"中東のシリコンバレー"と呼ばれ、最先端の技術を生み出しているイスラエル。AppleやMicrosoft、Googleといった最先端のグローバル企業が次々と進出、経済産業省の調べでは、日本企業による投資額も3年で20倍、2017年は222億円に上る。
人口860万人の"小国"イスラエルは、どのようにしてハイテク国家になったのだろうか。
コンテンツ制作のプラットフォームを提供するスタートアップ企業・Playbuzzのグロースディレクターは「イスラエルはスタートアップ国家の筆頭で、イノベーションやエコシステムの先駆者だ」と話す。実際、イスラエルからは新たな技術やビジネスモデルを創出し期待を浴びるスタートアップ企業が年に800~1000社も誕生している。
建国から70年のイスラエルでは、義務教育は5歳からスタートし、小学校では基礎となるプログラミングが勉強でき、続けて中学、高校でも学ぶことができるという。18歳で義務教育が終わると、男女ともに兵役に就く。イスラエルのプログラミング教育は1991年、世界に先駆けて高等学校に導入が始まった。日本が2008年になって中等教育へ導入(技術・家庭)、2020年から初等教育で必修化されるのと比べると、驚くべき先進性だ。
そんな若者たちの中から、良いアイデアがひらめいた人がスタートアップへと踏み出すのだが、勤めていた企業への出戻りも容易なので、失敗を恐れない気風がある。さらに成功した企業が海外企業に高く売れれば税収も上がるということで、国にも歓迎されるのだ。海外からの投資額は、2010年の約800億円から、2015年には約4000億円まで増加している。
■兵役とテクノロジーの深い関係
日本企業がイスラエルのイノベーションを効率的に活用するためのサポートをしている「イスラテック」の代表取締役・加藤清司さんは、これまで見聞きしたものを『スタートアップ大国 イスラエルの秘密』という本にまとめて出版した。
加藤さんはイスラエル人の特徴について「物事を既存の延長線で考えず、本質的な解決をするために違うアプローチがあるのではないかと考える傾向がある」と話す。また、イスラエルは不安定な中東地域にあることから、軍事技術としてのテクノロジー開発も盛んで、プログラミング教育で優秀だった人材は兵役で専門部隊に配属されるのだという。「日本ではアメリカ寄りのイメージが強いが、したたかな国なので、旧ソ連のエンジニア、例えば宇宙開発をしていた優秀な人材も受け入れてきた。人口が600万人くらいの頃に移民100万人を受け入れるという大きな決断もした」。
パックンは「ソ連が崩壊した時、各国からの移民が一気に増えた。当時アメリカには移民政策があり簡単には行けなかったが、イスラエルはユダヤ系であれば簡単に入ることができた。高学歴の人も多く、教育改革、投資の整備なども同時に進んでここまできた」と説明した。
■日本企業進出の促進も
昨年、日本はイスラエルと企業間交流を促進するための組織「日・イスラエル・イノベーション・ネットワーク(通称JIIN)」を設立した。経済産業省、大使館、貿易振興機関などが参加しており、AIや自動運転など、イスラエルが強みを持つ分野に関心のある日本企業を派遣する事業を計画中だ。また、加藤さんのイスラテックや在日イスラエル大使館も、日本企業向けのツアーも計画している。
日本とイスラエルの企業が協力するメリットについて加藤さんは「イスラエルは発明の国と呼ばれるくらい、0から1、全く何もないところから生み出すのが得意だ。日本はどちらかというと、今あるものを改良していくことが得意なので、その部分での相性は良いのではないか」と説明する。
一方、「すでに拠点を持つ他国に出遅れている」「決断のスピードが遅い」という日本企業の課題を指摘、「イスラエル人は本当に物事を考えるスピードが早く、短い時間軸で動く。日本企業は組織内でなかなか決断できないと思うが、個人は優秀。イスラエル人はどんどんリスクを取って決断していくので、日本企業も組織を変えて対応していくのがいいのではないか」とした。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)