
歴代のアメリカ政権で初めてエルサレムをイスラエルの首都に認定したトランプ大統領。これに対してパレスチナ自治区のガザ地区ではデモ隊とイスラエル部隊が衝突し死者が出るなどの混乱が続いている。
しかし、宗教や歴史的経緯が絡み合った複雑な問題だけに、地理的にも遠い日本人にとって、パレスチナ問題に対する関心が高まらないのも事実だ。
「NHKにいたときに、『ニュースウォッチ9』で国際部のデスクたちが必死になって中東の紛争地域をトップ扱いやろうとする。そうしたら編集長が飛んできて、"誰がこんなの決めたのは!今は大相撲に決まっているだろう!"と、当時不祥事があった相撲界のニュースに差し替えられてしまった」
そう憤るのは、ジャーナリストの堀潤氏。13日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、堀氏が今年4月にガザ地区を取材した映像を紹介した。
イスラム原理主義組織「ハマス」が実効支配を続けるガザ地区。東西10キロ、南北40キロほどの長方形の形をしたガザ地区。東京23区の3分の2程度の広さに、およそ190万人が暮らしている。ハマスは西側諸国からはテロ組織に指定され、対立するイスラエルから、地域は幾度も攻撃されてきた。

案内してくれたJVC日本国際ボランティアセンターの並木麻衣さんは「この辺には国連の学校があるので、(子供は)国連の学校に逃げるんですけど、国連の学校ですら、攻撃を受けてそれで死人が出てたんですよ。それ以外に逃げられるところがなかったと言っています」と話す。

イスラエルはハマスからのテロ警戒を理由にガザ地区との境に壁を建設、非常に厳しい検問が設けられた。このため、ガザ地区の一般市民は出ることが出来ず、「天井のない監獄」とも呼ばれる。度重なる攻撃で発電所などのインフラが破壊され深刻な電気不足、水不足、物資不足などの人道危機を抱えている。
「仕事もないし、食料もないし、お金もないし、すべてがない、ゼロだと。彼らは支援を受け続けて暮らしているんです」と並木さん。JVCなどの支援団体が訪ね歩き、子どもたちの栄養状態などを確認して回っているが、状況は深刻だ。
「ユダヤ人に関しては、昔からずーっと一緒に生きてきたから何とかできるんだ、と。パレスチナ人で、ムスリムで生きたいだけ。国際社会にはちゃんと介入して、解決の方法を考えてほしい。70年間ずっとやってきて、何千人も傷つけてきて、何人も死んで、だから解決策がなんなのか、考えてほしい」(並木さん)。
「対立してきたハマスとファタハの間でも、協調の機運が出てきて、少しずつ前進というときに、それを一発で壊すようなことをしてほしくなかった」。今回のトランプ大統領の発言に対し、そう訴える。
「取材していたときにハマスに拘束され、SDカードを取り上げられて尋問を受けた。でもパスポートを見せて、人道支援の様子を取材しにきたと説明したら、SDカードを返してくれて、"この状況を伝えてください"と言われた。そして、日の丸が掲げられた給水タンクを指差した。パレスチナには日本からもODAが入っていたし、草の根の援助が続けられてきた。それなのに、メディアも社会も、パレスチナ問題は関係ありませんという雰囲気なのはどうか」(堀氏)。

同志社大学の内藤正典教授は「トランプ大統領はかなり一方的で、現実を見ようとしない。歴代大統領が執行しなかったのはそこで踏みとどまってきた」と指摘。堀氏は「アメリカでは、イスラエル国防軍が富裕層に寄付を呼びかけていたし、実際に支援も膨らんでいる。パレスチナに対して圧倒的な力の差を生み出せば、憎しみの連鎖が深まるだけだ。どうにかして止められないか」と訴えていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


