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 国会が森友問題で注目を集める中、東京都議会の警察・消防委員会で、盗撮、ストーカーなどの"つきまとい行為"に対する規制を強化するための「迷惑防止条例」改正案が採決された。29日の本会議で可決され、今年7月から施行される見通しだという。

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 今回改正されるのは、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止するための条例」だ。法律で規制できない迷惑行為を取り締まるためのもので、過去には、客引き行為やダフ屋行為、押し売りの禁止など、その時々の社会背景に応じて改正を繰り返してきた。しかしネット上では"東京都版共謀罪だ"という声も上がっており、22日の採決では傍聴席から反対の声や怒号が飛び、退場者も出た。

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 問題とされているのは「名誉を害する事項を告げること」「住居などの付近をみだりにうろつくこと」という内容だ。個人や団体への誹謗中傷やヘイトスピーチなど「悪意」があると判断されるものが規制対象になる一方、時の政権や政治家への抗議活動や、取材活動の規制につながるのではないかと指摘されているのだ。

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 条例案に反対する舩尾遼弁護士は「今、国会前に集まっている方たちが言っているような、安倍総理に対する『嘘つき』を何度か言うことで、これに当たってしまうと考えられる。判断するのも警察なので、濫用しようと思えば、いくらでもできる。デモを封じるような使い方もできる」と指摘する。ネット上にも「"リベラルを排除する"の次は"デモする都民は排除する"をたくらんでいる」「風営法(施行当時)のダンス規制がどれだけ拡大解釈され、現場の警察官の判断で恣意的に摘発されたか知っているのか」といった批判の声がある。

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 こうした懸念に対し、警視庁の市村諭生活安全部長は都議会で「正当な理由で行われる市民運動や取材活動等は、取り締まりの対象となるものではない。他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならないと、濫用防止規定が定められている」と説明、小池知事も「基本的にはないというふうにお答えしたいと思う」と答弁している。

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■「報道の自由は前提で作っている」

 今回の条例案が定めるつきまとい行為について、宇都宮健児弁護士は(2)について、「ストーカー規制法では、恋愛感情を伴ったものに規制を限定されているが、今回の条例改正案のつきまとい行為には、非常に広い行為が対象になっている」と指摘。「住居などの付近をみだりにうろつくこと」という条文が、報道機関が取材対象の周辺を行き来することも処罰対象になるのではないかと懸念する。

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 これに対し、自民党の川松真一朗都議は「そもそも平成28年12月に改正されたストーカー規制法に定められた"悪意の感情に基づくもの"というものがわかりづらかった。そのため、隣人トラブルなどでつきまとわれている場合などの相談に対し、警察では対応が難しかった」と説明。

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 「人間関係のトラブルで人身に危害が及ぶような重大事案に発展するケースを未然に防ぐという意味。自分から申告出来ない人もいるし、本当に困っているひとのために作ろうと思っていたのに、なぜか共謀罪とか言論弾圧だと安倍内閣を助けるための条例だとかいきなり出てきた。報道の自由は前提で作っているので、取材活動への取り締まりは議会の我々も警察も考えていない」。

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■「マンション建設反対運動までが規制される危険性がある」

 また、宇都宮弁護士は「刑法では公然と名誉毀損するような行為に対して被害者が告訴しなければいけないが、今回の条例案では警察の判断で処罰ができる。今、国会前デモでは"安倍内閣総辞職しろ、麻生は責任とれ"と個人を名指しして批判しているが、こういうところまで警察が恣意的に対象を拡大すれば、自由な表現活動が制限される。労働運動、不買運動やマンション建設反対運動までが規制される危険性がある」と懸念を示す。

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 これについても川松氏は「まったく想定していない。政治活動や労働運動といった正当な理由がある場合には除外される。すでに16道府県で導入されていて、東京都がはじめて導入するわけでもない。どこにこの条例で行政を批判して捕まっている人がいるのか。客観的に見て危険なものを止めるということ。なんでこんな心配になっちゃうんだろうか。これからも公開の場でどんどん議論して、警視庁や我々にプレッシャーをかけていただくのがいい」と反論したが、宇都宮弁護士は「その"正当な理由"の解釈そのものを警察が判断してしまうので、縛りにならない。"デモは対象としない"くらい書かなければ濫用は防げない。2013年に特定秘密保護法ができて、昨年共謀罪法が制定された。その流れで危険性がある。集会、結社、表現の自由は民主主義社会で基本的な人権なのに、日本社会は口封じする方向に向かっている」と批判。「法律はできると一人歩きしてしまう。国旗国歌法を作るときに、当時の野中広務・自民党幹事長は"絶対に強制"しないと答弁した。ところが東京都は国歌斉唱で起立しない教師をどんどん処分していった」。

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 さらに宇都宮氏は、条例案の審議プロセスについても指摘する。「警察・消防委員会で19日に1時間審議して、22日も1時間だけしか審議していない。警察の説明を聞いていても、殺傷事案が起こったわけではない。なぜこの条例が必要なのか、十分な理由がないと考えられる」。川松氏は「それは論理が真反対だ。殺傷事件が起きないようにするためにルールを作ろうということ。確かに、条例案が出されて警察・消防委員会で審議した時間は1時間だが、それまでの過程の中で警視庁が各党に説明をしながら議論を積み重ねてきた。去年秋には都民からの意見募集もしているので、乱暴に扱っているということはない」と説明していた。

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