日本プロレス界最大のビッグイベント、新日本プロレスの1.4東京ドーム大会『レッスルキングダム 12』がいよいよ3週間後に迫ってきた。プロレスファンにとって2018年の“闘い詣”となる“イッテンヨン”は、メインイベントのオカダ・カズチカ VS 内藤哲也のIWGPヘビー級選手権試合をはじめ、注目カードが目白押しとなった。
“イッテンヨン”を待ちきれないファンのために、1996年に開催された『'96 WRESTLING WORLD in 闘強導夢』の激闘をピックアップして紹介しよう。
■猪木がベイダーを相手に「猪木プロレス」の集大成を見せる
64,000人の大観衆が詰めかけた、この年のイッテンヨンの第7試合で行われたアントニオ猪木のファイナル・カウントダウン第5戦は「日刊スポーツ新聞社創立50周年記念特別試合」と銘打たれ、猪木にとって最後の外国人ライバルとなった“皇帝戦士”ビッグバン・ベイダーが対戦相手となった。
当時のベイダーは、新日本プロレスを経て、UWFインターナショナルで活躍しており、1994年8月には高田延彦を破ってプロレスリング世界ヘビー級ベルトを奪取していた。
およそ7年半ぶりとなる両者のシングルマッチは、ゴング前にベイダーが猪木に放った張り手の奇襲攻撃で幕を開けた。その後も強烈なパンチや場外戦で圧倒された猪木は、スリーパーで突破口を見出そうとするがベイダーには通じない。
ベイダーの投げっ放しジャーマンに首が折れ曲がり、足元がおぼつかなくなった猪木だが、ベイダーの突進をかわしたところでコーナーポスト最上段からニードロップを投下。そして、アリキック連発からの延髄斬りで、場外にベイダーを吹っ飛ばすとパイプイスでベイダーの頭をぶっ叩く。
イス攻撃で流血したベイダーの額に猪木はナックルパート一閃。延髄斬りでベイダーをダウンさせると、アンドレ・ザ・ジャイアントをギブアップさせたアームブリーカーへ。しかし、これを脱出したベイダーは猪木をスリーパーで捕らえる。
そして、チョークスラムやビッグバン・クラッシュ、ムーンサルトプレスで圧殺される猪木だが、3カウントを許さない。2発目のベイダー・アタックをかわし、カウンターのボディスラムでベイダーを投げ、腕をからめ取った猪木は腕ひしぎ逆十字固めでギブアップを奪った。
相手のすべてを受け止めたうえで、最後に逆転勝利という「猪木プロレス」の集大成が発揮されたこの試合は、プロレスキャリア終盤における猪木のベストバウトに挙げる人も多い名勝負だった。
■武藤 VS 高田の再戦は、高田が腕ひしぎ逆十字固めで雪辱
この日のメインイベントは、王者・武藤敬司に高田延彦が挑戦したIWGPヘビー級選手権試合。前年10月9日の東京ドーム大会から始まった、新日本プロレスとUWFインターナショナルの全面対抗戦のメインイベントで、武藤の足4の字固めで敗れた高田にとって雪辱を期した再戦だった。
対抗戦ではあるが、ガッチリと握手を交わしてから試合が始まった。試合開始直後は高田がキックで武藤を牽制し緊張感が漂う。その後のグラウンドでの攻防では、武藤が上になる場面もあったが、アームバーなどの関節技で高田は武藤の腕を殺しにかかる。
高田の腕攻めをヘッドバッドの連発で逃れた武藤は、得意のフラッシングエルボーを高田に投下。続けて膝蹴りを高田の腹部に叩き込むと、フライニングニールキックを繰り出して高田を追い込む。そして、バックドロップからムーンサルトを放った武藤だが、フォールにはいかずに腕を極めにかかる。
しかし、高田もキックの速射砲からバックドロップをお返し。ヒールホールドで武藤を悶絶させる。何とかロープに逃れた武藤は、高田のキックをキャッチしてドラゴンスクリューを見舞う。そして前回の再現よろしく、足4の字へ。
勝利を確信して右手をあげる武藤だが、高田は粘ってロープエスケープ。しかし、武藤は執拗にドラゴンスクリューから足4の字の必勝パターンを狙うが、高田がヒールホールドで武藤の足を取り返す。
その後も武藤は高田の足を取りにかかるが、高田は払い腰から腕ひしぎ逆十字固めへ。一度目はロープに逃れた武藤だが、高田の顔面ハイキックでダウンし、二度目の腕ひしぎ逆十字固めで無念のギブアップ負け。IWGPヘビー級のベルトが初めて他団体に流出した。試合後、悔しそうな表情でリングを去る武藤の姿が印象的だった。