
「テクノロジーを使ったり装着したりするのではなく、自分自身がテクノロジーになりたかった。だから、これを頭部に移植したかった」
色覚障害というハンディキャップをもつイギリス人ピアニスト、ニール・ハービソン。彼の頭から飛び出すアンテナのようなセンサーは、上下左右、360度で"色を感知できる器官"だ。生まれつき色を識別できないというハンディキャップを抱えてきたニール氏だが、この"器官"によって、人間以上のスペクトルを感じることができるようになった。
アンテナの先はセンサーになっており、色を識別すると骨に振動が伝わり、内耳が脳に音を伝え、色を感知できる仕組みだという。もともとイギリスの音大生だったニール氏は、色の波長と音の波長の関係性に目をつけ、友人の科学者と試行錯誤を続けた。その結果、紫は607.542Hz→レの音階、青は573.891Hz→ド#の音階に対応させることで、色を"音"として24時間感じ続けている。
「1オクターブには12個の音階があるが、これは360音ある。人間の目が捉えられるスペクトル(可視光)は限定的だが、実際ははるかに多くの色が存在する」とニール氏。通常、目に見えない紫外線や赤外線も音として認識できるほか、人の顔も音として感知でき、双子でも少し音が違っていたり、左右の眼の音が違っていたりする場合もあるのだという。
音が常に頭の中に流れている生活。何か支障はないのだろうか。「最初は混乱し、何カ月も混沌とした状態が続いた。しかし脳は次第に新しい刺激に慣れ、自分の好きな色ができた。スーパーには多くの色があり、多くの色を聞けるので店内を歩き回るのが好きだ。ナイトクラブのようなものだ」。
眼だけで操作ができる電動車椅子を制作したオリィ研究所所長の吉藤健太朗氏は、ニール氏について「身体は機能が低下するが彼のセンサーは劣化せず、進化する」「人類が誰も感じたことのない世界を見続けていることに価値がある」と話す。
「人間が暗夜でも見えるようになれば、照明のためのエネルギーを消費せず、真っ暗になっても大丈夫だ。人間が熱を制御できれば、冬にヒーター、夏にエアコンを使う必要がもなくなる。つまり、人体改造すればするほど地球を変える必要もなくなる。2020年代にはもっと多くの人に人体改造を行ってもらいたいと思う」。
ニール氏の先進的な試みの先には、人間の概念そのものを変化させる可能性もありそうだ。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


