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 対話の糸口を探るべく各国が努力する中、北朝鮮が75日ぶりにミサイルを発射した。関係改善の兆しから一転、アメリカ国内では北朝鮮のICBM完成前に先制攻撃すべきとの強硬論が浮上、多くの米国人が帰国するクリスマスの開戦説がささやかれ始めている。マクマスター大統領補佐官も11月26日「時間がなくなろうとしている」と述べ、グラム上院議員は「ミサイル阻止のためなら戦争もありうる」とまで発言。ロシアのラブロフ外相は11月30日、「もしアメリカが北朝鮮を破壊する口実がほしいなら、はっきりそう言うべきだ。そうすれば我々も対応を考える」と述べている。

 クリスマス開戦説の根拠ともなっているのが、対話路線のティラーソン国務長官の更迭報道だ。1日、北朝鮮との対話路線を主張してきたティラーソン国務長官が数週間以内に更迭されると米メディアで一斉に報じられたのだ。しかも後任には「金正恩氏を排除すべき」との考えを持つというポンペオCIA長官の名前も取り沙汰されているという。

 2日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』ではこの問題について議論。元外交官の松川るい参議院議員(自民党)は「もし本当なら、トランプさんが過激なことを言うとティラーソンさんが対話に引き戻すとか条件を出すといったことをやってきたその路線が修正され、方針がより強硬になる可能性が高い」との見方を示す。

 元海上自衛隊海将で金沢工業大学虎ノ門大学院教授の伊藤俊幸氏は「まるでティラーソンだけが宥和派だというイメージになっているがそれは違う。マティス国防長官とケリー大統領首席補佐官、マクマスター大統領補佐官。この3人とティラーソンの4人は毎日電話でやり取りしていて、トランプが変なTweetをすると連絡を取り合って対応の役割分担をしている。ティラーソンが文句を言われているのは、国務省の役人からのリークだ。国務省のポストが埋まっていないから政策がうまくいかないと日本では言われているが、実はそうではない。大使も含む国務省の高官の数は国防総省の3倍で、人件費もそれだけ取られている。トランプ政権はそれをつぶそうとして、わざとポストに就けていない。中には大使もいない国もあるので、それに不満を持つ職業外交官たちが色々なリークしているという話もある」とコメントした。

 さらに国際政治学者の川上高司氏は「私の邪推だが、ティラーソンは政権に入る前からロシアとコネクションがあったので、ロシアゲート問題で名前が挙がるかもしれない。だから自ら政権に迷惑をかけたらマズイと思って、阿吽の呼吸で身を引こうとしている可能性がある」と推測、その上で「ロシアゲート問題の影響がトランプにひしひしときている。フリン前大統領補佐官も訴追され、さらに不利になる可能性もある。歴代大統領が海外を攻撃することで外に目を向けさせた、その歴史は否定できない。トランプも自分の身が危ないとなったら外に目を向けさせるかもしれない。戦争は北朝鮮のミサイルができた・できないではなく、そうした国内情勢から起こる可能性がある」と指摘した。

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 自民党の青山繁晴参議院議員は朝鮮半島有事の際に前線で指揮を執ることになる米太平洋軍司令部を訪問、11月30日の国会で「ひょっとしたら12月にある種、決定的な事態も想定しないといけない。日本の備えを本当は加速度をつけて間に合わせていく必要がある」と発言、小野寺五典防衛大臣は「司令官のハリー・ハリスさんも先日、防衛省の私のところに来た。私どもは緊張感を持った対応をしていくということで一致したということで現在の状況についてはお含みおき頂ければと思う」と答弁している。

 日本のある大手企業役員は「トランプ大統領が在韓米国人をクリスマス休暇で帰国させ、休暇明けにも軍事攻撃に踏み切る可能性がある」との見方を示し、「朝鮮半島有事の損失を最小限に抑えるため、韓国に投資しているプロジェクトの保全と見直しを始めた」と、有事を想定した対応を始めたことを明かした。

 川上氏は「私は五分五分といつも言っているが、1%でも開戦の可能性があれば、命がかかっているので気をつけないといけない。安全保障の基本は"ないことを考える"ということ。そうしないと国民の命を守れない。韓国にいる6万人の日本人をどうやって引き上げさせるか。内閣府のホームページによると、アメリカ人が退避を始めたら日本人もそうするとあるが、その手順が必要。また、朝鮮戦争では200万人の難民が出た。当時とは状況が違うが、韓国から難民が出た場合、日本はどうするか。そういうことも想定しないといけない」との考えを示した。

 伊藤氏は「有事の際には国連軍を中心とした、人々を逃がすための『NEO』という作戦が始まる。皆さん心配されているが、周辺事態法を作って以来、自衛隊はその時に何をすべきかの訓練をしてきた。ただ、航空自衛隊機は韓国には入れないので、民間機を使う」と述べ、在韓邦人引き上げの難しさも指摘する。その上で「確かに今、北朝鮮に色々なプレッシャーかけているが、これはあくまでも軍事外交だ。戦争が起きるのは外交が破れた時。これは多分日本人だけだが、軍が動きを見せただけで戦争という発想になる。これがまさに平和ボケ。戦後70年の世界では、軍事は外交の手段の一つとして使われるだけで、それが破れたら戦争。今はあくまでも軍事外交の状態だとみるべきだと思う」と述べた。

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 今後、膠着状態が続いた場合、日本は中長期的にどう対処すべきなのだろうか。

 松川議員は「アメリカにとって朝鮮半島の負担感が増してしまった場合にどうなるかを考えるべき。北朝鮮には在韓米軍を排除したいという究極の目標があると思う。それは中国にとっても悪い話ではないし、朝鮮半島情勢はアメリカのホームランド・セキュリティには直接は影響しないので、北朝鮮問題が長引き、軍事オプションでも中国や韓国の協力が得られないとなると、どんどん"負債"になってしまう。日本の防衛ラインは事実上38度線にあるが、アメリカが撤退すれば、それを対馬まで下げなければならない。そこで日本としては在韓米軍をどう維持していくのかを長期的な戦略目標に置いて外交努力すべきだ」と話す。

 「日本は抑止力を高めて、同盟国として頼られることが大事だと思う。ラッキーだと思うのは、安倍総理とトランプ大統領に信頼関係があること。今回のアジア歴訪を見ても、本当に信頼関係があると思う。北朝鮮をどうするのかとか、アジア太平洋、中国をどうするかなどをトランプ大統領は安倍総理から勉強している。今回の歴訪で友達としての関係が感じられたのは日本だけ。韓国では国会で演説したが、辛うじて紳士的なつながりで対面を保ったという感じ。米中首脳会談では友人としての信頼関係はこれからというところだった。ただ、アメリカがロシアと仲良くなることが日本の利益になるので、そこが残念だ」。

 川上氏も「しっかりと日米同盟に基づいて、できないところはアメリカとの話し合いのものと、範囲内で独自の抑止体制をやる。そういう議論を国会でもっと話し合っていただきたい」と述べた。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)


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