この記事の写真をみる(3枚)

 日本政府は、北朝鮮の脅威に備え様々な新兵器の導入を決定した。そのうちの1つが「イージス・アショア」。1基で約1000億円する、地上からミサイルを迎撃するシステムだ。

 発表された来年度予算案の防衛費は過去最大の5兆1911億円。その中で注目されるのが、敵基地を攻撃できるミサイルも購入リストに入っていること。現在、日本が保有しているミサイルはいずれも最大射程距離が200km以下だが、新たに導入を決めたものには900kmを超えるものも含まれている。

 戦後、日本の防衛の攻撃力を担う「矛」を在日米軍、守りに徹する「盾」を自衛隊が担当し、役割を分担してきた。その構図に何か変化が起きているのか、『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)では日米の“防衛ビジネス”に迫った。

■「日本は元々買う予定だったものを買っているだけ」

 「我々をさらに強くするのは、価値観を共有する同盟国。そして共通の脅威に対する責任の公平な分担だ」と主張するトランプ大統領に対し、「専守防衛は当然の大前提としながら、従来の延長線ではなく、国民を守るために真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めていきたい」とする安倍総理。

 北朝鮮対策としてのアメリカからの兵器大量購入は、ビジネスマンであるトランプ大統領の思惑に乗せられているだけなのか。それとも、日本を守るための最善策なのか。

拡大する

 国際ジャーナリストのモーリー・ロバートソン氏は「アメリカの言い値、少し高い値段で兵器を買っている」としながらも、「外交的な“善意”を買い取っているという考え方もできる」と指摘する。

 「これまでアメリカの大統領は日本に防衛負担を露骨に要求してこなかったが、トランプ大統領は日本に相応の負担をするように要求している。これは、トランプ大統領の支持層に『アメリカは他国の防衛にお金を出し過ぎ』と感じている人が多いから。日本もトランプ大統領の要望で以前より高い金額を払っているのではなく、もともと買う予定だったものを買っているだけ。ただ、トランプ大統領が『俺が言ったから日本が買ったんだ』というパフォーマンスをしている」

 また、防衛費5.2兆円という過去最大の金額については「日本の国内総生産(GDP)に対して、防衛予算は1%をギリギリ超えていない。それに対してアメリカは3.2%超え。戦後日本は防衛費を抑えてきて、北朝鮮情勢によって1%を超えようとしている。GDPでみれば馬鹿でかい予算ではない」と見解を述べた。

 今回、日本が決めた導入予定の最新兵器。その意義については「北朝鮮はもちろん、中国も南シナ海に軍事的に膨張・進出している。これらに対して先々対応するためには、アメリカがもつ高性能な防衛システムやレーダーに捉えられにくいステルス型の戦闘機など、最新鋭の装備を導入する必要がある」と、北朝鮮情勢以外にも有効だと話した。

■アメリカにとって日本は「大阪本社」

 なぜこのタイミングで防衛費が最大になったのか。静岡県立大学特任教授で軍事アナリストの小川和久氏は次のように話す。

 「安倍政権になって初めて防衛問題についての意識が高くなった。(防衛予算)約5兆2000億円は、世界最高レベルの安全が実現できるところまでいっている。日本はアメリカの力を使うことで、中国や北朝鮮が日本に手出しできないような抑止力を維持している。その状況の中で道具を新しくしていくという話」

拡大する

 また、「日本はもっと強気な交渉に出てよい立場」だという。「日本には米軍基地だけで84カ所あり、米軍の中で2番目、3番目の燃料貯蔵施設がある。会社に例えると、(同じく同盟国の)ドイツ・イギリス・韓国は支店か営業所レベルなのに対し、日本はアメリカが東京本社なら大阪本社ほどの位置付けになる。日本列島なしには、アメリカは世界のリーダーではいられなくなる。日米として中国と向き合い、日米として北朝鮮と向き合っている。日本はそういう選択をしていることをもっと自覚して、うまく(アメリカを)使っていくべき」と小川氏は指摘した。

 モーリー氏は「(大阪)本社ほどの決定権はない」と補足しつつ、日本が場所を提供し融通を利かせている重要な立場からアメリカを“使う”意義を主張。さらに、日本が敵基地攻撃能力を有することへの懸念について、「将来、軍事大国になるための準備をしている気配は今のところまったくない。北朝鮮にしろ中国にしろ、何かやろうと思った時に日本からすぐ反撃が飛んでくるとなるとやめようとなる。抑止があってこその防衛」と話した。

(AbemaTV/『けやき坂アベニュー』より)

『けやき坂アベニュー』は毎週日曜日 12:00~13:30「AbemaNews」チャンネルにて放送!

【無料】けやき坂アベニュー - Abemaビデオ | AbemaTV(アベマTV)
【無料】けやき坂アベニュー - Abemaビデオ | AbemaTV(アベマTV)
見逃したけやき坂アベニューを好きな時に何度でもお楽しみいただけます。今ならプレミアムプラン1ヶ月無料体験を実施しています。
AbemaNewsチャンネル | AbemaTV(アベマTV)
AbemaNewsチャンネル | AbemaTV(アベマTV)
AbemaTVのAbemaNewsチャンネルで現在放送中の番組が視聴できます。
この記事の写真をみる(3枚)