韓国ドラマ『私の名前はキム・サムスン』を筆者が初めて観たのは、ドラマ『冬のソナタ』などが注目された第1次韓国ドラマブームのとき。日本のドラマとは系統が違うセリフの数々や、リアルなシーンに引き込まれ、今でもときどき振り返っては何度も観ている大好きな作品の1つです。
韓国ドラマ『私の名前はキム・サムスン』
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『私の名前はキム・サムスン』は2005年に韓国で放送されたドラマで、当時韓国で最終回の視聴率が50%を超えたほどの大人気作。日本の韓国ドラマファンの間でも話題になりました。
いま40代前後の韓国ドラマファンにどんなドラマが好きだったか、印象に残っているかと聞けば『冬のソナタ』や『天国の階段』と並んで名前が挙がってくる作品の1つではないでしょうか。
作品紹介
パティシエ、キム・サムスン(キム・ソナ)は恋人にフラれ、仕事も失い、結婚相談所でも年齢や境遇で門前払いを受ける30歳。もう一度パティシエとして花を咲かせようと奮起するも、ホテルのベーカリーでも不採用になってしまいます。
職を探している中で、フレンチレストランのオーナーで傲慢な若社長ヒョン・ジノン (ヒョンビン)と出会います。最初、恋人に振られたときにトイレで最悪な出会いをしたこともあり、お互いの印象は最悪。激怒したサムスンは、ジノンの顔に自分が作ったケーキを投げつけます。なんと、そのケーキの味がきっかけでジノンにスカウトされ、サムスンはジノンのレストランで働くことになります。
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時には暴言も吐いてしまう、太めでどちらかというと上品ではない女の子が、自分の未来を自分で切り開いていき、年下の御曹司とぶつかり合いながらも恋に落ち、幸せをつかんでいくというラブコメディです。
役のために体重をコントロール! キム・ソナの女優魂
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ヒョンビン演じる御曹司のスマートなサプライズやセリフには胸キュン必至です。見どころなのは、主演キム・ソナの女優魂。ぽっちゃり型のサムスンを演じるため、キム・ソナは短期間で体重を8kgも増量させ、収録に挑みました。筆者はこの作品を見るたびにキム・ソナの演技に驚きます。
体重を増やして挑んだというプロ根性、過激なセリフ、そして可愛らしさ。日本の女優さんでもここまでできる人は少ないだろうな……と思うほど、人間味あふれる自然な演技にも驚きました。
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人生は“与えられるもの”じゃない! 面接シーンは見どころ
サムスンがジノンらとレストランで面接するとき、自分が作ったチョコレートを自作の箱に入れて持参し、その理由を聞かれてこう答えます。「自作のチョコは自作の箱に入れることにしています。チョコの箱は人生と同じなんです」と。過去に自分が作ったチョコレートの出来について聞かれると「出来のいいのも、悪いのもありました。仕方ないです。自分の箱だから自分で平らげなくちゃ。選択肢はいつどれを食べるかだけ」と答えます。
映画『フォレスト・ガンプ(Forrest Gump)』の主人公の母親の“人生はチョコの箱。何を取るかは分からない”というセリフを紹介するサムスン(翻訳はドラマ字幕から)。サムスンは、古本屋さんでふと手にとったフランス菓子の本がきっかけで、パティシエの道を選んだと言います。「ヒヨコの鑑別の本を選んでいたら、ヒヨコの鑑別師になっていたかもしれない」と人生の可能性について、ジノンらに語ります。
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ここでサムスンが言いたかったのは、人生は自分のチョコレートの箱の中から1つだけを選んで手に取るようなもので、“与えられるもの”ではなく、自分で何を選ぶかによって人生は大きく変わる、ということです。チョコレートは甘かったりほろ苦かったり、想像していなかった味だったり……。大人になったら何かを決めるとき、躊躇しながら選んでしまいます。筆者はこのドラマの中で「自分の人生に何が起こるかは誰にも分からない、恐れず怖がらず次の選択をして前に進め」というメッセージが込められているように感じています。
ジノンも、最初のサムスンとの出会いの場面ではオバサン扱いをしますが、面接のときには年齢や境遇、韓国では古く安易だと笑われるという「サムスン」という名前を聞いても笑いません。ジノンも履歴書にある経歴より、目の前にいるサムスンのパティシエとしての素質や人間性を見抜いています。
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心に響くセリフが満載、韓国ドラマ『私の名前はキム・サムスン』
大人になるとつい自分の年齢と周りの状況を冷静に見てしまいます。「失敗したくない」「笑われたくない」と無難な道を選ぶこともあります。しかし、いくつになっても何度失敗しても夢は持ち続けられるし、年齢も関係ないということを、このドラマはしっかり教えてくれます。
この作品を観た方が「チャレンジする気持ち」や「前向きな人生」をより楽しめたらいいなと思います。人生の中で今が一番若いもの。『私の名前はキム・サムスン』は今から観ても、とてもすてきなドラマなので、ぜひお見逃しなく。