「ゲイリー・オールドマンさんとともに英国アカデミー賞を受賞することができてとても光栄です」
イギリス・ロンドンで18日、「第71回 英国アカデミー賞」の授賞式が行われ、ロサンゼルスを拠点に活動する辻一弘さんら4人が“メイクアップ＆ヘアスタイリング賞”を受賞した。
辻さんが手掛けたのは、イギリス映画『ウィンストン・チャーチル／ヒトラーから世界を救った男』の主人公・チャーチルの特殊メイク。名優ゲイリー・オールドマンを、たるんだあごに白髪で薄毛のイギリス元首相ウィンストン・チャーチルに変身させたことが高く評価された。
辻さんは京都生まれ、ロサンゼルス在住の日本人アーティスト。10代の頃から独学で学んだ後ハリウッドに渡り、『メン・イン・ブラック』（1997年）、『グリンチ』（2000年）、『PLANET OF THE APES/猿の惑星』（2001年）など、様々な作品のメイクを手掛けてきた。しかし、ハリウッドの“お金至上主義”に嫌気が差し、「この後40年間メイクを続けて死ぬ時に幸せだったと思えるか」と2012年に映画業界を引退。現代アーティストとして活動してきた。
今作を担当するまで、長らく映画業界を離れていた辻さん。映画作品への復帰を決めたのは、主演のゲイリーからの熱烈な“ラブコール”だった。「あなたが引き受けてくれたら私はこの映画に出る」。このオファーに辻さんは一度は悩んだというが、ゲイリーとの仕事を望んでいたこともあり「人生に一度あるかないかのチャンス」という思いで参加を決めた。
スリムな体型のゲイリーを特殊メイクでチャーチルに近づけるためにテストや改良を重ね、映画の撮影に至るまでには半年ほどの期間がかかったという。
「ほとんどの人がウィンストン・チャーチルがどんな顔だったか知っている。人物の再現メイクって非常に難しいんですね。たとえば本人同士が似ていれば簡単なんですけど、特にゲイリーさんとチャーチルの顔は違ったので、どういう風にメイクで変えて似せていくかは非常に難しかったです」（辻さん）
辻さんの手によってすっかりチャーチルの姿になったゲイリーも熱演が評価され英国アカデミーで“主演男優賞”を受賞。ゲイリーは受賞後、「私の素晴らしいメイクアップチーム、一弘、デイヴ、ルーシー、イバナに感謝します」とコメントしている。
来月5日（日本時間）に発表される米アカデミー賞。辻さんは“最有力”と言われているが、自身の受賞の可能性については「若い時、メイクをしていた時はやっぱり夢の1つだったので、受賞できれば非常にうれしい。（今までの努力の）ご褒美みたいな感じになるでしょうね」と語った。
（AbemaTV／『けやきヒルズ』より）
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