「東京2020、オリンピック・パラリンピック、あなたは誰と観ますか？」
東京都が制作し、先日公開されたこの動画。何をPRするものなのか、街で聞いてみると「癒された。オリンピックが東京に来るんだなというのはすごい楽しみ」「パラリンピックとかオリンピックとかも東京でやるので、ぜひ友達とか親とかと一緒に観に行きたいと思った」といった声があがる。
東京五輪のPRと思う人も多いが、小池都知事の説明は「人口って国の基本中の基本ですので、ぜひそういう『結婚をしたい』と思っているのになかなかできない方、そこの後押しを東京都として“応援団”としてやっていきたい」というもの。動画のタイトルは「結婚に向けた気運醸成のための動画」で、交際中の2人が1964年の東京大会をきっかけに結婚した祖父母に思いをはせ、結婚へと踏み出していく様子が描かれている。3つのバージョンが作られ、動画の制作費など事業費は約3000万円だ。
都からの熱烈な結婚応援。ネットでは「結婚の押しつけ？」「独身はダメなことなの？」との声があがり、街の人からの反応も様々だ。
「おせっかいに思う人からしたらおせっかいじゃない？焦っている人が見たらうざったく思えそう」（20代・女性／学生）
「（動画の内容は）よくわからなかった。オリンピックの人気と一緒に盛り上げていこうというのはいいと思う」（20代・女性／会社員）
「あんまり結婚願望はない。結婚は人の自由なので、それに税金を使うのは無駄じゃないかな」（20代・男性／学生）
行政や都が結婚を後押しすることに意義はあるのか。『けやきヒルズ』（AbemaTV）に出演したハフポスト日本版編集長の竹下隆一郎氏は「前提がすっぽり抜けている」と見解を述べる。
「オリンピック・パラリンピックと併せて言うようになってきているのも多様性から。今は色々な価値観を持っている人や、色々な境遇の人がいることを前提に情報発信をしなければならない。その前提がすっぽり抜けてしまっていて、『結婚に向かっていきましょう』『結婚はいいことです』というメッセージだけが伝わってくる印象」
また、竹下氏はネットメディア編集長の立場から、結婚を扱う際に「結婚をゴールにしていない人がいる」「結婚後の男女の役割を決めつけない」「結婚は“男”“女”だけではない」という3点に気をつけているという。
「今は男性が育児をすることもあるし、最近は夫婦の別姓も議論されていて、常識を疑うところから結婚が見つめ直されている。同姓婚の議論も世界的にはされていて、結婚という言葉1つをとっても色々な価値観がある」
竹下氏は「私たちも色々な考えを持って記事を書いている」とした上で、「今回の東京都の動画は、（1964年の）東京オリンピックに合わせたのかもしれないが20年、30年前の古い結婚のイメージがある。日本を代表する行政機関の東京都が、こういう時代認識で政策を立案したり税金の使い道を考えたりしているのかと少し不安になってくる。色々な価値観を持っている東京都民、有権者、納税者がいるという前提で政策を作らないと、ちゃんとした税金の使い道にならない。その理解が動画からは伝わってこない」と指摘した。
「2015年国勢調査」によると、東京都の生涯未婚率は女性が19.2％（全国1位）で男性が26.0％（全国3位）。リクルートの「結婚総合意識調査2017」では、「一生結婚しなくても幸せ」と答えた人は37.5％だった。
一方、去年11月、自民党の山東昭子参議院議員が「子どもを4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討しては」と発言し、物議を醸していた。
竹下氏は、少子化を問題視している東京都の姿勢には理解を示しつつ「昭和の価値観というか、人口が増えた上で政策や国力がついてくるという発想にまだまだ立っている。今は個人の問題のほかにも、働き方改革や待機児童といった社会な背景もある。動画内の『一人の方が気楽』『“お金がない”が口癖だった友人』という声は、取材を通しても感じること。それに対して本来は政策で手を差し伸べるべきで、個人が選択をしないから悪いという印象を受けたのは配慮が足りなかったのかなと思う。今は結婚の価値観を伝えるのが一番難しいところ」と述べた。
（AbemaTV／『けやきヒルズ』より）
⇒次回『けやきヒルズ』は2月23日（金）12時から！「AbemaNews」チャンネルにて放送
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