幕下三十枚目に尾上部屋所属の竜虎という力士がいる。本名は川上竜虎。それが四股名になると姓・名が引っくり返って竜虎川上。でも、名前はひっくり返っても体はどっしり! デビュー以来6場所連続の勝ち越しを決めた期待のホープで十両目前だ。えっ? 四股名ってフルネームあるの?
そうなんですよ。横綱・白鵬だってフルネームなら白鵬翔。相撲ファンの間じゃ翔くんといえば桜井ではなく、白鵬。横綱・鶴竜はかわいい顔して力三郎! 初優勝した栃ノ心は剛(つよし)。旭天鵬以来(2012年五月場所)5年8カ月ぶりに平幕優勝を果たせば、まさに剛の者としてその名を歴史に名を刻みました!
さて、竜虎、先述のとおり本名が川上竜虎。熊本出身の19歳。なんじゃ、その強すぎる本名は? 生まれながらの力士かいっ? とツッコミ入れたくなったら、所属する尾上部屋の親方の甥っ子で、おじいちゃんは九州のアマチュア相撲連盟の会長という、相撲一族出身のサラブレッド。マジ、生まれながらの力士だった!
幼稚園から相撲を始め、本人も早くから相撲界入りを熱望。相撲一直線、稽古の後も自主トレーニングを欠かさず、朝昼晩、相撲のことば~っかり考えているとか。目標は親方の濱ノ嶋。親方も現役時代にはイケメン力士で名を馳せたけど、竜虎もまたけっこうなイケメン。関取になったら人気者になりそう。というか、四股名で覚えてもらえて、まずは子どもたちの人気者になりそう!
そう考えると四股名って本当に大事だし、面白い。今場所活躍の力士たちの四股名だけでも、序の口で優勝争いをした琴手計(ことてばかり)なんて、なんだか風流。手計は苗字としては埼玉県に多いらしく、琴手計も本名が手計富士紀(てばかりとしき)。佐渡ヶ嶽部屋伝統の「琴」を付けて、琴手計となった。伝統+本名で、四股名として美しい!
横綱・白鵬の付け人も務める三段目の黒熊は、くろくま?と思っていたら、これで「くろかげ」と読む。熊という漢字が名前で使われるときには「かげ」と読めることを、彼で学びました。四股名、実は漢字の勉強になる!
ありがた~い四股名といえば、大当利大吉(おおあたりだいきち)にかなう者なし! 残念ながら昨年七月場所以来、勝ち越しはないけど、中継で彼が土俵に上がる姿を見られるだけで「今日はラッキー!」と思える存在。四股名の通りに、あたって行け!
今場所、幕下で優勝の若隆景(わかたかかげ)は、呼びづらい四股名No.1かも。まだ髷(まげ)が結えないザンバラ髪でイケメン。若隆元、若元春、若隆景の大波三兄弟の末っ子で、次の次の場所あたりには十両に昇進?と期待大なのに、声援を送ると噛んでしまう率が高い、高い。そう簡単には呼ばせないぞ? 四股名がツンデレな若隆景、逆に精一杯四股名を呼んで応援したくなります!
最後に歴女にもアピールしたい、四股名の力士を紹介する。三段目の力士・海舟(かいしゅう)は、細マッチョでキリっとした顔つきが凛々しく、四股名の通りに明治維新の要人・勝海舟に顔も雰囲気も似ている!
驚きなのは海舟、本名が小林倫太郎! 勝海舟の幼名は麟太郎! 生まれ変わりかっ? 海舟、四股名を下の名前も倫→麟に変えて勝海舟に倣い、どうやら相撲で日本を変えるつもりらしい。ゴクリッ。【和田静香】
(訂正:記事公開時、竜虎の四股名について「竜虎竜虎」と誤って記してしまいました。2017年一月場所に「川上」として前相撲でデビューし、同年三月場所より「竜虎川上」としております。大変失礼致しました。番付表等で確認した上、訂正させていただきます。 和田静香)