13日夜、訪朝した韓国の特使・徐薫国家情報院長の報告を受けた日本政府が"次の一手"として「日朝首脳会談」を検討しているとロイター通信が報じた。これに対し菅官房長官は「まず色々な報道があったが、そうした報道にひとつひとつ答えることは差し控えたいと思う。いずれにせよ、まずは南北、そして米朝首脳会談に向け引き続き、日米韓３か国で緊密に政策をすり合わせていく。その中で何が最も効果的であるか、そうしたことの観点から今後の対応は検討していきたいと思う」と述べるにとどめている。
上智大学の前嶋和弘教授は「日朝首脳会談はアメリカも歓迎している。アメリカが東アジアで行動するために日本の情報が重要で常に共有している。非核化に動き始めれば、日本は"６か国協議"の当事者として核査察の進め方を協議する」との考えを示している。共同通信の元平壌支局長の磐村和哉氏は「北朝鮮にとっての優先順位はトップがアメリカ。日本は周回遅れの２位のイメージ。韓国と同様の戦後補償を受けたいが拉致問題がハードルになっている。北朝鮮は日朝首脳会談を急いでいない」との見方を示している。
14日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した元在韓国特命全権大使の武藤正敏氏は「平昌オリンピックのレセプションで、安倍総理が金永南さんと拉致問題について話をされたようだ。核・ミサイルの放棄と同時に拉致被害者の方々の帰国を実現させる"包括的な解決"を目指すのが日本の立場だ。やはり日本政府としては拉致問題が置き去りになってはならない。拉致された方やご家族は高齢になっていらっしゃるので、一刻の猶予もない。この機会を逃すとまた難しくなってくるかもしれない。核・ミサイルで対話が始まるのであれば、拉致問題でも対話したいという思いが、日本政府には非常に強いと思う」と話す。
さらに「これから北朝鮮は経済の立て直しが必要になってくるので、世界銀行やIMFなどからもお金をもらって経済開発をしようと考えるだろう。そこで引っかかってくるのが人道問題だ。ただ、国内の恐怖政治を緩めれば金正恩委員長が仕返しをされるかもしれない。アメリカが攻撃してきてやられるかもしれないという恐怖と同時に、今まで自分たちが国民を締め付けてきた仕返しをされるかもしれないと思う。しかし、核・ミサイル問題が進展してくれば韓国とも経済協力が進むし、拉致問題でも合意を得て、日本からの支援を頂こうと考えている可能性はある。その意味で、北朝鮮側も日朝首脳会談に関心はあると思う」との見方を示した。
日朝の首脳が初めて顔を合わせたのは、16年前の2002年９月17日だ。当時、小泉総理が平壌を訪問し、金正日総書記と日朝首脳会談を行った。その翌月には拉致被害者5人が帰国し、24年ぶりに家族と再会した。小泉総理は2004年にも訪朝した。安倍総理と金正恩委員長による日朝会談が実現すれば、14年ぶり３回目となる。報道によれば、複数の政府筋の話として、安倍総理はすでに米朝首脳会談に応じる意向を表明したトランプ大統領と緊密に連携しながら、北朝鮮の金正恩委員長との間合いを詰める考えだとしている。
14日に行われた徐氏との会談で安倍総理は「核問題、ミサイル問題、そして拉致問題を解決する。これは我が国の基本方針だ」と話したという。徐氏も記者団に対し「安倍総理と大変有意義ですばらしい面談を行った。平壌に行って金正恩委員長に会い、ホワイトハウスに行ってトランプ大統領に会った内容を詳しく説明した。これからの南北首脳会談に続いて行われる米朝首脳会談が成果を得られるよう、あらゆる面で協力と協調をしてくださるとおっしゃった」と述べた。しかし、除氏は韓国と金正恩委員長との会談で拉致被害者問題が議論されなかったことも明かしている。拉致問題を抱える日本が他国と足並みを揃えて北朝鮮との対話を行うことはできるのだろうか。
この点について武藤氏は「日本は最初から包括的な解決と言っているので、それについての誤解はないと思う。同時に核・ミサイルの完全な解決、これは日本も一致している。まずはそこを出発点にして、合わせて拉致問題も包括的にということだ。トランプ大統領も、日本のことを常に意識していると思う。また、金正恩委員長と韓国特使との会談の映像を見る限り、金委員長が一方にしゃべってその他の人たちはメモを取っていた。事前に色々と調整したのかもしれないが、金委員長の話をじっと聞いて、帰ってきたような感じを受けた。１時間で合意に達したとしているので、そんなに議論はしていないと思う。私が心配しているのは、金委員長が非常にご機嫌だったということだ。あの顔は、核やミサイル実験が成功した時の表情だ。金委員長の思惑通りに進んでいるということは、我々にとって決していいことではない」と危機感も表明していた。（AbemaTV／『AbemaPrime』より）
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