最近ドラマ界や映画界に進出し、俳優活動を行う芸人が増えている。しかも、ちょい役(端役)ではなく、主演級でオファーをもらう芸人もおり、さらに演者やスタッフからの評価も高い。

(写真:オカダマコト/過去記事:佐藤健、ストイックな食事制限を告白 木梨憲武による炊き出しも“焼き鳥だけ”しか食べられず)
4月20日に公開される映画『いぬやしき』はとんねるずの木梨憲武が16年ぶりとなる映画主演を務め、そのほか元キングオブコメディの今野浩喜が、4月放送の嵐・二宮和也主演のドラマ『ブラックペアン』(TBS系)にも出演するなど、4月のドラマ界&映画界でも芸人たちの活躍が目覚ましい。
オファーのきっかけはさまざまで、テレビなどで芸人のネタを見たドラマや映画のスタッフが、芸人の演技力を評価し、オファーすることもあれば、最近は評判を口コミで聞きつけたスタッフがYouTubeなどでその芸人のネタを見て「これなら配役にあっている」とオファーすることもある。また「自分の演技力を活かして俳優をやりたい」とマネージャーに伝え、そこからマネージャーが仕事を取ってくる場合もある。
ドラマや映画だけではなく、舞台に出ている芸人も多い。舞台にはドラマや映画関係者がよく観に行くため、そこで目にとまりオファーされるというケースもある。
演技力だけではない“雰囲気作りのうまさ”
しかし、簡単にドラマや映画で芸人の演技力が通じるわけではない。ネタにおける演技と、ドラマや映画における演技は全く違い、そこで困惑し、結局力を出しきれずに終わってしまう芸人もいる。ただ、そういう芸人でも監督の中には好んで使う人がいる。それは演技力ではなく、俳優が持っていない“力”を芸人が持っているからだ。
その力が現場における“雰囲気作りのうまさ”である。芸人は常に周りの空気を読みながら行動をしているので、ドラマや映画の世界でもそれを活かすことができ、芸人が1人いるだけで、その現場が全く違うものになる。
実際にドラマなどで活躍中の役者から「ドラマの現場に芸人さんがいると、休憩中の雰囲気がよくて撮影も楽しくできます。芸人さんは周りへの気遣いが本当にすごい。演技以外でも勉強になります」という話も聞く。
スタッフからの評判、存在感を持つ芸人たち
ダチョウ倶楽部の3人は20年前のNHK大河ドラマ『徳川慶喜』(1998年放送)に出演。『徳川慶喜』では、カンヌキ役に肥後克広、義経役に寺門ジモン、半次役に上島竜兵と、リアクション芸は封印し、しっかりと存在感のある演技をしていた。
その後、2006年のNHK大河ドラマ『功名が辻』にはロンドンブーツ1号2号の2人が出演。島津豊久役の田村亮はゲスト出演であったが、田村淳は中村一氏役としてレギュラー出演し、その演技力が評価された。
俳優として評価が高いのはネプチューンの原田泰造である。彼は、2008年『篤姫』(大久保利通役)、2010年『龍馬伝』(近藤勇役)2015年『花燃ゆ』(杉民治役)など、NHK大河ドラマに何度も出演。2000年ドラマ『編集王』(フジテレビ系)では、主演を務めた。
また、芸人の中ではカンニング竹山も評価が高い。俳優として十分通用する演技力があり、バラエティ番組などでは「竹山さんは俳優」と主張する芸人仲間もいるほどだ。もちろんスタッフからの評判もいい。
前述の元キングオブコメディの今野浩喜は、2015年放送の『下町ロケット』(TBS系)に迫田滋役として出演し、俳優としての評価が上がった。コンビ解散も経験し、それからは俳優業がメインとなっている。
ドラマや映画は終わりがはっきりと決まっている。スタッフと演者が一致団結しゴールに向かって突き進み、そして終われば打ち上げなどで一段落する。一方、バラエティ番組は終わりがはっきりと決まっていない。終わるときは番組の改編や視聴率が落ち込みなどが背景にあるため、ドラマや映画のクランクアップは、バラエティ番組とは大きく異なる終わり方だ。俳優の仕事を経験した芸人の中には、ドラマや映画の終わり方が好きになってしまい、俳優業に夢中になる人もいる。
昔であれば芸人はバラエティ、俳優はドラマ、という考えをする業界関係者が多かったが、近年はその壁もなくなり、バラエティとドラマを行き来する芸人が多くなってきている。芸人の垣根を超えた彼らの活躍に、引き続き目が離せない。


