
「バブルは毎回違った顔でやってくる」「素人が相場に入ってきた時が、相場の終わり」「専門家らしき人が値上がりを正当化する理論を唱え出したときが一番危ない」。
著書『アフター・ビットコイン』などを通じて仮想通貨をめぐる実態に警鐘を鳴らしてきた中島真志・麗澤大学教授は、昨今の状況について「これをバブルと言わずに何をバブルと言うのかという感じだ」と話す。

中島氏によると、ビットコインを始めとした仮想通貨に対する見方が日本と諸外国では異なるのだという。
「Facebookが関連する広告を禁止にし、3月のG20でも規制について話し合うことになっているように、海外では仮想通貨について"危ないもの"という見方が強い。これに対し、日本では含め夢の通貨、未来を変える通貨という、非常に明るいトーンでマスコミも伝えていて、行政も育てていこうというスタンス。書店にはそこに悪ノリした投資本が山のように積まれている。その結果、円建てでの取引が全体の3~4割と突出した状況になっている」。
さらに中島氏は、ビットコインにまつわる幾つかの数字を例に取り、仮想通貨の将来に悲観的な見方を示す。
「1%の人が全体の90%のビットコインを保有するという、非常に寡占状態。取引量にも上限があり、意外に脆弱なシステム。1秒間に世界で7件しか取引できないので、あっという間にパンクしてしまう。本来はビットコインでコーヒーを飲んだりしてはいけない。また、ビットコインのウォレットがどのように使われているかを分析した論文によると、小口の決済に使っている人は2%くらいしかおらず、値上がり期待で買っている人が多かった」。
元経産官僚でコンサルタントの宇佐美典也氏は「FXも同じビジネスモデルではあるが、手数料は0.5%程度。仮想通貨の相場がものすごい勢いで上がっていくから、手数料が5%などでも利益が出るとみんなが信じている。完全なバブルだと思う。日本は金融緩和政策でお金がだぶついているという背景もあると思う」と指摘した。

一連の騒動を仮想通貨の利用者はどう捉えているのだろうか。NEMなど仮想通貨の利用ができる「nem bar」(東京・渋谷)で来店者に話を聞くと、「コインチェックでNEMを1万円分買ったが、引き出しができなくなってしまったので、改めて海外取引所で買った。最近になって取引を始めた方は心理的なダメージが大きいのかな」(30代の男性会社員)、「残念の一言。コインチェックは業界の発展に貢献してくれた会社なので頑張ってほしいなと思う。(仮想通貨の話は)"危ないでしょ"みたいに引かれてしまう。でも、本気で世の中が変わると思っているので、その変わり目に立ち会えているのがすごく面白い」(30代の男性会社員)と、仮想通貨の明るい未来を確信しているようだ。

しかし2日夜、ビットコインは一時80万円を割り込んだ。「今回がそれに当たるのかは分からないが、バブルが崩壊するときは、一旦下がって、そこで買い場だと思った人たちが一旦買い上げるので、"Wトップ"になる。そしてそこからガクンと行くケースが多い」。
「今年は仮想通貨にとって"バッドニュースの年"になるのではないかと思っている」と話す中島氏。「去年はあまりにもグッドニュースが多かった。今年はすでに流出事件も起きたし、規制も強化されるだろう。さらにあまり注目されないが、ビットコインがどんどん分裂している状態にある。夢の通貨のイメージが崩れるかもしれない」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)