AbemaTVで放送中のオリジナルドラマ『#声だけ天使』(全10回)。声優専門校を舞台に、夢追う5人の友情と純愛、挫折と希望を描く青春群像劇だ。いまや声優は人気職業の1つだが、声優になるために通う声優専門校の実態はどうなっているのか。その真相を探るため、バンタンゲームアカデミーの声優学部に通う2人の生徒に話を聞いた。

声優を目指す若者たち

この記事の写真をみる(3枚)

齊藤留莉加さん

 大分県出身の齊藤留莉加さんは26歳の女性。声優に憧れて愛媛から上京してきた『#声だけ天使』の主人公・ケンゾウ(亀田侑樹)に重なるところがある。大分であれば、福岡や大阪で演技を学ぶという選択肢もあったと思うが、齊藤さんは「眼中になかった」と言う。声優になるならば、多くの声優事務所や録音スタジオのある東京しかないと考えていたようだ。また、声優を目指すと決めた時、家族から応援されたと話す。「“いい大学”に行って、“いい会社”に入る」ことだけが幸せでもないという現代、学校スタッフによれば、今は「子供の夢」を応援する親が多いとのこと。こうした風潮も声優志望者が増えた要因の1つだろう。

拡大する

及川航平さん

 もう1人は、群馬県出身の及川航平さん。27歳の男性だ。大学進学で東京に出てきたが、周囲に馴染めずに中退。一時は芸能プロダクションの養成所にも通っていたが、最後のチャンスとばかりにバンタンゲームアカデミーの資料請求をしたところ、見学に来ないかと電話がかかってきたことで、入学を決めたと語る。齊藤さんは幼い頃からアニメやゲームに親しんでいたと話すが、及川さんは、そうしたカルチャーからはやや距離を置いていたようだ。2人は声優学部で、どのようなことを学んでいるのだろうか。その前に、前提から確認しておく必要がある。

声優専門校から声優養成所を目指す

 バンタンゲームアカデミーのような声優専門校は、生徒たちに声優として必要な技術を教える場所である。しかし、こうした専門校に通えば、すぐさま声優デビューができるということでもない。もちろん卒業後すぐ、あるいは在学中に声優としてデビューする人もいる。しかし多くの生徒たちは、卒業後は声優事務所の養成所に入所するという。

 これは宝塚に例えると分かりやすい。宝塚歌劇団の一員として舞台に立つためには、まず宝塚歌劇団の団員養成所である宝塚音楽学校に入学しなければならない。しかし、宝塚音楽学校の定員に対し、入学希望者数はあまりにも多い。そのため受験生は、歌唱や舞踊などの実技を含めた試験を突破すべく、宝塚受験スクールと呼ばれるレッスン教室で、その技術を学ぶことになるのだ。このレッスン教室にあたるのが、バンタンゲームアカデミーをはじめとする声優専門校。つまり声優専門校は、声優事務所の養成所に入るために必要な技術を学ぶ場所なのだ。

感情の開放をキッカケに反対の自分に

拡大する

教室の風景

 齊藤さんは、2年間受けた授業の中でも「感情の開放」が印象に残っていると話す。ひと口に言えば、思いっきり泣いたり笑ったり、喜怒哀楽を表現するというもの。簡単そうに思えるが、「怒ったり悲しんだりは区別できますが、喜んでいると楽しんでいるの区別って……」と、その難しさを語る。そして「講師の掛け声で、笑いが止まらなくなったり、涙が止まらなくなったり、それがうまく行くようになった」時、その手ごたえを感じたようだ。しかし、印象に残っている理由は、それだけではないという。

 齊藤さんは大分にいた時、何か不満があっても吐き出せず、何もかも心の中にため込む性格だったと振り返る。だが「感情の開放」の授業で、自分の感情を素直に引き出せるようになった。それは「違う自分になりたかった。反対の自分になりたいと思っていた」という願いが、かなった瞬間でもあったのだ。

最終的には好き嫌いの問題

 及川さんは、ある講師の授業が印象に残っていると話す。その講師は、生徒の演技に対して良い・悪いではなく、あえて「好き」「嫌い」で論評するというのだ。「僕は嫌い」。頭ごなしに拒絶しているだけにも捉えられるが、及川さんはそこに、この業界の本質があるとみている。「こっちが頑張って演技をしても、判断する人の感性によって『僕は嫌いだな』と言われてしまう。『そうじゃない』ではなく、好き・嫌いの話。たとえ、どんなに技術があって、自分なりにうまくセリフを話せたとしても、最終的には個人(受け取り側)の好みの問題。オーディションでも何でも、相手の感性がすべて。人間臭くて面白いですよね」

 相手が嫌いな理由を考えたときに、自分がそこに納得できるものはあるのか。そして、自分はそれでも“自分のやり方”を押し通せるほどの強いこだわりがあるのか、それともやはり“相手が言っていることのほうが正当”なのか。自問自答、試行錯誤の日々が続いたという。それは及川さんを大きく成長させたに違いない。そうした変化の中で、アニメ作品の見方も変わったようだ。「見て楽しむというよりも、教材のような感覚です。例えば、沢城みゆきさんの『た行』は本当に素敵なんですよ」と及川さん。そうした感覚は、齊藤さんも持っていると話す。「もちろん、滑舌とか間の取り方も勉強になりますが、一番印象的なのは、キャラクター作りです。演じている声優が、どのようなアプローチでキャラクターを作り上げているか、とても勉強になります」とのこと。

 及川さんは来春から、声優事務所の養成所に入ることが決まっている。齊藤さんは複数の養成所から内定をいただいているが、まだどこにするかは未定とのこと。「(声優という道を)諦めるという選択肢はないです」と、力強く語った。

 現在放送中の『#声だけ天使』も、年齢も環境もバラバラな⽣徒たちが「声優になる」という夢を追いながら⽇々奮闘している様⼦が描かれている。少⼈数制のクラスの授業の様⼦や、先⽣からの指導⾵景、またオーディションの様⼦も詳細に描かれており、実際の声優学校と重ねて⾒るのも⾯⽩いのかもしれない。

(C)AbemaTV

⇒【関連記事】 声優専⾨校の実態とは…(1)漠然とした夢が具体的な⽬標に変わる瞬間

⇒【関連記事】 いまは声優が歌えるのは当たり前!? 声優専⾨校の実態とは…(2)中ノ森⽂⼦に聞く「成⻑に必要なこと」

AbemaTVオリジナルドラマ進出記念作品 #声だけ天使 第7話 | AbemaTV(アベマTV)
AbemaTVオリジナルドラマ進出記念作品 #声だけ天使 第7話 | AbemaTV(アベマTV)
出演者は、亀田 侑樹(岸田 建造 役)、佐久本 …です。
【無料】#声だけ天使 - Abemaビデオ | AbemaTV(アベマTV)
【無料】#声だけ天使 - Abemaビデオ | AbemaTV(アベマTV)
見逃した#声だけ天使を好きな時に何度でもお楽しみいただけます。今ならプレミアムプラン1ヶ月無料体験を実施しています。
この記事の画像一覧
この記事の写真をみる(3枚)