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 2020年の憲法改正を目指す自民党は、通常国会に改正案を提出すべく協議を進めている。去年、安倍総理が打ち出した自衛隊の明記について、メリット、デメリットはどこにあるのか。1日に放送された『橋下徹のニッポン改造論』では、そんな日本が抱える難題を賛成派・反対派の国会議員がわかりやすく説明し、どちらの主張がより分かりやすかったかを考えた。

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■自民・柴山氏「自衛隊の士気を上げ、国民の理解も深まる」

 改正賛成派として出演した自民党の秋元司・衆議院議員は自衛隊を「家庭」に例えた紙芝居で説明。「ママは子どもの世話や家事を一生懸命頑張っている。しかも、帰ってきた家族に言われるのは『ママ、あれもやって、これもやって』。ママはなかなかモチベーションが上がらない。そこでママが家族の仕事の分担表を作った。これで仕事量が分かり、感謝されるようになった。縁の下の力持ちだったんですね」。

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 これを自民党憲法改正推進本部の事務局次長でもある柴山昌彦・衆議院議員は法律に当てはめ、「その"縁の下の力持ち"である自衛隊が正当に評価されていないというのが私達の問題意識。中国やロシアから日本に向かって戦闘機が飛んでくると、自衛隊が緊急出動(スクランブル)するのだが、昭和30年代はほとんどなかった出動が、平成になって、年間1000回以上。それだけではない。東日本大震災の時も、昼夜もなく一生懸命活動していた」と指摘。

 その上で、「終戦後、吉田茂総理は『一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争もまた交戦権も放棄したものであります』(1946年6月26日)と紹介。だが1972年の解釈変更では『自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとは到底解されない』となったにも関わらず、憲法の文言はそのまま。朝日新聞デジタルに掲載された安保法案憲法学者アンケート(2015年6月実施)では、『現在の自衛隊の存在は憲法違反にあたりますか?』との問いに、『あたる』あるいは『あたる可能性がある』と回答したのは122人中72人にのぼった。これはもう明らかに異常。自衛隊の河野克俊統合幕僚長も記者会見で『一自衛官として申し上げるなら、自衛隊の根拠規定が明記されるのではあれば非常にありがたいと思う』と述べている。自衛隊を明記することで自衛隊の士気を上げる、国民の理解も深まる」と訴えた。

■民進・小西氏「"米衛隊"を憲法に書き込むのは危険」

 賛成派の主張に対し、反対派として登場した民進党の小西洋之・参議院議員は「完全論破したい」と自信たっぷり。2015年に成立した安全保障関連法では、密接な関係にある同盟国が攻撃された場合、日本が直接攻撃を受けていなくても自衛隊が武力行使できるよう、集団的自衛権の行使を一部容認した。憲法9条の解釈を変更した上で成立した経緯をめぐっては、「戦争に繋がる」と国会前で反対するデモが起きた。

 小西議員は「自衛隊が災害救助とか、いざという時には戦ってくれることに感謝も敬意も表している」としながらも、「安保法制によって、今の自衛隊は、日本を守るだけの自衛隊ではなく、アメリカも守れる組織"米衛隊"になった。この状態のまま自衛隊を9条に書き込むと、9条が壊れてしまう」と、集団的自衛権の行使が一部容認された自衛隊を正当化するための憲法改正は危険だと主張する。

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 そして紙芝居を使いながら「あるところに、心優しい日野少年という男の子がいた。お母さんの憲子さんが『自分の身は自分で守りなさい』とスタンガンをくれた。ただ『このスタンガンは自分を守るためだけに使いなさい』と言われていたのに、ちょっと気の強い米田くんが『いいもの持ってるな、手伝え』と言ってきた。日野少年は泣く泣く隣町のケンカ、つまり海外派兵することになった。結局、日野少年はボコボコにされてしまった」と、日本の行く末を説明した。

 同じく反対派・希望の党の柚木道義・衆議院議員は小西氏の説明に同意しつつ「自衛隊を明記するとスッキリする面は出てくる。他方、巻き込まれるリスクがデメリットとして出て来る。地球の裏側まで出かけて行って戦うようになると、ロンドンやマドリッドで駅が爆破されてたくさんの人が亡くなったようなことが日本でも起こるのではないか」と警鐘を鳴らした。

■橋下氏「"組織"を認めることと、組織が"何をどこまでできるか"は別の議論」

 ここまでの説明に対し、番組MCを務める橋下徹前大阪市長は「野党議員の人たちに分かってもらいたいのは、"組織"を認めることと、その組織が"何をどこまでできるか"は別の議論」と指摘、安保法制では自衛隊の運用に歯止めがかかっていることも事実だとし、「自衛隊が憲法に明記されても、安倍さんが作った法律を変えて、自衛隊がアメリカと一緒になって行動することを止める法律にすればいい」と主張。「自衛隊の組織がどこで何をやるかは法律の話。だから小西さんの言い分が正しいのであれば国民に選挙で選択してもらって法律で変えればいい。今話しているのはあくまで自衛隊の組織。組織を憲法に書くべきかどうか」だと反対派に釘を刺した。

 これに対し小西氏は「橋下さんは間違っている。自衛隊は日本を攻めてくる国を追い払う。これしかできないはず。橋下さんがおっしゃるように戦争の種類を法律で絞ることはできる。ただ日本が攻められてないのに他国に攻めていったら日本国民が死ぬ。大なり小なり戦争というものを政治家に許すことはできない。それは憲法を変えないと」と反論。橋下氏は「小西さんは自分の意見を押し付けている。平和安全法制は通っちゃってるんだから。変えるんだったら選挙で政権取って、法律変えてよ。すでに平和安全法制があるんだからそれを前提に考えないと」と説得した。

 一方、橋下氏は賛成派に対しても、「自民党は両論併記でずるい。"自衛隊がやれることについては一切変更を加えず、組織だけを憲法にちゃんと書いてあげましょう"だったら、小西さんのような意見は出てこない。スタンガンだけじゃなくて大砲やバズーカも持たせてから憲法に書き込むのかそうでないのか、その部分を自民党が曖昧にしてしまっている」と指摘。すると秋元氏は「議論の途中」と語るに留め、「憲法は最後、国民が決める。我々はその発議をする、材料を提供する。解釈で安全保障の問題の対処ができているという状態から、整合性合わせるために憲法に明記しようと言ってるだけ」と説明した。

■希望・柚木氏「自民党は自信がないのかなと思う」

 「現役自衛官を弟に持つ」という柚木氏は「無責任だし、自信がないのかなと思った」と秋元氏を批判、「アメリカにとってはイラク戦争も自衛のための戦争だった。大量破壊兵器があると言っていたのになかった。それに賛同したイギリスのブレア首相は辞任した。そういうことに巻き込まれる可能性がある。指揮権の問題、飛行ルートの問題もある日米同盟の下で自衛隊が運用される現実を踏まえないといけない」と主張すると、小西氏も「憲法前文で『世界中の誰もが戦争で殺されない権利を持っている』と小学校6年生の時に習う。自衛隊は殺しに来たものを跳ね返すことしかできないのに、どうして石油を確保するために地球の裏側まで行ってイランの人を殺せるんですか?北朝鮮は日本に攻めてきてないのに、なぜ攻撃して殺せるんですか?説明できないことが起きている。こういう政治は止めましょう」と同調した。

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 柴山氏は「どんどん海外へ派兵する、といわれるけど、その前提が違う。今回の平和安全法制は、たとえアメリカが攻撃された時に反撃する場合であっても、そのための厳格な要件を定めている。例えばグアムや日本海に展開するアメリカ軍、ここに北朝鮮が攻撃して、そこに日本の船が浮かんでいた場合、そこに次は日本が攻撃されるかもしれない。そういう場合に日本の存立が脅かされ、国民も非常に危ない時に、他に手段がない時に限って反撃しましょう、と言っている。日本の防衛のあり方に関する意識について、内閣府の調査では日米安全保障条約は日本の平和と安全に役立っていると答えた人は平成27年で82%が回答した」と理解を求めた。

■橋下氏「1972年見解に縛られずに議論してほしい」

 「元々9条2項については無くして、日本は普通に自衛権を持つ国になるべきだというのが僕の持論だった。ただ、政治家を8年やって、国会議員を色々見させてもらったら、この状況で自衛権をどんどん拡大させたらちょっと危険だなと思った。だって稲田朋美さんが防衛大臣になってるんですから。ああいうのはありえない。だから今は持論を脇に置いています」と話す橋下氏。

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 「僕は本来、自衛隊の活動範囲に制限を加えるべきじゃないと思ってる。でもなぜ制限を加えるかと言うと、日本には憲法9条1項があるから。元々自衛権がないところからスタートして、少しずつ自衛権を認めてきたのが日本の国のあり方。それを照らし合わせるとどうなのか。9条2項の存在は大きいと思う」とした上で、「1972年の政府見解も、ペライチの紙なんですよ。魂のこもっていない、官僚の作った作文。内閣法制局という一官僚機構が作った文章、これに政治家が縛られている。これだけで日本の安全保障について自衛隊が何を出来るかという重要なことを決めている。本当はこれを国会議員が議論しないといけない。国際情勢を見渡して、どこまで自分たちの国を自分たちで守るのかを議論しないといけない」と指摘。

 さらに「1972年見解に縛られずに議論してほしい。当時は冷戦時代で、何も言わなくてもアメリカが守ってくれた。それに小西さんはアメリカの戦争に"巻き込まれる"と言うが、もし日本の周りで紛争が起きたらアメリカを我々が"巻き込んで"助けてもらう。なのに、自分たちが巻き込まれそうになったらそれは嫌だ、は通用しますか?」と小西氏の矛盾を突いた。

 すると小西氏は「橋下さんは国際関係の基本が分かっていない。自衛隊はアメリカ軍を守っている。なぜなら在日米軍基地がある。横須賀に第7艦隊という世界最大の空母の艦隊がある。第7艦隊の守備範囲はハワイの西からアラビア海峡の入り口のインドの隣、中国も含めて世界の重要な海。その第7艦隊は日本に基地がなければ行動できない。仮に横須賀になければアジアの海を中国に譲り渡してアメリカは交代しないといけない」と主張した。

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 議論を聞いていたタレントの藤本美貴は「賛成、反対どちらの気持ちも分かったが、反対派が何でそんなに心配ばかりをしているのかが、最後まで分からなかった。母親として、子どもをずっと外に出さないでずっと閉じ込めているのと一緒のように見えた」と議論を振り返っていた。(AbemaTV/『橋下徹のニッポン改造論』より)


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