と言われて、世界一治安がいいと言われて、お隣近所、地域社会、お互いさまに支えあっていた日本社会を壊してきたのは誰ですか、日本社会の良き伝統を壊している保守なんかあるはずがありません。みんなが安心して暮らせていた時代の日本社会を取り戻す。私はリベラルであり保守であります!」と訴えた。

また、保守派の論客でありながら、立憲民主党の応援演説をした漫画家の小林よしのり氏は「自民党は保守ではない。あれは単なる対米追従勢力だ。アメリカについていって戦争をしろと。それだけだ。なんで自衛隊のまま集団的自衛権に参加させるんですか。枝野さんは安保法制の議論のときに、個別的自衛権を強化しろと言った。実はこれがね、保守の考え方なんですよ。枝野の方がもっと保守なんですよ」と力を込めた。

先月の衆議院選挙のANNの出口調査によると、20代の49%が比例区で自民党に投票したという結果が出ており、「現代の若者は保守化している」とする意見もある。一方、街で18歳から29歳の男女50人に「自民党は保守かリベラルか」と尋ねてみると、

「めちゃくちゃリベラルじゃないか。結構、改憲、改憲と言っているので」(20歳学生)
「保守。ずっと安倍さんだから」(18歳学生)
「リベラルな気もする。改憲するという話になっている。保守なら今までのことを守るという気がするが、改憲ならリベラルかなと思う」(20歳学生)
「立憲民主党で掲げていた方がそういう感じがしたので。そうすると自民党は保守なのかなって」(20歳学生)
「伝統を守っているというのもあるかもしれないんですけど、新しい方を活性化させている気がするので」(19歳学生)
と、保守が20人に対し、リベラルが30人という結果になった。
こうした状況になっている背景には、「保守」「リベラル」が日本では独特のイメージづけをされていることがありそうだ。

日本大学の岩井奉信教授は「保守の基本的な考え方は、伝統を守り、手続きを重視するというもの。自民党の結成当時、社会主義と資本主義が対立していた。社会主義には"革命"という考え方があるので、これに対抗するとなれば、原初的な意味合いで自民党が保守になるのは当然だと思う。これに対してリベラルは、冷戦終結後に革命と保守の対立が成立しなくなり、自民党の保守の対抗概念として打ち出された。したがって、左派だとか、あるいは大きな政府だとか、そういったものをリベラルというような感じで、時代と共に変わってきている。本来、リベラルは個人の自由を重んじ国家の役割を小さくする立場で資本主義を基礎づける概念。しかし、こうした経緯から日本では憲法改正に反対することなどがリベラルとされており、本来の意味とは少し異なった使われた方をしている」と説明する。

実際、日本における保守のイメージには、憲法9条改正推進、日米安保重視、防衛力強化、伝統や家族などの価値観を重視、小さな政府路線といったものがある。「結党の時に自主憲法を制定するというのを党是にしたということなので、自民党の保守という考え方と憲法改正というのはここで結びついた」(岩井氏)。

また、リベラルのイメージには、憲法9条改正反対、アジア重視、対話外交に軸足、個人の権利や平和主義の尊重、分配政策を重視といったものが挙げられる。この基準に照らせば、自民党、安倍政権も十分にリベラルだと言うことができるのではないだろうか。
ジャーナリストの有本香氏も「憲法9条改正以外、安倍さんの政策はほぼリベラルだ。歴代首相の中でも首脳間の行き来は多く、日米安保重視ではあるが、中国と韓国との関係を除けばアジア重視、対話外交でもある。個人の権利や平和主義の尊重というのもまあ当てはまる。欧州で言えば、金融緩和、財政出動を含むアベノミクスは基本的にはかなり左派的な政策。保守であれば小さな政府で、そういうものはどんどん切り詰め、民間で自由にやってくれという考え方。自民党はウィングを広げるという言い方をしていて、安倍政権も左派のお株を奪うような政策が非常に多い。例えば、女性に社会に出て働いてもらおうとか、経済の上では国境に関係なく投資を自由にしていこうだとか。あるいは外国人の労働者に永住権を与えて、一年で永住権を与えようなど。これは保守とは言えないような政策」と話す。

その上で有本氏は「あえて言えば、枝野さんは戦後体制を保守するというタイプ。安倍さんはざっくりした言い方だが、日本の伝統はしっかりと保守したい。だが、経済活動についてはかなりリベラルというタイプ。みんな保守とリベラルの両面を持っていて、混在しているし、保守とリベラルで分けることも次第に意味をなさなくなってきた。再定義する必要がある」とした。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)



