1月4日開催される新日本プロレス「WRESTLE KINGDOM 12 in 東京ドーム」(WK12)のメインイベントでオカダ・カズチカ対内藤哲也のIWGPヘビー級タイトルマッチが行われる。
「王者と2017年G1覇者の対戦」という慣習通りのマッチメイクではあるが、オカダvs内藤という黄金カードは、シングル戦では2016年6月19日のIWGP戦以来封印されてきた。1年半近くIWGPヘビー挑戦から遠ざかってた、内藤にとってこのカードが念願であるのは当然ではあるが、それ以上に心によぎっているのは4年前の自身に対するリベンジだろう。
リング内外で何度となく公言され、近年の内藤哲也というレスラーの原動力となったのが、4年前の東京ドーム大会での「メイン剥奪事件」である。前年度、2013年に念願のG1初制覇を果たした内藤。既定路線で行くとそのまま翌年2014年の「WK8」でのメインは約束されていたはずだが、大会直前のファン投票で、中邑真輔と棚橋弘至によるIWGPインターコンチネンタル戦がメインに昇格。IWGPヘビー級タイトルの名誉を守るための「オトナの忖度」で謎のダブルメインイベントという扱いになったものの、事ある毎に内藤は「あれはセミファイナル」とメインからの降格への恨み節を炸裂させて来た。
4年前の内藤といえば「俺の夢は新日本プロレスの主役になること。簡単な道じゃない、だからこそ諦めずに夢を追い続けたい。夢はIWGPヘビーチャンピオンになること、1.4のメインになること。」と実直に語る正統派というイメージのレスラーだったが、このメイン剥奪を期に大失速。その後観客から大ブーイングを浴びせられるようになり、手にかかりかけた主役の座からずるずると転げ落ちることになった。
翌年、メキシコ遠征をきっかけに現地で自由奔放な戦いを繰り広げていたユニット、ロス・インゴベルナブレスに加入。帰国後リング内で不穏な動きを数ヶ月間続けた結論として新ユニット、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン(L・I・J)を結成。EVIL、BUSHIなど次々とメンバーならぬパレハを増員し「制御不能」を旗印に手段を選ばない戦い方で勢力を拡大し、現在の不動の人気を獲得することになる。
結果論ではあるが、L・I・Jでの内藤の活動は、現状への不満やカウンターという形で過去のプロレスで数多く体現されてきたヒールターンとは、やや赴きが違う点が特徴だ。あくまでも「新日本プロレスの主役、IWGPヘビー級王者、1.4東京ドーム」という目標はブレずに持ち続け、それでいて口から出る会社批判はいたって正論。新日本プロレスの発展を所属レスラーの誰よりも願い、さらには観客に満足して貰えるエンターテイメントとしてのプロレスの追求と、「所属団体の破壊」や「世界を変える」といったかつてのヒールユニットが壮大なブチ上げではなく、同じ目標をアプローチを変えながら実現して来たリアリストなのだ。振り返ると、正攻法で突き進み失った東京ドーム・メインという自身の夢を実現するために、プロレスラー内藤哲也を再構築するまで4年間の道のりは、一人のレスラーが一歩一歩地獄から這い上がって来た努力の賜物であることに気付かされる。
話をオカダvs内藤に戻そう。数年前までは当たり前に組まれて来たカードだが、ここまで勿体ぶった結果、タメが利いてとてつもなく期待値の高くなり、両選手にかかるプレッシャーも日に日に増幅している。巷では「実力のオカダ、人気の内藤」という言葉も囁かれるようになって来たが、昨年1年、タイトル戦全てでベストバウトを連発し、新日本はもとより世界のプロレスファンから信頼を勝ち取った文句無しの絶対王者である。
内藤にとっては「実力の…」という最後のピースを埋めいよいよ名実共に「新日本プロレスの中心」に立てるのか?紆余曲折を経て今なおプロレスを愛し、新日を愛し続けた男の晴れの舞台での再挑戦が始まる。
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