いま中国で、日本のあるゲームアプリが異例の大ヒットを遂げている。

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 ゲーム画面を渋谷の若者に見せてみると一様に「知らない」との回答。フランス人、モロッコ人、ドイツ人、オーストラリア人も答えは「NO」だ。しかし、中国・北京で聞いてみると「遊んでいます」(27歳・女性)、「遊んでいます」(23歳・男性)、「やってるよ。あのかえるのゲームでしょ」(24歳・男性)と若者を中心に遊ばれている。

 この大人気のスマートフォンアプリが「旅かえる」。日本のゲームアプリ会社ヒットポイントが手掛けたアプリで、自由気ままに旅へ出かける「かえる」が、旅先の画像やお土産を持って時々家に戻ってくる“放置型”のゲームだ。ヒットポイントのゲームプランナー・上村真裕子氏は「私自身が旅行好きで、実際の観光地を題材にしたものってありそうでないなと思って。出してみたら面白いんじゃないかと思ってこのようなゲームを開発した」と経緯を語る。

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 去年11月からGoogle Play Store、そして12月からApp Storeで世界へ配信された「旅かえる」。日本語版のみの配信にもかかわらず、中国で無料アプリダウンロード数ナンバーワンになった。地域別に見ると中国が95%、日本が1%程度とユーザーのほとんどが中国人。Google Play Store、App Storeの累計ダウンロード数は3000万を超え、ヒットポイントには会社のサーバーが落ちるくらいの問い合わせが来たという。上村氏は「これほどまでに中国のお客さんにプレーして頂けると思っていなかったので、本当に予想外の出来事」と話した。

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 中国ではSNS上でかえるの画像を投稿する人が続出。若者を惹きつけている魅力はどこにあるのか。実際にユーザーに聞いてみると様々な声があがる。

「子供を育てているような気分になる」(27歳・女性)

「放っておいても遊べるところかな。思い出した時に覗けばいいからね」(27歳・女性)

「かえるが可愛いから」(23歳・女性)

「時間もお金もかからないから」(24歳・男性)

 プレイヤーはかえるの気持ちをコントロールできず、全てはちょっと浮かない顔のかえるの気分次第。一見退屈そうにも思えるこのゲームが、なぜ短期間でここまで人気を集めたのか。テレビ朝日中国総局の山本志門記者は次のように分析する。

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 「このゲームが流行している背景には、今の中国の若者が置かれている状況があると思う。中国は急激な経済発展を続けているが、その成長の波にうまく乗れた人は大金持ちになる。一方で、大多数の若者は厳しい生活を迫られているケースが多い。マイホームなんて夢のまた夢で、都市部では他人と数人でシェアして住んでいる。チャンスも多い中で人口も多く、やはり競争社会に疲れてしまった若者も多い。そういった精神的な虚しさが複雑な人間関係を遠ざけて、内にこもってしまう人も多い。このゲームには、自由に旅に出てふらっと帰ってくる、その緩さが今の若者の癒しとなって人気が出ているんだと思う」

 中国の大手メディアも“社会現象”として「旅かえるがネットで流行しているが、“欲が薄い”“仏系(ほとけけい)”“おひとり様”、そういった生活を楽しむ若者が増えていることの表れとも言える」と特集記事を掲載した。

 “我が強い”というイメージを持たれがちな中国人だが、意外なことにいまの中国では「仏系青年」という言葉が流行している。「仏系」とはこだわりを持たず、気に留め過ぎず、熱心になり過ぎないという生き方や考え方。日本のいわゆる“草食系”のイメージに近いかもしれない。

 「あなたは“仏系”?」との問いに「旅かえる」ユーザーは「私は違うわ」(27歳・女性)、「私はちょっとそうかも」(27歳・女性)、「そう思う。“仏系”じゃなかったらこのゲーム好きじゃないと思う」(24歳・女性)と答えた。

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 国営メディアの人民日報はそんな「仏系青年」についてコラムを掲載。「心穏やかに過ごすことは大変良いこと。ただし、理想は高く持つべき。何事も流れに任せていたら自分を見失ってしまう」と警鐘を鳴らした。急激な社会の変化に疲れた中国の若者は、いま格闘ゲームや恋人と駆け引きする恋愛ゲームよりも、手のひらの“かえる”に心の安らぎを求めている。

 なお、「旅かえる」は中国の企業にも人気で、商品化の話や旅行会社からコラボのオファーが来ているという。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

次回『けやきヒルズ』は2月9日(金)12時から!「AbemaNews」チャンネルにて放送

けやきヒルズ  流出NEM ダークウェブ上で他仮想通貨へ交換か | AbemaTV(アベマTV)
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