
2018年に突入し、一気に加速している北朝鮮情勢。新年早々、北朝鮮が打ち出したのは韓国との対話路線だった。1日の「新年の辞」ではグレーのスーツに身を包んだ金正恩委員長が平昌オリンピックへ代表団を派遣する意向を示し、韓国側もこれを歓迎。
さらに3日には、北朝鮮祖国平和統一委員会の李善権委員長が「板門店連絡チャンネル」を開通させる指示をしたことを発表、断絶していた南北の連絡が再開された。9日に予定される会談の提案も、このチャンネルを通じて行われ、2年あまり途絶えていた韓国と北朝鮮の高官による会談が実現する。
北朝鮮の軟化を受けて、韓国の文在寅大統領は4日、2月に開催される平昌オリンピックの期間中は米韓合同軍事演習を行わないことで米国と合意。両国の姿勢を中国も歓迎した。
北朝鮮が韓国に見せた対話姿勢は本物なのだろうか。それとも、駆け引きなのだろうか。
共同通信客員論説委員の平井久志氏は「ガラリと戦術を変えてきた。今年の『新年の辞』で面白いのは、米国に対しては『核のボタンがありますよ。我々は核兵器の開発を続けますよ』と言って拳を振り上げたが、韓国に対しては逆に握手の手を差し伸べてきた。韓国としては、平昌オリンピックを平和の祭典として成功させたい。その象徴として北朝鮮が参加すれば、大会期間中はミサイルが発射されることもなく、欧州からの選手も安心して参加できる。もう一つ盛り上がりに欠けている平昌オリンピックの熱意にも変化が出てくる可能性はある」と話す。

平井氏の指摘の通り、「新年の辞」の中で金委員長は米韓合同軍事演習の中止を要求している。しかし米国のマティス国防長官は4日、「合同軍事演習はパラリンピックが終了する3月18日以降に実施する」として、あくまでも中止には応じない姿勢だ。
平井氏は「9日の会談で、北朝鮮は米韓合同軍事演習の中止をオリンピック参加の条件として出してくる可能性もある」との見方を示す。
「今までの北朝鮮は、韓国を相手にせず、米国だけを相手にするんだということをずっと言ってきた。ここに来て握手の手を差し伸べ、韓国を揺さぶるだけ揺さぶって、最後には参加しないという選択もできる。北朝鮮としては、軍事演習が1~2か月後ろ倒しになると困る。実は、5月になると北朝鮮では田植えが始まり、軍隊も動員する。しかも、今は石油が足りない。どうしても中止させられないのであれば、もっと遅らせろということを主張するのではないか」。
韓国が北朝鮮に接近する理由とは何なのだろうか。"親北"とも言われる文在寅大統領に期待をしているのだろうか。
平井氏は「文政権は歴代政権で初めて、アメリカ大統領を板門店視察に誘うなど、国防に関しては非常に厳しい面もある。一方、日本に対しては幼稚な反日カードを使う面もある。非常に入り組んだ、一概にこうだとは言えないものを持っていると思う。非核化のための対話に導いていく意志はあると思うが、相当難しく、下手をすると、日米韓の協調を崩してしまう可能性もある」と話す。
そんな中、中国商務省は5日、北朝鮮に対する原油・石油製品、鉄鋼など金属類の輸出を制限すると発表した。まだまだ緊張感が続く北朝鮮情勢。9日の首脳会談が注目される。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


