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1月4日新日本プロレス「WRESTLE KINGDOM 12 in 東京ドーム」(WK12)のダブルメインイベントの一つ、IWGP USヘビー級選手権、ケニー・オメガ対クリス・ジェリコ。共に日本のリングゆかりのある外国人選手、カナダのウィニペグという同郷出身など、共通点の多い2人の対戦。気鋭のIWGP US王者、ケニー・オメガに、元WWEのスーパースターで大ベテランのジェリコが挑む、ドーム大会向けのビックマッチという図式だが、日本と世界プロレス、外国人レスラーの日本での歴史などさまざま物語が脳裏を過る、メッセージ色の強い非常に感動的な内容となった。

試合前の会見から「血みどろ」「本当の闘い」など両者から物々しいキーワードが乱れ飛んでいたが、フタを開けるとそこには、WWEのスーパースターと日本を起点に世界へ活躍の活路を選んだ新日本の気鋭外国人ではなかった。かつて日本のインディープロレスでなんでもありの闘いを経験して来た、猛者2人がかつての自分を取り戻したかのようなラフファイトの応酬を展開する、まさに男同士の果し合いだ。

事前に決定していた「反則裁定なしノーDQマッチ」というルールを活かし、椅子や机が乱れ飛ぶことはあることは予想されていたものの、両者派手な技よりも殴る、蹴る、張るといった相手を痛めつけるには有効な技を散りばめながらも、クリスが、開始早々必殺技のウォールズ・オブ・ジェリコを繰り出すなど出し惜しみはない。対するケニーも海外向け放送席を破壊するダイブから、放送席のモニターで殴りつけるなど妥協なき狂気ぶりを発揮、大波乱の展開となった。

元FMW、ECW対元DDTの遺伝子が激突する荒々しい闘いの中でも、試合が経過するにつれクリス・ジェリコが次々と懐の深さを見せる。日本のジュニア戦線で磨かれた空中殺法、カメラマンのカメラを奪い、場外で傷んだケニーを撮影する侮辱的なパフォーマンスと47歳のベテランが躍動する。

そんな中、印象的だったのは、日本時代から得意としていたライオンサルトから、冬木軍時代のリーダーで恩師でもある故・冬木弘道の代名詞マッチョポーズという流れではかつてのライオンハート時代を彷彿とさせる姿を見せ、さらには、同じく新日マットから世界へと羽ばたいた盟友、故・エディ・ゲレロ(2代目ブラックタイガー)のコーナーにより掛かるムーブも披露。試合前の前日に、クリスは、エディ・ゲレロとクリス・ベノワ(元ワイルド・ペガサス)というかつて日本から世界の頂点に輝き不遇の死を遂げた友人に捧げるイラストを自身のインスタグラムに掲げ、この試合を彼らに捧げることを誓っていたという。

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ともにフィニッシュ・ムーブを出し尽くし最後は椅子へピンポイントで叩きつける片翼の天使で、ケニーが大物クリス・ジェリコ葬り去ったが、あらゆる意味でその結果を超越した試合だった。

解説の蝶野正洋も「世界的にもみても凄い試合。外国人同士の対戦は得てして凡戦になりがち、この2人は日本をベースに世界に羽ばたいただけに新日本プロレスの東京ドーム大会の意味をしっかり捉えてくれた。自分もここまでの戦いは予想していなかった、予想を超えた内容」とコメント。

同郷の新旧対決としても見応えのある素晴らしい試合だったが、クリス・ジェリコが日本のリング、そして故人を含む同時代を切磋琢磨して来たレスラーたちへリング上で捧げたメッセージの数々は、プロレスを愛し続けて来た人々への贈り物として心に刻まれた。

またエモーショナルな論調で語られがちだが、47歳のベテランで大先輩、スーパースターとの対戦とセンシティブな条件でもやはりスイングさせたケニー・オメガという才能は驚嘆に値する。昨年のオカダ・カズチカとの一戦も世界を驚かせたが、このクリス・ジェリコの一戦で再びベストバウト・マシーンが2018年を代表する試合になることは間違いないだろう。

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