歌舞伎界の花形役者として、日本のみならず海外からも熱い視線を集める市川海老蔵。名門・市川宗家の伝統を受け継ぎ華々しく活躍する一方、飾らない素顔を見せるブログが大好評だ。
■「やってみたら楽しかった」今では心の支えに
「ブログはスタッフにすすめられて始めたので、最初は積極的に書こうとは思っていませんでした。でも、やってみたら楽しかった。そして徐々に更新回数が増えて、今では1日平均20数回。1日24時間ですから1時間に1回更新するつもりで書いています」
ブログには歌舞伎公演に臨む決意やその舞台裏、家族とのあたたかい触れ合いがつづられている。2013年4月から毎日更新を欠かさず、翌年にAmebaが最も価値あるブロガーに贈る「MVB(Most Valuable Blogger)」に認定。今年8月にはブログの読者登録数が200万人を突破し、誰もが認める芸能界きっての人気ブロガーに。
「ブログは過去の心情や子供の成長を振り返ることができるのが良いですね。内容はそのとき感じたことをそのまま書いています。何を書こうかと構えていたら、ブログを続けることがつまらなくなっていたと思うんです。自分が楽しいと思う気持ちが、読者の方にも自然と伝わっているんじゃないかな。ブログによって歌舞伎を見に来てくれるお客様の層も明らかに変わったし、結果として仕事にも良い影響がありましたね」
■亡き妻への尽きせぬ思い
今年6月に亡くなった妻でフリーアナウンサーの小林麻央さんも、存命中はブログを執筆。7月には海老蔵に続く2人目の「MVB」に選ばれ、夫婦そろってブログで栄誉を受けた。がんとの闘病生活をつづった彼女のブログは「未来の読者にも共鳴を与え、心を動かす」として、米スタンフォード大学の東アジア図書館ウェブアーカイブコレクションへの保存が決定。現在は英訳されたブログも世界に向けて発信されている。
「ブログにかかわって良かったと思うのは、自分のことよりも麻央のことですね。夫婦でも話さない彼女の気持ちをブログを通して知ることができたこともある。今も1日1つ英訳されたブログを読んでいますが、そのたびに彼女の純粋でまっすぐな姿勢を見習わなくてはいけないと思い返します」
ブログはファンとのつながりを実感できる貴重な場所にもなっていると明かす。
「麻央が他界して目の前が真っ暗になったとき、自分の気持ちをブログに吐露することができたのは救いでした。書くことで混乱した心が少しずつ整理できたように思います。読者の方の愛あるコメントも励みになっています。そして私の場合は幸か不幸か、ブログに書いたことがすぐネットニュースになる(笑)。誤解や批判も多いですが、ある意味自分を客観的に見つめることができるので前向きに受け止めています。自分の考えとは違っていても、そこにも1つの答えがあると思えるんです」
プロフィール
いちかわ・えびぞう 歌舞伎俳優。2015年に7万人以上を動員する大盛況となった『源氏物語』の続編となる、市川海老蔵特別公演『源氏物語第二章~朧月夜より須磨・明石まで~』が2018年3月からスタート。オペラや能とのコラボによる華やかな歌舞伎の世界を披露する。