2月某日、アイスリボンの松本都が“路上特訓”を行なった。これは2月24日の横浜ラジアントホール大会に向けてのもの。
この大会では、トライアングルリボン選手権として王者・藤本つかさvs松本都vs鈴木秀樹がマッチメイクされている。
都は、かつて自身が率いた「崖のふちプロレス」で謎かけ対決、魔界村(ファミコン)対決などを実施、プロレスの枠組みを破壊してきた選手だ。昨年は一瞬だけラップユニット「サ上と葛西と都」も結成した。業界きっての狂った個性の持ち主として知られるが、本人は可愛いと言い張る。最近では「東京Lily」で“正統派”イメージDVD制作に向けたクラウドファンディングもスタートさせた。
一方、鈴木は大日本プロレスのストロングヘビー級など数々のベルトを巻いてきた実力派。ビル・ロビンソンの愛弟子であり、昨年のプロレス大賞では技能賞を受賞している。
両者は実は同年デビューであり、昨年大晦日のアイスリボン後楽園大会ではシングルで対決。鈴木が勝利しているものの、都は「試合はむしろ私の土俵だった。だから私が技能賞」と言ってはばからない。
今回のトライアングル選手権は、アイスリボン男子部ことアイスリボンhomme設立を宣言した鈴木が、佐藤肇社長に加え選手たちも次々と味方につけることで実現したもの。「言葉巧みなところも含めて、あの人(鈴木)はサイコパスの特徴にそっくり当てはまる」と言い出した都は、横浜大会で鈴木に引導を渡し、アイスリボンと縁を切らせたいという。
もし鈴木が王者となった場合、「アイスリボンhomme旗揚げ準備局」が設立。藤本と都はそのスタッフになるという条件が課せられており、団体への影響も大きい。また8月26日には松本、藤本、星ハム子のデビュー10周年記念となる横浜文化体育館大会が予定されているが、そこに鈴木も「我々の10周年」として参戦したいようだ。
鈴木の思考は謎だが、真っ向からの勝利を狙う松本もタダモノではない。アイスリボンhomme旗揚げ阻止に向け、練習や試合を通して鈴木をよく知る澤宗紀の力を借りて路上特訓を行なうことにしたという。現在は引退している澤だが、かつてインディーマットを席巻。最近では一般人としてだが高木三四郎とのタッグ「変態大社長」も復活させた。
とはいえ「体も大きいしテクニックが凄い。いま日本を代表するレスラーが誰かと言ったら関本大介さんか鈴木さんでしょう」と、澤も攻略はお手上げ状態。鈴木の弱点を「お金です。金の亡者ですから」と断言する都の言葉から「ギャラを仮想通貨にして、ハッキングされたふりして未払いにすれば縁が切れるんじゃないか」というアイディアも出してみたものの、試合勝利には結びつかない。
(現在は一般人の澤は「唯一持っている」という木村響子のコスチュームで特訓に臨んだ)
大晦日の対戦では、都がIGFでデビューした鈴木への秘策として闘魂タオルを首にかけ、卍固めを披露。しかしこれが決まらなかったことから「鈴木さんが慣れていない技を」(澤)ということで澤の得意技の一つ、伊良部パンチを伝授することに。
これは野球のピッチングフォームから繰り出すパンチで、豪快に腕を振り抜くだけに威力も大きい。澤と向き合い、クロスカウンター状態でパンチを打ち合った都は上機嫌。さらに「前にスピリチュアルの先生に見てもらった時、私の後ろに腰の悪いおじいちゃんが見えるって言われたんですよ。これってビル・ロビンソンさんじゃないですかね?」と主張。さすがに無言の澤をよそに、意気揚々と引き上げていった都。アイスリボン男子部旗揚げを阻止できるかどうかは、彼女の拳にかかっているのかもしれない。
文・橋本宗洋
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