■千葉市長「表現規制には該当しないと考えられる」
21日、コンビニエンスストアのミニストップが、来月１日からまず千葉市内で、そして来年からは全国約2200の全店舗で成人誌の取り扱いを中止することを発表した。ミニストップは女性客が全体の約２割を占めており、主に主婦層から「子どもに見せたくない」などの声が上がっていたという。会見にはミニストップの藤本明裕社長と並んで千葉市の熊谷俊人市長が出席した。
熊谷市長はかねてから成人誌にフィルムをかけるなど陳列方法を変えるようコンビニ各社に働きかけていた。千葉市がインターネット上で市民を対象に「成人向け雑誌の陳列方法改善の取り組み」についてアンケート調査を行ったところ、650名中賛成は486件（74.7%）、反対は31件（4.8%）だったという。しかし、熊谷市長のSNSには「表現の自由を規制するものではないかなど」といった反対意見も寄せられた。熊谷市長は「今回の件が憲法で定める表現規制に該当するか否かについては、販売側の陳列する商品や陳列方法の選択に過ぎず表現規制には該当しないと考えられる」とのコメントをフェイスブックに投稿。ミニストップによる取り組みも、千葉市の働きかけがきっかけとなった自主的な決定と説明している。
■千葉市議「お母さんから『まだこんなもの見せたくない』というものが多かった」
成人向け雑誌の販売について改善を求め、カバーを付け雑誌名とその雰囲気がわかる状態で販売している大阪府堺市の例を挙げ、同様の取り組みを千葉市でもできないか議会で提案したのが、桜井秀夫市議だ。背景にあったのは、青少年というよりはも、幼い子どもへの影響の懸念だったという。千葉市議会ではこの提案が議決され、カバーが試験的に導入されることも決まったが、コンビニチェーンからの反対に遭い計画は頓挫。そんな中でのミニストップからの申し出だったという。
「去年６月、私が議会でした質問からスタートした。こういう本の話となると"18歳未満"というイメージを持ちがちだが、私たちに届けられた声には５～７歳の子どもを持つお母さんから『まだこんなもの見せたくない』というものが多かった。お子さんをコンビニのトイレに連れて行こうとすると、子どもがトイレの入口付近にある成人誌コーナーをじーっと眺めて、トイレが終わってからもそこをずっと眺めているのがすごく嫌なのだという声をいただいた」。
では、今回の取り組みにおける「成人誌の基準」とはどういったものなのだろうか。一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会の自主基準を抜粋したミニストップの発表資料を見てみると、「各都道府県の指定図書類及び出版倫理協議会の表示図書類」、そして「それ以外の雑誌については各都道府県青少年保護育成条例で定められた未成年者（18歳未満者）への販売・閲覧等の禁止に該当する雑誌及びそれらに類似する雑誌類」とある。桜井氏は「線引きは誰かひとりが決めるものではないので、ご意見があれば各都道府県でどんどん議論していけばいい」とコメントしたが、直接的な性表現では無くとも、少年漫画でも性的な描写のあるものや、表紙にセミヌードを使った女性誌や、"セックス特集"などを扱う女性誌についてはどう考えればよいのだろうか。日本雑誌協会も声明で「図書類への過剰な規制につながるという懸念」「成人に対する図書選択の自由を阻害するという私たちの見解は変わらない」「どんな内容の雑誌が対象になるか不明確」という３点を強調している。
■プチ鹿島「清らかなものしか置かない世の中は本当に息苦しい」
成人誌規制の歴史を振り返ると、1960年代には東京オリンピックが開催された1964年に都青少年健全育成条例が施行。70年代には成人誌専用の自販機が登場。90年代にはヘアヌードが解禁。2010年代に入ると、2020年の東京オリンピック招致に先立って、過激な性表現の漫画やアニメを規制する東京都青少年健全育成条例改正案が可決された。この際も表現規制を巡って都議会で大激論が交わされ、当時の石原慎太郎都知事は「自分に子どもがいて、それを子どもに見せられるのかって話になれば、みんな誰でもNOと言う。だから陳列の場所を変える」とコメントしていた。
日経ビジネスの柳瀬博一氏は「国際線ではヘアヌードを掲載した週刊誌が置けなくなったこともある」としながらも、「北欧はまさに性表現が自由で、子どもが入れるところに普通に成人誌が置いてある。表紙も過激だが、その棚だけサングラスのようにグレーにしてあるので、タイトルは見えるが写真は見えないように工夫されている。米国では大人が観られるR指定の映画は自由で局部を見せることができる。一方で、誰もが観られるテレビ番組なんかでは乳首も駄目。欧州のほとんどの国は、一般のテレビでも深夜枠になると普通にヌードが出てくる。国によって違うので、日本はどうするか自分たちで決めるしかない」と指摘、東京オリンピックを理由にした一律の規制には疑問を呈した。
また、未だ自動販売機で簡単に成人雑誌やアダルトDVDが購入できる自治体もあり、インターネットで手軽にアダルトコンテンツが手に入る時代でもある。「エロ本のハガキ投稿コーナーのネタをチョイスする仕事もやっているが、40、50代以上の地方にお住まいの方からのものが多い。都会と地方の格差もあると思う」と話す時事芸人のプチ鹿島は「清らかなものしか置かない世の中は本当に息苦しい」とコメントした。
■「男の子が生まれたら見てもらいたい」という女性も
コンビニから成人誌が消えることについて、街の人たちはどう思っているのだろうか。渋谷区で街頭インタビューを行うと、
「時代の流れだからしょうがないのかなと思うが、寂しい」（会社員、20代男性）
「賛成。別になくても良いかなと思う。むしろ（置いてある方が）なんか嫌だなと思う」（飲食業、20代女性）
「置いてあってもいいのではないか。見る見ないも人の勝手だと思う。全然自由でいいと思う。私は男の子が生まれたら全然見てもらいたい。だって逆に見ない男の子の方が怖くないですか？」（会社員、20代女性）
「賛成は賛成だ。そういうものは本当に隠れた所で密かに楽しむものなのでは。逆に昔が懐かしい。隠れて売ってた頃が」（自営業、60代男性）
「悲しい。食欲・性欲・睡眠欲は3大欲求だから。これは抑えられないものだと思うので、ちょっと男ってしょうがないよねっていう観点で大人の人に見てもらいたい」（会社員、20代男性）
と、本音は様々だ。
ミニストップを傘下に置くイオンも来年１月からスーパーや書店など約7000のグループ全店舗で成人誌の取り扱い中止の方針を発表している。雑誌の市場規模そのものが縮小している時代。他の書店や小売店、自治体の議論の行方が注目される。（AbemaTV／『AbemaPrime』より）
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