北朝鮮による火星15の発射を受け、アメリカのヘイリー国連大使は29日、国連本部で「今日全ての国が北朝鮮とのあらゆるつながりを断つことを求める」と述べた。トランプ大統領も北朝鮮との後ろ盾とも言える中国の習近平国家主席に電話をし、北朝鮮への原油輸出を制限するように要請するなど、次々と強硬手段を講じている。
しかし中国外務省の耿爽報道官は29日、「北朝鮮のミサイル発射について厳重な懸念と反対の意を表明する」と述べたものの、1日には「中国とアメリカは共に朝鮮半島の平和と安定を維持することでは同じ立場だ。北朝鮮の核問題に関して中国はロシアと立場が一致し、密接な連絡と協議を保っている」と述べ、北朝鮮との国交断絶についても否定的な立場を示している。
北朝鮮問題で日米韓が連携で一致する中、制裁に否定的なロシアとともに独自の動きを見せるキープレイヤー・中国の狙いは一体どこにあるのか。
東京福祉大学国際交流センター長の遠藤誉氏は「中国は北朝鮮が核保有国になることには反対している。しかし対処は何としても米中でやりたい。そこで日本が邪魔だという気持ちを強く持っている。中国のCCTVという放送局では毎日のように安倍総理の発言を報道するなど、『日本は結局、憲法を改正して軍事国家になろうとしているではないか。軍国主義の道をまた歩もうとしているではないか』と主張している。『そんな日本と軍事上の同盟を組めるはずがないだろう』というのが中国の言い分」との見方を示す。
また、中国は韓国に対しても厳しい姿勢を見せており、「アメリカのミサイル防衛体制に加わらない」「日米韓の安保協力が『三カ国軍事同盟』に発展することはない」「THAADの追加配備は検討しない(現有THAADは中国の利益を損なわないように制限を設ける)」の3か条「三不一限(さんふいちげん)」を要求している。
このことについて遠藤氏は「アメリカと日本は強力な日米同盟で結ばれているので、そこに韓国を加えた日米韓の同盟に持っていってはならないという要求。韓国に配備されているTHAADは中国にとって安全保障上の重大な脅威になるので、撤廃しろというのが中国の言い分だ。しかし、すぐに撤廃させることはできないし、アメリカとも仲良くしていたいので強くは言えない。そこで韓国に『お前、分かっているな』と。中国の安全保障上の利益を損ねるようなことを絶対にやってはならないと釘を差している」と説明した。
トランプ大統領訪中後の先月17日、習主席が中国共産党の中央委員会メンバーを特使として北朝鮮に送ったとされるが、金正恩委員長との面会は叶わなかったとも報じられている。
遠藤氏は「中国は北朝鮮に対して3枚のカードを持っている。言うことを聞かないと"中朝軍事同盟を破棄する"ぞと。さらに"断油"(原油輸出の完全停止)、"中朝国境線の完全封鎖"。これらの条件を飲みたくないというのが金正恩の考え方。だから会わなかった。しかし中国はまだ諦めていない。どうしてもという時はいよいよパイプラインに手をつけると思う。しかし北京にミサイルが飛んでくることにもなるので、独自制裁はしたくない。国連安保理で決めたことならするだろう」との見方を示した。
中国外務省は1日の会見で、「各国が誠意を示し、北朝鮮情勢を落ち着かせ核問題を対話および商談協議への道に努力してほしい」と述べている。アメリカの軍事行使を「容認しない」(遠藤氏)という立場を撮る中国の次の一手は…?(AbemaTV/『AbemaPrime』より)