天狗のような鼻が特徴のテングザル。その鼻が大きい理由が先月22日、アメリカの科学誌「Science Advances」で、日本の研究チームによって発表された。

研究チームの一員・中部大学の松田一希准教授によると、テングザルの鼻が大きい理由は「メスに対するアピール」。「メスが鼻が大きい事を認識して、鼻の大きいオスのところに行く。(鼻が大きいと)メスにモテる」という。
調査では「鼻の大きさ」「体重」「睾丸のサイズ」の関係を調べたといい、結果として「鼻の大きいオスは体重が重い=体格が大きくて強いオス。もう一つは、鼻が大きいと睾丸も大きい、つまり繁殖能力も高い」ということが分かったそうだ。
鼻の大きさでメスを惹きつけるというのは今までも言われていたが、証明はされていなかった。今回の発表までに約10年がかかったというが、なぜこれまで研究が進まなかったのだろうか。
テングザルが生息するのは赤道直下の島・ボルネオ島のジャングルの中。調査するのが困難なことと、年々数が減少し絶滅危惧種に指定されている野生のテングザルに会うのは困難だという現実があったという。
そんなテングザルの鼻の秘密は他にもあることがわかった。日本で唯一テングザルが見られる動物園「よこはま動物園ズーラシア」を訪れると、檻の中で葉を食べるテングザル・ゲンキくんの姿があった。テングザルは木の葉を主食としており、野生の猿は主にマングローブの葉を食べているという。飼育員・清野悟さんはテングザルの鼻について「大きな鼻になるのは大人のオスだけ。メスとか子どもは小さなかわいい鼻」と話す。やはり、大きな鼻はオスがメスを惹きつけるためというのも納得だ。

また、テングザルは「ハーレム」と呼ばれる一夫多妻制を敷いている。多くの猿はボス同士が喧嘩し相手のメスや縄張りを奪ってしまうというイメージがあるが、テングザルは家族単位で行動し、夜はそれぞれの家族が一つの集団となって一緒に過ごす平和的な猿だ。
そんなテングザルが争わない秘密も、実は鼻にあることが今回の研究で判明したという。研究結果に「鼻が大きいと体重も重い」とあったが、自然界では体の大きさは強さに直結する。つまり、鼻の大きさが他のオスへの強さのアピールになっているため、傷付け合うような争いが起こらない関係になっている。
また、鼻が大きいと鳴き声も低くなるため、顔の見えないジャングルの中でも鳴き声で鼻の大きさがわかるようになっているという。
(AbemaTV/『けやき坂アベニュー』)



