11月24日後楽園ホールで開催された「REBELS.53」で、梅野源治がインディートーン・ポー.ピナブハットを4ラウンド左縦ヒジでKOし劇的勝利を収めた。 9月の「REBELS.52」で、スアレック・ルークカムイと対戦し壮絶な打ち合を制し勝利、一時は度重なる怪我や連敗からその後の会見で「引退も考えた」と明かした梅野だが、僅か2ヶ月で実現した、ルンピニーランカー4位のインディートーン戦での勝利で、最高峰のタイトルが見えて来た。
現在保持しているWBCムエタイ、そして今年陥落したラジャダムナンと2大タイトルに続き日本人未到のラジャ、ルンピニーの2冠獲得への夢へと一歩近づく形となった。
梅野完全復活を印象づける内容だった。序盤からリーチを活かした梅野のロー、ミドル、さらに狙いすましたようなコンビネーションが決まる。続く2Rもローや前蹴りを軸に落ち着いた試合運び、インディートーンも反撃を試みるがその後に梅野は淡々と反撃を一撃で相手にペースを奪わせない。2R後半の首相撲でも圧倒し、全く付け入るすきを与えない。3Rに入り、いよいよインディートーンもランカーらしい力を発揮し、強烈なパンチや組合いからのヒザに持ち込もうとするが、ここでも梅野の反撃はゆるまない、ロープ際で押されながらも確実にヒザを叩きこみ、唯一危ない場面だったロープ際での飛び膝もクリンチから振り切り、難を逃れた。
そして運命の4R。右フックとみせかけてのストレート、ミドル、組合いをほどき、前蹴り、カウンターでの攻防は、「バチッ」と鈍い音が鳴り響くが観客側からみて一瞬何が起きたのか判らない光景だったが、電光石火の衝撃のヒジ一閃、静かにインディートーンが後ろに倒れ込みそのまま立ち上がることはなかった。
この試合に臨むにあたり、ミュージシャン・GACKTが梅野のトレーニングパートナーの1人として加わっていたことはネット上でも話題になっていた。GACKTが梅野陣営に加わったことについては、ネット上でも賛否両論。むしろ硬めのファンからはSNSを通じて批判的な言葉が投げかけられていたのも事実だが、試合から数日経過しGACKTが自身のブログで梅野への祝福の言葉とともにその心中を綴っている。
「この日の試合の1ヶ月前から、数回に渡って一緒にトレーニングすることとなったが、まあ、予想通り多くの外野が好き勝手につぶやき始めた。 『梅野はこんな大切な時期に、ミュージシャンと遊んでいて本当に大丈夫か?』『何やってんだ、こんな時期に!』『ただのパフォーマンスだろう!』 などといろんな声が聞こえてきたわけだ。実際に、ボクが教えられることは、彼が今はまだ持っていない技術とここから現役を続けるために必要な知恵と知識だ。」 「ボクは自分自身が強いとは思ってはいない。ただ、昔から色んな武道をやっていることと、しっかり追求するこの性格から他の人たちよりも【どうやれば効率よくカラダを動かせるのか?】ということを少し深く理解しているだけだ。」
梅野のような自らの世界を極めたキックボクサーですら高いモチベーションとコンディションを維持しながら勝ち続けることが如何に難しいかということだ。昨年の連敗でキャリアの危機を囁かれ、一度は引退の二文字が頭を過ぎった彼が僅か数ヶ月で完全復活する、その過程においてテコンドーや空手への造詣も深いGACKTの知識から得たことは少なく無いはずだ。
近年の格闘界を見渡してみても、合気道を習い始めさらに技術に磨きがかかった大和哲也の例や、レジェンドファイターの山本KIDが、同門の若手テコンドー選手から指導を受けいる話、また海外のMMAの世界でもボクシングトレイナーの門を叩く総合格闘家、大学のレスリング部と他流試合を行うファイター、それぞれが新たな活路を見出すための試みを続けている。
GACKTも前述のブログで「こうやって情報交換をして互いに意識や技術を高め合うことに歳は関係ない。どこまで高みを目指しているかということとそれに対してどうやって向き合って生きて行くかがなによりも重要なこと。」と綴っているが、梅野のインディートーン戦での見事な戦いぶりが動かざる証拠といえるのではないだろうか。 あの衝撃の勝利の後も未だに芸能系メディアなどを通じてGACKTと梅野への否定的な論調は多々見られるが、これも注目度が高い故の有名税のようなものだろうか。いずれにしても2018年の梅野源治に俄然期待が高まっているのは確かだ。