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 今月開催された、国内では最大級となる7万人以上の来場者を集めたゲームの祭典「闘会議2018」。複数の国内eスポーツ団体が統合し、1日に発足した日本eスポーツ連合(JeSU)が公認する"プロライセンス制度"が導入され、大会の賞金総額は2815万円に達するなど、出場選手たちにとっては特別な大会となった。

 eスポーツの世界市場規模は2017年は770億円で、2020年には1665億円まで伸びる見通しだとされている(Newzoo調べ)。また、海外では1つのタイトルでの総額が約27億円で、優勝賞金は約12億円(2017年)だという。経産省もeスポーツを健全に発展させ、コンテンツ産業の振興に取り組んでいくとしているが、国内では高額賞金をゲームメーカーが提供することについて、景品表示法の観点から自社商品の売り上げにつながり兼ねないとして問題となり、さらに刑法(賭博罪)の観点からも問題になることが指摘されてきた。

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 世界各国で活躍するプロゲーマーチームDeToNatorを運営する江尻勝氏は、こうした状況に「日本と海外は規模感が違うと思う。ちゃんとスポンサーがあって、大会が成り立って、それが年々グレードアップしている。そのスピードと進化の仕方、選手たちの扱い方、出し方においては、なかなか追いつけないレベルにはきていると思う」と指摘する。

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 そこで日本eスポーツ連合では「賞金を上げることでプロゲーマーの地位を向上させる」「日本のeスポーツを世界水準に引き上げ、金を稼げるコンテンツに育てる」という目的のもと、高い技術を持つ人と認められた人にプロライセンスを導入、労務報酬として支払うことで、高額の賞金を実現させようとしている。

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 「闘会議2018」では、去年11月に結成されたプロゲーマーチーム「Rush Gaming」がシューティングゲーム「コールオブデューティワールドウォーII」で優勝を飾り、彼らは世界大会への切符とともに、優勝賞金500万円を獲得。Rush Gamingメンバーは「日本のチームが世界に挑戦する本当に歴史的瞬間だと思う。世界で何か爪痕を残していきたいと思う」と優勝の喜びを語っていた。

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■"プロゲーマー"の生活とは?

 「コンビニ行ってカップラーメンをどれにするか考えている時間が一番幸せ。彼女と会うのは週に一回くらい。賞金があったら美味いご飯でも食べに行ったりしようかな」。

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 格闘ゲームで国内トップレベル、世界ランキングでも9位のかずのこ選手(30)は、世界大会で優勝賞金1500万円を手にしたこともある。しかし、そんな大金を手にすることは稀で、月収は20万円台後半。普段はコンピューターメーカーに無償提供された、ゲームをする仕事部屋の他、6畳一間の和室がついた住居で生活している。一日の練習時間は10時間以上、指先には固いマメができているという。普段の食事はカップラーメンなどのコンビニ飯だ。

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 「闘会議2018」ではストリートファイター(優勝賞金200万円)に出場し、4位に終わったが、それでも20万円の賞金を獲得した。「海外だとスポーツ選手みたいな扱いもしてくれるし、ゲームが好きだと笑顔で語っていて、全然後ろめたさを感じていないのが衝撃だった」。日本eスポーツ連合が導入したプロライセンス制については「定義が曖昧だった部分がハッキリしたので、堂々とプロゲーマーだと言えるようになった。ありがたい」と話した。

■「別になくてもいいのかな」と疑問の声も

 現在、ライセンスが発行されるタイトルは7つある。すでに世界的なタイトルの格闘ゲーム「鉄拳7」「ストリートファイターV アーケードエディション」、このほか「コールオブデューティワールドウォーII」「ウイニングイレブン2018」「パズル&ドラゴンズ」「モンスターストライク」「レインボーシックス」だ。

 一方、ライセンスを手にしたプロゲーマーたちからは疑問の声もあがっている。ふ~ど選手(32)は「2011年からプロゲーマーとして生きてるので、ライセンスを発行されましたと言われてもあまりピンとこない」と話す。

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 そうした声を受け、「闘会議2018」の1週間後、プロライセンスについてプロゲーマーや業界関係者らが議論する「緊急座談会」が開催された。プロライセンスに否定的なふ~ど選手は「賞金だけで食ってる人って何人もいない。お小遣いもらうみたいな感じで大会に参加できる権利だと思った。必要か必要じゃないかと言ったら、別になくてもいいのかなと思った」と主張。

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 これに対し、日本eスポーツ連合の浜村弘一副会長は「無名で、これから頑張って出てこようという人は予算も全然もらえない。でもライセンスを持っていて大会で活躍すれば、協賛する側が見つけやすくなる」と説明。また、賞金と景品表示法との兼ね合いについては「賞金で一般の素人の方を釣ってしまうことが問題になっているので、どこからがお金を払ってもいいパフォーマンスを見せるプロなのか、線引きをしないといけなかった」と話した。

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 プロゲーマーの梅原大吾選手(36)は「eスポーツ業界、メーカー、プレイヤー、大会運営が一丸となっていない。若者たちが"この国面白え""これからこの国どうなっていくんだろう"ってウキウキ、ワクワクするようなことができたら、めっちゃ協力したいなって思う」とコメントした。

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■法制度との兼ね合いや"格差"が今後の課題に

 eスポーツにおける昨年の賞金王は、ドイツ人ゲーマーのクロ・タカソミ氏で、その獲得賞金総額は約3億6000万円に上る。一方、プロテニスの錦織圭選手の場合は獲得賞金が約4億3000万円だが、16社の企業からのスポンサー契約で年収は約37億3000万円。既存のプロスポーツ選手との差は歴然としているが、逆に言えば"まだまだ稼げる"という見方もある。

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 ファミコン全盛期に活躍したゲームプレゼンテーターの高橋名人は「日本でメーカーが行うゲーム大会の賞金は、景品表示法に則り10万円が限度だった。また、アメリカの場合は入場料から賞金を拠出するが、日本ではそれが賭博に当たる。そのため、私が代表理事を務めていたe-sports促進機構では、メーカーから寄付金をいただき、第三者として賞金を出していた。その意味で、プロライセンス制に諸手を挙げて大賛成」と話す。

 「世界大会で日本人の選手が頑張ってトップを目指して、それをみんなで盛り上げていく。トップが出ると、小学生、中学生の憧れの存在になる。まず、それを作るのが一番」。

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 一方、メディアコンテンツ研究家の黒川文雄氏は「日本においてeスポーツはコミュニティ的に運営されてきた結果、分派してしまっていた。それが統合されたというのは良い動きだと思う。プロゲーマーやその予備軍にしてみれば、活躍の場が増えるのも良いことだ。ただ、景品表示法や、賭博に問われる可能性があるという問題が残っている。また、トップと底辺はあまりにも差があり、賞金があがらなければ、ライセンスを持っている人たちのモチベーションも上がらない。本当に稼いでいるYouTuberは年収が億単位かもしれないが、数千円くらいしか稼げない人もいる。eスポーツのフィールドが広がって、統一されたらすばらしいことだが、まだまだ課題があるので、ライセンス制には部分的な賛成だ」と話す。

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 その上で黒川氏は「ストリートファイターや鉄拳は日本のゲームだし、大乱闘スマッシュブラザーズも日本のゲームとして海外で戦われている。日本のゲームが世界のeスポーツのレベルに追いついていないことは全くない。むしろリードしてきている。ただ、どれだけみんながゲーマーを応援できるか、また、景品表示法などの法律を見直していけるかが課題だ」だと指摘した。

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