2011年「仮面ライダーフォーゼ」の主人公・如月弦太朗役でテレビドラマ初主演を飾り、数々のドラマや映画、舞台で主演を務める俳優・福士蒼汰。第38回エランドール賞新人賞(2014年)を受賞し、第38回日本アカデミー賞(2015年)では新人俳優賞を受賞するなど(「好きっていいなよ。」「イン・ザ・ヒーロー」「神さまの言うとおり」出演)次代を担う若手俳優の一人である。
その福士が3月21日公開の映画「曇天に笑う」で、主人公・曇天火(くもう てんか)役を務める。「曇天に笑う」は、唐々煙氏による少年漫画が原作。2014年よりアニメ化や舞台化が行われ、2018年ついに実写映画が公開となる。今回はそんな人気作の実写映画「曇天に笑う」で主演を務める福士蒼汰に直撃インタビュー。
姉二人の下で育った過去「兄になれて夢が叶った」
――映画「曇天に笑う」で台本を読んでどう感じましたか。
福士蒼汰(以下、福士):「曇天に笑う」は、台本よりも先に原作の漫画を読みました。自分が演じる曇天火は“曇天三兄弟”の長男という役どころで、最初は『自分には難しいんじゃないか?』と思ったんです。
――なぜこの役が難しそうだと感じたのか、理由は?
福士:自分は姉が2人いて、末っ子なんです。まず、兄のいる環境で育ったことがないので、兄目線でどのように演じようかなと。
――末っ子の立場として「弟や妹が欲しい」と思ったことはありますか?
福士:あります! 下のきょうだいがすごく欲しかったんです。特に妹がずっと欲しくて。今回の映画「曇天に笑う」では妹ではなく弟でしたが、空丸役の中山優馬くん、宙太郎役の若山耀人くんという2人の兄になれて。夢が叶ったなと思いました。兄弟の関係を演じることはとても新鮮でした。
――お姉さんにとって、自分はどんな弟だと思いますか?
福士:どちらかというと甘えん坊な弟、でしょうか(笑)。姉は5つ上と4つ上なのですが、「お腹空いたなぁ」っていうと何でも作ってくれて。感謝しかないです。優しい姉にいつも甘えてしまうので、助かっています。
――曇天火といえば“曇天三兄弟”の長男ですよね。末っ子で育った福士さんですが、演じていて天火と似ていると思った点や共通点などはありましたか?
福士:天火と自分との共通点は「笑っている」ところですね。自分はけっこうつまらないことでも笑ってしまう性格で。「え、そこで笑うの?!」って突っ込まれることもあるのですが(笑)。天火も、ひょうひょうとしていて、笑顔の印象が強いかなと。
――実際に曇天火を演じてみて、いかがでしたか。撮影が終わって、今だから言える「ここは難しかった」みたいな部分はありますか。
福士:天火は三兄弟の長男ですが、家族の中では“お父さん”として生きているんです。監督にまず天火を演じるにあたってそこを意識するように言われました。自分は兄になったことも、父親になったこともないので、やっぱりその天火が持つ“兄であり、父である”という部分をイメージするのは難しかったです。
――難しい役どころの中、監督からのアドバイスだったり、現場の役者間におけるやりとりだったり、印象に残っている思い出はありますか?
福士:天火を演じる上でとても助かったのは、自分の前で、三男の宙太郎役の耀人が常に“弟”でいてくれたことです。
それから現場で一緒だった金城白子(きんじょう しらす)役の桐山漣くんも、話すととても優しくて。クールなんだけど優しい。天火に対して、曇家の母親のような優しさでした。思い返せばみんなぴったりの役で、それぞれがいいなぁと思える現場でした。
――三男の宙太郎役を演じる若山耀人さんとはちょうど10歳離れていますよね。若山耀人さんは現場でどんな存在でしたか?
福士:本当にある意味、耀人がムードメーカーだった現場というか(笑)。中心になってみんなを笑顔にしてくれました。
――次男・空丸役は中山優馬さんが務めていますね。
福士:優馬とは同い年なんです。でも、今回は自分が兄役で、優馬が弟役で。同い年なのに、耀人と同じように弟らしく現場にいてくれて。優馬のいいところは真面目なのに、茶目っ気もあってノリがいいところ。イイ男なんです。
宙太郎役・若山耀人さんの誕生日祝う「ドローン買ってきました!」
――撮影は地方ロケなども多かったようですね。
福士:撮影期間は約一カ月くらいでした。滋賀が舞台の作品なので、実際にロケも滋賀をはじめ、いろいろなところでやらせていただいて。耀人が誕生日だった日は現場で誕生日会をしたんです。お兄ちゃんみんなで「おめでとう!」って祝いました。おもちゃ屋さんまでみんなで行って、耀人の好きそうなおもちゃを選んで買って。耀人が「ドローン欲しい」と言っていたので、ドローンや色々なものをプレゼントしました(笑)。
――ドローン(笑)。なんてすてきな現場……! その他、現場で苦労した点はありますか?
福士:下駄でアクションシーンを演じたのですが、普段履き慣れてなかったこともあり、一番苦労しました。特に印象に残っているシーンは、獄門処での戦いです。長いシーンの撮影かつ、現場がとても寒くて。みんなで頑張りました。
他に印象に残っているシーンでいうと、天火が滝に打たれるシーンもありました。撮影している場所は山なので、ここもかなり寒かった記憶があります。そして寒い以上に、滝が痛いという(笑)。直接肌に滝が当たるわけではなかったのですが、小さい滝の粒でも充分痛くて。初めての体験でした。
迫力ある獄門処のシーンと、天火が滝に打たれるシーンはぜひ観ていただきたいです。
――完成した映画を観て、いかがでしたか。
福士:『曇天に笑う』は運命に対して思いを叶える映画です。誰かがピンチになったとき、天火が登場してくれたり。体絶命のとき、犲(やまいぬ)が救ってくれたり。犲は、天火が昔所属していた組織です。想像以上に、観ていて胸が熱くなる映画になったな、と。
――AbemaTVでは映画「曇天に笑う」 の番外編として天火が犲に所属していた過去エピソードも放送されます。今回の映画『曇天に笑う』をふまえて、今後役者として「こういう役を演じてみたい」と感じたものはありましたか。
福士:時代劇です。映画『曇天に笑う』は明治初期という、和と洋が重なっている時代が舞台。演じていて、魅力を感じる時代だと思いました。もし縁があったら、戦国や江戸の時代劇もやってみたいです。
――映画でも、和服だったり、洋風の衣装だったり、いろいろな姿の福士さんが観られるので、ファンにとってはうれしいですね。最後にこの映画『曇天に笑う』を観たいと思っているファンにメッセージをお願いします。
福士:アクションシーン満載の胸アツな作品なので、男性はすごく好きになってもらえる映画です。女性は熱い男たちがたくさん登場するので、ぜひお気に入りのキャラクターを見つけてもらえたら楽しいと思います。是非映画館でご覧ください。
(C)AbemaTV
写真:オカダマコト
取材・文:鈴木シフォン