
「明日朝早いから今度…」「疲れた~今日は無理だよ~」。最近ネット上で話題となっている1冊の漫画がある。タイトルは『今日も拒まれてます~セックスレス・ハラスメント嫁日記~』。著者のポレポレ美さん自身が経験したセックスレスを漫画化したものだ。

29歳の時に結婚したポレポレ美さんだが、5年間の同棲期間中からの悩みがセックスレスだったという。問題解決のため雰囲気を演出してみたり、精力のつくご飯を作ったりと、ありとあらゆる作戦を決行するも、ことごとく失敗。次々に妊娠していく周りの友人・知人や両親からのプレッシャーが重くのしかかっていったという。
漫画への反響について、ポレポレ美さんは「私だけじゃなかったんだっていう声をよくいただく。こんなにレスの方が多いことに自分でもびっくりしている」と話す。ポレポレ美さんのような女性は少なくないのだ。

そもそも日本性科学会の定義で「セックスレス」とは、「特別な事情がなく1か月以上性的な接触がなく、長期にわたることが予想される場合」のことを指す。これが夫婦だけではなく、若いカップルの間でも増加しているというのだ。2016年度の司法統計によると、離婚原因の理由「性的不調和」は男性5位、女性8位にランクインしている。Durex社の調査によると、1位のギリシャでは年平均138回なのに対し、日本は45回と最下位。日本家族計画協会の「男女の生活と意識に関する調査」の2001年の調査では28%の夫婦がセックスレスだと回答したが、これが2006年の調査では47.2%に増加しているのだ。

海外メディアは日本のセックスレスについて「日本の危機の震源地は国会や生産現場ではなく、ベッドルームにある」(フォーブス誌)、「そう遠くない時期に爆発する危険な時限爆弾だ」(ワシントン・ポスト紙)とも報じている。
■性風俗の世界に飛び込み、自信を取り戻した女性
こうした社会背景もあってか、セックスレスをテーマにしたAVも登場しているという。作品を制作したプロデューサー・冨野貴宏氏は「実際に出演したいと面接に来られる女性の中には、セックスレスを理由に挙げる方も多い」と話す。

結婚して6年になる夫と2人の子どもを持つ優子さん(29歳、仮名)も、セックスレス解消のため性業界に飛び込んだ一人だ。「1人目を妊娠してからちょっとずつ回数が減っていって、2人目を妊娠してからは完全にセックスレスという感じ。私はしたいんだけど、相手が構ってくれなくて。寂しい気持ちが大きくて、もう好きじゃないのかなとか、女として見てもらえてないのかなという不安がある」。

そこで始めたのがライブチャットのチャットレディだ。画面越しに女の子と会話できるサービスで、お客さんからのエッチなオーダーにも対応する。この仕事を機に、自身の夫婦関係にも前向きになれたという。「浮気や不倫でリアルに他人と会うのは怖いし罪悪感もある。ライブチャットも(罪悪感が)全くないという訳じゃないし、多少最初は不安も抵抗もあった。でも実際には会わないというのが大きくて。お客様は女性として見てくださっているので、そういうところで少し自信を取り戻せたというか。いい気分転換にもなるし、ポジティブになれる。さみしさも紛れる」。

■セックスレスの男女が座談会
去年離婚を経験した長谷川陽子さん(43歳)は、3年半の結婚生活で性行為はゼロだったという。「結納した時点で、家族としか見られないと言われて、ずっとなし。女として見られたい。女性として。セックス=愛情。女性は愛を確かめるためのエッチ。男性はそこが違う気がする」。田中さん(仮名、24歳女性)も、5年付き合った男性と去年破局した。「彼が寝ている時に携帯を見たら、AVをすごく見ていた。ひとりHがすごく好きみたいで。私のときにやる気なくなるんじゃないかと」。

佐々木さん(仮名、31歳男性)は1年半前から彼女と同棲中。最近は迫られても気づかないフリをしているという。「最初の2、3か月は2週間に1回はしていた。それがだんだん1か月に1回とかになって。生活の中で1人になりたいときに"かまって!"と言われて疎ましくなった。"いつでもあるもの"には興味がなくなる可能性もある」。
"彼女でない人とならセックスできるか"との問いに佐々木さんは「できると思う。あくまで彼女が性的対象ではなくなっただけなので。風俗のセックスと愛のあるセックスは、気持ちの上で分けられるものだと思う」と話した。
■「前段階には、色々な"レス"がある」
セックスレス改善の相談活動をしている「恋人・夫婦仲相談所の」三松真由美氏は「20年近く相談を受けているが、8~9割はセックスレスの相談。年齢層は30代~40代前半がボリュームゾーンだが、若い世代にも散見される」と話す。

一方、晩年までセックスフルな夫婦もいる。そんな夫婦の特徴について三松氏は「旦那さんが奥さんを非常にリスペクトしているし、奥さんのおかげで美味しいご飯を食べさせてもらって健康なんだとか、いちいち褒めてらっしゃっている。裸になって布団に入るだけでも、という70代、80代もいる」と話す。
三松氏は「海外ではセックスレスという言葉自体があまり知られていない。取材に来られたフランスの方に"セックスレスにあたる言葉がない"と言われた。"どうしてセックスがないのに日本の夫婦は離婚しないんだ"とも尋ねられ、答えるのが大変だった」と振り返る。また、海外ではベビーシッターに預けて夫婦でデートをすることも当たり前だが、日本ではそうではない。「人前でスキンシップをするのが当たり前の国、ラテン系の国はよくセックスをしている」。

しかし、男性たちからは「仕事が忙しすぎ、彼女に触れるどころじゃない」「一度断られたら、どのタイミングで誘えばいいかわからなくなった」「気軽にAVが無料で見られるし、1人の方が楽」といった声も聞かれ、最近では「VR見たら生身の人は必要なし」という人もいる。20~60代までの男女にセックスとマスターベーションの頻度を聞いた相模ゴム工業の調査「ニッポンのセックス」によると、セックスは1か月に平均2.1回、マスターベーションは平均6.5回だという。

三松氏は「前段階には、色々な"レス"がある。会話や見つめ合うことがなくなる、いってらっしゃい!みたいなときのちょっとしたスキンシップがなくなって、その先にセックスレスがある。人は飽き性なので、毎日同じ奥さんを見ていて飽きちゃったという男性もたくさんいる。女性は愛する人に抱かれたいという思いがあるものなので、そこですれ違いが出てしまう。そこをなんとかして男女としての役割を演じなければ、セックスが永遠になくなってしまう。忙しいからと放っておくと、何もしなくなってしまう」とし、男女それぞれが意識し、服装を変えてみるなど、日常の中で努力していくべきだと訴えていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


