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 現在、国内におよそ5000社以上あるという探偵業者。開業資金はほぼゼロ、公的な免許などはなく、公安委員会へ届け出れば事務所を開設することができ、現在、およそ1万4000人が浮気調査や人捜し、企業調査などに従事しているという。ちなみに平均年収は400~500万円だと言われている。

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 そんな中、前身の「オークラ調査事務所」を立ち上げ、一大企業「ガルエージェンシー」へ成長させた人物が、38年のキャリアを誇る渡邉文男だ。全国にフランチャイズを展開、今では124拠点、スタッフ800人以上を抱えるまでに育て上げた。日本初の探偵養成学校「ガル探偵学校」も設立、これまで8000人の探偵を輩出してきた。現在は現役を退き、後進の育成に励んでいるという渡邉の半生に迫った。

■「東京湾に沈められかけた」過去も

 「銀座のホステスと付き合っていたが、実はその人が政治家の愛人兼秘書だった。政治家にバレて呼び出されて、脅された。富士山へジープで連れて行かれて土に埋められて。頭の上をジープで何回か走られた」。

 そんな仕打ちをされても泣きも叫びもしなかった渡邉を気に入った政治家は、自分の選挙資金の監視という仕事を与えた。運動員が私腹を肥やすことなく、ちゃんとお金を管理しているかを監視する仕事だった。

 そんな時、探偵による殺人事件が発生したという。探偵は相手の弱みを握って交渉で優位に立つために雇われることがあるが、中華料理店の醤油に青酸カリを入れ、それを口にした客が死亡したことがあった、と渡邉は説明した。「こんなことまでやるのかと驚いた。当時の探偵の半分はヤクザがやっていた」。

 「チャンスだな」と感じたという渡邉。ニッチ産業をビジネスにしていこうと決意、20代で最初の事務所を開設、36歳でガルエージェンシーを開業(その前から創業自体はしている)。しかし、今でこそ確立されている探偵業でも、当時は無法地帯。危険な依頼もさまざまあった。

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 ある時、2人組がすっと寄ってきて、背中に"尖ったもの"を突きつけられた。車に乗せられ、知らない場所へと連れて行かれた。「椅子に縛り付けられて。目の前にはドラム缶があって、重りがあって…東京湾に沈められかけた」。

 190時間、1人で張り込むこともあった。携帯もSNSもない時代。仲間とはぐれたら1人でやるしかなかった。「トイレに行くこともできないから、張り込みながら側溝にうんこをします。ズボンを下ろしたまま走って追うことなんて、しょっちゅうでしたよ」。

 今まで受けた仕事の中で、最も変わった依頼は、ある企業の信用調査だった。「ある会社が別の会社に2億円貸し付けていて、"返してくれないから調べてきてくれ"と。それで聞きにいった。会社の財務状況を聞いたらすぐに会議室に通されて金を返します、と言われた。依頼人にそのことを告げると、"半分あげます"、と」。わずか15分ほどの調査で、1億円を得たのだという。

■体力勝負の仕事。年収1500万円も

 「顧客満足度96%」と言われるガルエージェンシー。渡邉によると、優秀な探偵になれば年収1500万円はゴロゴロいる。そんな一流の探偵になるには、ある条件が必要なのだという。それが「とにかく遊ぶこと」。「遊んでカネを使えない探偵はメシが食えない。昔は1日100万円を使ってました。その日に100万円を使わないと寝ちゃいけないって決めていた。例えば服を全部買うとブランドを覚える。飲み屋に行くと知り合いができる。情報源ができる。人脈と知識を増やしていく」。

 もちろん仕事は体力勝負。夏は気温50度の車中にエアコンなしでいなければならず、冬は極寒の中で張り込むこともある。

 去年ガル探偵学校を卒業した1年目の新米探偵に話を聞くと「実習でやっていくうちに仕事に対する怖さ、不安はなくなった。体力、精神力は不可欠」と語る。

 「ガル探偵学校」大阪校の校長で、自身も探偵歴14年の津田聡氏が「探偵なら誰しも持っているもの」として見せてくれたカメラは、レンズ部分がネジやボタンに偽装されていた。また、盗聴器を発見する機械も重要な仕事道具だという。現在ストーカー被害は年間1万5000件にものぼり、大阪本社には毎月盗聴に関する相談が寄せられる。

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 また、頻繁に持ち込まれる案件が浮気調査だ。「全体の65%くらい。3日間調査して、実際に浮気していることが判明する確率は90%ですね」。

 渡邉が尾行を見破るコツを特別に少しだけ教えてくれた。一つ目が、「尾行されたら"右へ3回曲がれ"。3回曲がると元のところに戻ってくる、それでもついてくる人がいたら探偵。車も一緒」。二つ目は「"後ろは警戒するな、前は警戒しろ"。腕利きの探偵はちょっと前を歩いている。地理にも精通しているので、前を歩いていても後ろの尾行対象者の動きの予測がつく。"某雑誌社"の記者もそうだと思う」。

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 そして三つ目が「携帯のセキュリティも安心できない。画面に付いた指の脂の跡で動きをトレースすればパスワードを破れる。自分がお風呂に入るのを見て、奥さんがぱっと隠す素振りをしたら浮気している可能性がある。後ろめたさがあるのでとっさに隠そうとしちゃう。秘密を持ったっていうことですね」。

■警察を動かすこともある『探偵ファイル』

 渡邉の名を有名にしたのが、あの『探偵ファイル』だ。初期投資に5億円をかけ2001年に開設、記事にすることを条件に無料で依頼を受ける画期的なスタイルはまたたく間に反響を呼び、1日の閲覧数が300万を超えるまでに成長した。未解決事件や週刊誌が扱わない事件を記事にし、犯人逮捕に繋がったこともある。運営を続ける理由は「弱者や女性が警察に駆け込んでも『忙しいから勘弁してくれ』と言われる場合も。それを記事化することで警察を動かすこともある。もちろん今は警察の対応もだいぶ変わりました」。

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 探偵業の未来について、渡邉はどう考えているのだろうか。「AIには取って代わらないし、残る仕事だと思う」と自信を見せる。

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 「探偵は楽しい仕事。同じ仕事が1つもない」と話す渡邉の仕事の哲学は「愛は永遠」。数々の浮気調査をしてきたからこそ「浮気はするな」と訴えかけた。(AbemaTV/『偉大なる創業バカ一代』より)

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