ノーベル賞の登竜門と言われる「フランツ・カフカ賞」を2014年に受賞した中国人作家・閻連科(えん・れんか)さん。アジア作家の受賞は村上春樹さんに次ぐ2人目だ。

この記事の写真をみる(4枚)

 閻さんは政治への鋭い切り込みや過激な性描写で、たびたび中国国内でも発売禁止・発禁処分を受けている。『けやきヒル’sNEWS』(AbemaTV)では、中国における“政治と性のタブー”について話を聞くことができた。

 閻さんが今回日本で出版する『硬きこと水のごとし』(谷川毅訳/河出書房新社)は、毛沢東の号令の下で行われた「文化大革命」(1966~1976年)を時代背景としている。10年にわたり革命という名の政治権力闘争の嵐が中国全土で吹き荒れ、小説はその革命への権力欲と互いへの性欲に身を投じる男女を描いている。

拡大する

 毛沢東の詩と革命劇の言葉を使い、女性の体や性の快感を表現した同作は出版後「赤色のタブーも黄色のタブーも破った」と密告されたという。赤色は「共産主義」、黄色は中国でいう「卑猥表現」のこと。しかし、閻さんは“性”がこの作品に必要だという。

 「文化大革命の10年は、中国でもっとも禁欲が強いられた時代だった。だからこそ、主人公の“性”はあの時代では大きな反抗と美。それも花一輪、草一本の美ではなく、巨大で複雑な美を表している」

 なぜ性は革命時代のタブーなのか。閻さんは「中国の禁欲は革命が純粋でなければならなかったからだ。マルクス主義、レーニン主義、毛沢東思想の中に“性”が含まれない」と説明する。

拡大する

 その思想の反対側にあるのが、性の自由を謳える“資本主義”と“ブルジョワ”だ。「男女関係はブルジョワ(資産階級)の中で最も重要なものだ。だから、反ブルジョワであれば禁欲しなければならない」。

 文化大革命が終わり、資本主義式の改革開放が始まることで中国社会も“性の解放”を迎えるが、「政治の管理が非常に厳しい時に、性は必ず政治のシステムに入れられる」というように政治の分野では依然容赦がない。

 習近平主席が進める汚職の摘発で目立つのが「愛人」「権力と性の取引」「道徳の崩壊」の文字。男女問題は汚職の罪状と同時に発表されるように、「性は単純で独立したものではない。性は社会の重要な一部。とくに権力の重要な一部になっている」のだという。

 そんな性を、閻さんが発禁を恐れずに描くのには理由がある。「性は人間生活の中で最も重要な部分だ。いかに性から深い美しさ、そして欲望以外の意味を描き出せるのかは、作家の力量・立場・文学観の見せどころ」。

 さらに、閻さんにノーベル賞について聞いてみると、2012年の受賞作家である友人の莫言(ばく・げん)さんについて語った。

拡大する

 「(莫言さんの)1つのジョークでも新聞やメディアに取り上げられれば真剣な意味を持つ。莫言さんはとても愉快で心のこもった人だが、いま彼が気楽に発言できなくなった。口があっても弁明できない。楽しくて軽やかな生活は、重たいノーベル賞の王冠よりずっと重要だ。これは命そのものの問題」

(AbemaTV/『けやきヒル’sNEWS』より)

▼『けやきヒル’sNEWS』は毎週月~金曜日 12:00~13:00「AbemaNews」チャンネルにて放送!

けやきヒル’sNEWS キャスター:柴田阿弥 | AbemaTV(アベマTV)
けやきヒル’sNEWS キャスター:柴田阿弥 | AbemaTV(アベマTV)
ランチタイムに最新ニュースをお届けします!ネットでは何が注目されたのか?午後の天気は?現場からの独自中継も!
AbemaNewsチャンネル | AbemaTV(アベマTV)
AbemaNewsチャンネル | AbemaTV(アベマTV)
AbemaTVのAbemaNewsチャンネルで現在放送中の番組が視聴できます。
この記事の写真をみる(4枚)